2015年7月6日月曜日
暮しは手仕事
我が家にいらしたフィンランド人Pさんが、場所を取るので高いところにあげている糸車を見て、
「あれっ、これはフィンランドの糸車ではないだろうか?いや、違うなぁ。ノルウェーのか」
とつぶやいていました。
そう、これはノルウェーの糸車です。フィンランドやスウェーデンの糸車は、台座が水平ではなく、傾いでいます。
かつて、私が織りものを習った先生は、ノルウェーで勉強された方でした。そのため、織り機も糸車もかせ繰り機もノルウェーのものを使っていました。
フィンランドの織り機も、スウェーデンの織り機も、どこかで見かけたことがありますが、形の基本はノルウェーの織り機と同じ、それぞれ少しずつ違っていますが、やはり松の木でできていました。
「母は、シーツ、衣服、タオルなどなど、家庭で使う布のすべてを、畑で麻を育てて、糸を紡ぎ、織ってつくりました」
と、Pさん。
「父は、木を切ったり、サウナや家をつくったり、家具をつくったり、すべて手づくり。息子たちはおもに父の手伝いをしました。水汲みは、子どもの仕事でした」
Pさんは1950年生まれ。第二次世界大戦後のベビーブーム時代の子どもですが、当時フィンランドの田舎では、何もかもすべて自分たちでつくる生活だったようでした。
「こんな家だったのかな?」
私は、『フィンランドの木造民家』(長谷川清之著、井上書院、1987年)を引っ張り出して見せました。
「そうそう、こんな家。切り出した木を組んだログハウスは、もともとフィンランドのものですよ」
とPさん。
「わぁ、これお金持ちの家よ。彼の家、とっても小さくてびっくりしたもの」
と、お連れ合いの、日本人のSさん。
絵本、『ペレのあたらしいふく』(エルサ・ベスコフ著、福音館書店、1976年)は、自分の羊を持っている小さな男の子ペレが羊の毛を刈り、いろいろなお手伝いをしながら、おばあさんに糸を紡いでもらい、お使いのお駄賃で染め粉を買って糸を染めて、おかあさんに布を織ってもらい、仕立屋さんでは干し草を集め、豚に餌をやり、たきぎをうちの中に運び入れるお手伝いをして、お母さんの織ってくれた布を服に仕立ててもらう物語です。
これには、スウェーデンの糸車や、織り機が描かれています。
もう一つ、子どもたちが小さい頃にあったチェコの絵本、『もぐらくんとずぼん』(エドアルド・ペチシカ文、ズデネック・ミラル絵、福音館書店、1967年)には、ズボンの欲しくなったもぐらくんが、麻を育てて糸をとり、ズボンに仕立てるまでが描かれていて、刈り取った麻を水に晒している絵などがあるのですが、残念ながらこの絵本は失われています。
Pさんが小さい頃(5人兄弟だったかな?)、セーター、帽子、手袋、靴下などもすべてお母さんの手づくりで、買ったことはなかったそうです。
ほんの少し前まで手仕事の生活があったのに、今や世界中様変わりしてしまいました。
そんなPさんのお話をみんなで聞こうと、小さな集まりを持ちました。
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