土人形のお福さん(お多福)と福助さんです。お福さんは花魁姿、福助さんは幇間(ほうかん、太鼓持ち)姿とでも言ったらいいのか、いかにも京都らしいいでたちです。
絵具の色を見ると戦前の土人形に見えますが、目がユーモラスというか漫画っぽい、このころこんな目の土人形がつくられたでしょうか?
葛飾北斎の狂歌絵本は、日本の漫画の歴史に初めて登場した漫画と言えなくもないのですが、本格的に漫画が描かれるようになったのは、大正のころからです。
漫画以前から存在した浮世絵や土人形にこんな目はありませんでした。では、大正・昭和初期の漫画にこんな目が描かれていたのでしょうか?
昭和初期の漫画と言えば、新聞に連載されて一世を風靡した『ノンキナトウサン』(麻生豊)と『フクちゃん』(横山隆一)です。『フクちゃん』は、母の弟が子どもの頃に読んだという単行本をもらって読んでいましたが、目は縦長の点でした。
『ノンキナトウサン』は、関東大震災のあと、震災被害者をはじめとする人々を励まそうと新聞に連載された漫画で、四コマ漫画の原点となりました。
大変な評判をとり、映画化されたり、キャラクターグッズが発売されたしました。
しかし、漫画に描かれている目は、フクちゃん同様縦長の点です。
ところが、キャラクターグッズの人形に、白目が描かれていました。
このお福さんと福助さんの目は、ノンキナトウサンの人形に影響されたのでしょうか?それともお福さんたちの方が先だったとか、同じか近くの窯元でつくられたとか、この目だけでいろいろ想像を膨らませることができます。
笑っているような「低い山の形」の目。左は滋賀県の小畑人形、右は千葉県の飯岡人形です。
米粒形の縁取りの中に目玉を描いたもの。左は山形県の相良人形、右は秋田県の中山人形です。
白目の描かれている人形もないわけではありません。
左は埼玉県鴻巣の熊金時。赤ものの場合、顔が赤いことから、よく白目が描かれています。右は福岡県の津屋崎人形ですが、このひょうきんな目は、津屋崎人形の中でも珍しいものだと思います。
さて、お福さんと福助さんの人形は、底に昭和6年(1931年)、田村氏、京都土産と書いてあります。どうやら田村さんからいただいたもののようです。
お福さんの着物、見れば見るほど素敵です。
京都のお土産ですから、伏見人形でしょうか?
土人形発祥の地伏見で、こんなユーモラスな人形がつくられたでしょうか?
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