2012年5月15日火曜日
山地民族の蒸し器
その昔、タイにあったラオス山地民族の難民キャンプで働いていた友人からもらった、もち米の蒸し器です。
木をくり抜いてあって、高さ32センチ、直径27センチ。今は色がついていますが、もらったときは出来立てのほやほやで、木が真っ白でした。
難民キャンプを設営するためには、そこに住むタイ人と競合しないように、それまで使っていなかったような土地を、切り開いて使います。
推測ですが、難民としてキャンプに入った人が、そのときに切り倒した木を利用して、キャンプの中でつくったものではないかと思います。
底までくり抜いてあって、底に竹を十字に渡し、その上にラタンのひごで編んだ平たい籠を、動かぬよう結びつけてあります。
よく乾燥していない木を彫ったためか、年月を経て木がねじれて、ちょっと割れています。
市場などで、木をくり抜いた蒸し器を売っているのを見たことはありません。山地民族のなかでは、蒸し器は買うものではなく、自分でつくるものだったのかもしれません。
山地民族の人々は籠づくりにも長けていますから、蒸し器を籠でつくるのは、朝飯前のはずです。でも、木をくり抜いてつくるのは、籠ではできないような使い方をするのではないかと、調べてみました。
『Peoples of the Golden Triangle』 (Paul and Elaine Lewis著、Thames and Hudson社、1984年)には、数葉の蒸し器の写真が載っています。
これはヤオ人の台所ですが、蒸し器が大きなお鍋の中に立ててあります。
蓋を取って、もち米の蒸し具合を見ているアカ人の台所も一緒です。蒸し器は木で、お鍋はその蒸し器を乗せるのではなく、お湯の中に直接立てられるよう、大きいものを使っています。
半茹で、半蒸しといった感じでしょうか。
そして、リス人が蒸しあがったもち米でお餅をつくっているところに見える蒸し器は、私の持っている蒸し器と、一番よく似ているようです。
どの蒸し器も、薪を使って調理するので、真っ黒になっています。
山地民族の人々が民族グループごとに独特の衣装を着て日常生活を送っていたのは、1980年代の半ばくらいまでで、今ではすっかり消え失せてしまいました。
持ち手をつくるということは、蒸し器の直径より大きな木を使わなくてはならないということです。
考えるだけで大変そうですが、同じような方法で太鼓もつくる山地民族の人にとっては造作もないことなのでしょう。
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