昨日ちょっとお訪ねしたHさんは、八郷の旧家です。
ご先祖は1400年代までたどれ、戦後の農地改革でおおかたの土地は小作さんに渡ったものの、このあたり一帯の大地主だった方で、八郷盆地一の穀倉地帯で育てたお米は、恋瀬川を使って霞ケ浦に運ばれ、そこから江戸などに送られていました。
元々、Hさんの家は茅葺き屋根で、入り口から裏口までは土間続きでした。それをHさんの代になって改築して、土間をなくし、入り口の右手には縁側もついている気持ちの良い板の間空間になっています。
家を臨んで左手には門があり、その向こうに中庭が広がっています。
中庭には年齢を重ねた木々がよく手入れされており、湧き水から引いた水が竹の樋から池に流れ込んでいます。
以前は池に鯉を放していましたが、アライグマ、ハクビシン、アオサギなどが来て獲ってしまうので、今は何もいません。
植え込みの後にはかつて半田城という要塞があったのですが、南北朝時代に攻撃されて崩れ落ちたそうです。
H夫人が結婚してこの家にこられたころも茅葺き屋根で、屋根裏には補修用の茅がうずたかく積み上げてあったそうです。
次第に茅が手に入りにくくなり、職人さんもいなくなり下手になり、葺いてもらった屋根から茅が抜け落ちて始末に負えなかったのを契機に、茅をすべて取り払って銅葺きにされました。
現在見えている二段になった軒下の先の部分には、何百年も前からの茅が層になって見えて、それは美しいものだったそうです。
入口の左には式台があります。
かつて、位の高い方を迎えるときに使われた正式の玄関で、今でも冠婚葬祭には使われているそうです。
表庭に、何の木だかわからない木がありました。訊くとアメリカハナミズキだとのこと、こんなに大きく育ったハナミズキを初めて見ました。40年ほど前に植えられたものだそうです。
成長が遅いことと葉が少ないことから、管理しやすいというので、とくに近年街路樹に多用されているハナミズキを、私はまったく好きになれないでいますが、なかなかの木姿でした。
15年前にうかがったとき、裏庭の鬼門にそびえていたサイカチの古木は、残念ながら枯れてしまったそうでした。