刃を棒に差し込んで使う、ココナツ削りの刃です。
鉄のかたまりを叩いて平らにし、一方は棒を差せるよう丸めて、一方はぎざぎざに加工してあります。
ココナツ削りの刃は、椅子状の台に取りつけて使います。
左右の刃は鍛冶屋さんが打ったものですが、真ん中の刃は鉄の板を切り抜いて加工してあり、鍛冶屋ではなく工場でつくられたものだと思われます。
上の写真二枚はグアムのココナツ削りです。
左の刃は、一つ上の写真の三つのうちの真ん中の刃(タイ製)とそっくりです。工場製品の刃はタイだけでなく、広く熱帯アジアにもわたっているのかもしれません。
また、右の刃は、ほかのグアムのココナツ削り具でも見たので、グアム製でしょうか。
パプアニューギニアのココナツ削り |
鉄を叩いて成形した刃のうち、奥のものは鉄の塊をまず棒状に伸ばすか、あるいはすでに棒状になったものを利用して、一端を叩いて平らにして、ぎざぎざに加工してあります。
工場でつくるようになる以前のもっとも一般的な形で、つくる鍛冶屋さんによって、使う材料によって、ちょっとずつ違うものができました。
これはネットで見たタイのココナツ削りですが、コンクリート工事に使う異形鉄筋の切れ端を利用して刃をつくっているのがわかります。
『Museum of Folk-Culture』より |
これもタイのココナツ削り、同じ形の刃を使っています。
タイでは、ココナツ削り具のことを、「クラターイ・クート・マプラーオ」と言います。クラターイはウサギでマプラーオはココナツ、直訳すると、「ココナツを削るウサギ」となります。
台所道具にどうして、ウサギという名前がついたのでしょう?
名前が先で、名前にちなんでウサギの形のココナツ削りがつくられるようになったのか、ココナツ削りがウサギの姿に見えたのでそんな名前がついて以後、ウサギの形のココナツ削りがさらに盛んにつくられるようになったのか、まったくわかりませんが、タイで道具に動物の名前がついているのは珍しいことです。
余談ですが、日本では、材木を置く台を「馬」と言ったり、蔵の棟木を「牛」と言ったり、閂(かんぬき)を「猿(補助の閂は小猿)」と言ったり、特に建築関係ではたくさんの動物名が使われています。
『THAI FORMS』より |
写真は、『THAI FORMS』誌に載っているタイのココナツ削りのいろいろ、 一番上の削り具は、鉄棒を叩いて伸ばした刃を使っています。
真ん中の刃は平らにも見えますが、どんな形かはこの写真でははっきりしません。また、一番下のウサギの刃は、太い鉄の棒が手に入らないときのつくり方で、細い鉄を曲げてつくってあり、これもよく見かける形です。
これは我が家のウサギのココナツ削りですが、刃はやはり細めの鉄棒でできています。
曲げた鉄棒は端を合わせ、丸まった部分を叩いて平らにし、ぎざぎざ加工を施しています。
この形の刃がとても多いのは、細い鉄棒しか手に入らなかったという理由だけでなく、太い鉄棒を延ばすより加工が楽だったのかもしれません。
この刃はただの鉄棒ではなく、何かの部品を再利用したもののようです。
象のココナツ削りをつくりたいと思って、鼻にぴったりの部品を探したのか、あるいはこの鉄の部品を見て、「象の鼻がつくれる」というインスピレーションが沸いたのか、どちらかわかりませんが、なかなかよくできています。
これを見ると、ココナツ削りには口に刃をくわえたウサギより、長い鼻を伸ばした象の方が、むしろ自然に見えるほどです。
ベトナム生活・観光ナビより。手の動かし方がとても難しいらしい。 |
さて、ネットで見ると、グアム、パプアニューギニアだけでなく、ヴェトナムでも、タイのココナツ削りと同じような道具を使って、半分に割ったココナツの果肉を削ることがあるようです。
そして、インドでも(南の地方でしょうか?)似た方法で削られているようです。
女性が台に横座りしないで、立って削っているのが面白いところです。
どんな形の刃か見えないのが残念!
と思っていたらありました。ままごとのココナツ削りですが、刃は同じようです。
折り畳み式になっているので、ままごとにあるくらいなら、本物にも折り畳み式のものがあるに違いありません。
さすが、インドです。
ところで、インドネシアやマレーシアではこの方式で削らず、ココナツを小さく割って、おろし金でおろします。
この写真は工場製のおろし金を使っていますが、
伝統的には、ブリキを目立てしたものを使っていました。どれも、マレーシアやインドネシアの市場で買ったものです。
ブリキ以前には、何を使っていたかはわかりませんが、ココナツの果肉はそう固いものではないので、石でも何でもこそげ落とすことができたことでしょう。
もっとも、タイでもカンボジアでも、ずいぶん前から、市場にココナツを削る機械が導入されていて、耳障りな音を立てながら、ココナツを一瞬にして削り、削ったものが売られています。その日使う分を買うなら、それで十分なのです。
もしかしたら、それも、近い将来消えて、ココナツミルクは工場でつくったパウダーや缶詰だけになるかもしれません。
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