2024年1月25日木曜日

『メコン・黄金水道を行く』


『メコン・黄金水道を行く』(椎名誠著、集英社、2004年)は、『インドでわしも考えた』のメコン川版と言ったところでしょうか。
ちなみに、『インドでわしも考えた』は、堀田善衛の『インドでわたしは考えた』のパロディーだと書こうとして、念のため調べたら、あれっ、堀田善衛の本は『インドで考えたこと』(岩波新書、1957年)という表題で、私の思い違いでした。まさか、題名を変えたわけではないでしょう。となると、「インドで私は考えた」は文中に出てくる言葉だったかもしれません。

いきなり脱線しましたが、私は椎名さんの写真が好きです。くすっと笑わせてくれる軽い文も嫌いではありませんが、写真が好きです。椎名誠的着眼点が面白いし、カメラプロ感のない写真とでも言おうか、1枚1枚、楽しんで撮っている空気が伝わってくるような写真ばかりです。


まず、目次の前の巻頭の写真がこれです。ヴェトナムの水上マーケットの八百屋さんの看板。水上がごちゃごちゃと混みあっていても、遠くからでも八百屋をさがすことができるというわけです。


そしてこれ、大ヤモリ、トッケーの笑っている写真です。
トッケーはしっぽまで入れると30センチくらいあるヤモリで、「トッケー、トッケー」と鳴き、家やレストランなどの壁や天井にいて、たまにどさっと落ちてきます。


もちろん、メコン川を辿っているのですから、川の写真もあります。
川は、洗濯して、水浴びして、そして生活用水をバケツに汲んで家まで担いでいくという生活の中心であり社交場でもある、椎名さんは「川端会議」と呼んでいます。


大人や子どもでにぎわっている、漁場の写真もあったのですが、滝に仕掛けられた簗(やな)が面白くて、この写真を選んでみました。


ナマズはかわいい、そしておいしい。


暑いはずなのに、涼風が感じられます。


ここは雨季には冠水する土地だそうですが、椎名さんは犬を撮りたかったに違いありません。『街角で笑う犬』(朝日新聞社、1990年)という犬ばかりの写真集、本棚をちょっと探しても出てきませんでしたが、椎名さんは犬好きです。


あとがきの最後は、

メコンの旅は贅沢だった。自然と人間のからんだ地球規模的な歴史の絵巻物をかいま見たときめきがふんだんにあったからである。


と、くくられています。









 

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