2026年10月8日木曜日

シオン


Kさんの家の入り口の外、道端に植えてあるシオンです。毎年、この時期になると忘れずに咲く、宿根草です。

私が小さかったころを過ごした祖父母の家は川辺にあり、家にも川にも隣接した「菜園」と呼ばれていた小さな野菜畑に、私が物心ついた頃からシオンが咲いていました。子どもにとっては見上げるような高い茎ですが、土手から見ることができました。昔からあった家ですから、家も菜園も川の土手から見たら川側、いわゆる河川敷にあり、庭が狭くて奥に長い家は石垣を築いているので土手と同じ高さでしたが、菜園は土手より低い位置にありました。
何せそこいら一帯は源平合戦の頃は海だったところ、その名残りの川は、海の干満によって下流に流れたり、上流に流れたりする汐入川でした。
シオンが咲くのは祖父母の家だけ、他の家でシオンを見かけることはありませんでした。


その後、川は小島湾の干拓に伴って汐入川ではなくなり、家は護岸工事をするために移動させなくてはならなくなり(実際、家の一部は曳屋で移動させた)、菜園も消えてしまい、シオンも消えました。
それでも私の中にシオンの記憶があり続けたのは、『赤毛のアン』の中にシオンという名前がよく出てきたからだと思います。


ところが、『赤毛のアン』に書かれたシオンは、別の花のようでした。
カナダのプリンス・エドワード島に自生するアスター、Wild Blue Aster(Symphyotrichum cordifolium、旧名はAster cordifoliusなど)のことで、祖母が植えていたシオンは中国北部、朝鮮半島、シベリア原産の紫菀、Tatarian Aster(Aster tataricus)でした。花はよく似ていますが、アジア原産のシオンは背がとても高いのです。そして、Kさんのシオンは、紛れもなく祖母が植えていた紫苑です。

毎年、Kさんのシオンを見ると、忘れている遠い昔の記憶が蘇ってきます。
シオンの近くに植えてあった砂糖きびの甘さと口の中がチクチクする感じ、川にもやっていた、当時すでに使われなくなっていた何艘かの古い木の川舟、川に入ってシジミ獲りをしていて流されて、橋を渡っていた人に助けられたこと、などなど。
祖父母の家とKさんの家でしか、シオンは見たことがない気がします。






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