2012年12月10日月曜日
MADE IN OCCUPIED JAPAN
のんびりした顔の、セルロイドの犬です。
胴体と頭が別々につくってあって、ゴムで留めているので首を回すことができ、あっちを向いたり、こっちを向いたりと、表情を変えられます。
とぼけた顔に惹かれて手に入れた時には気がつきませんでしたが、背中にMADE IN OCCUPIED JAPAN(占領下日本製)とありました。
占領軍によって、そう印すことを義務づけられた、1947年から52年の間につくられたもののようです。
セルロイド製品の火災事故が多発していたことを受けて、1955年には、アメリカで可燃物資規制法が成立しました。以後、最大の輸出国アメリカに輸出できなくなり、日本のセルロイド産業は急速に衰退してしまいました。
アメリカのセルロイド人形のオークションをのぞいてみると、日本でつくられたものが多いのは当然ですが、日本では見かけない、日本製のアメリカ先住民の人形が多いのに驚かされます。
黒髪や民族衣装がかわいいのも、たまにはありますが、「ここまでやるか」と思うくらいデフォルメした、悪意さえあるようなものが多い気がします。例えば赤いセルロイドで、タコのような顔を描いた、先住民の赤ちゃん人形とか。
可燃物資規制法が成立してから十数年後の60年代の末、アメリカに暮らしてみて、おもちゃ輸出が依然として日本の主要産業だと実感したことがありました。
場末の雑貨屋や、安物ばかりを売っているホームセンターなどには、きまって日本製のおもちゃがありました。まだ、MADE IN HONGKONGの、これまた安っぽいおもちゃが出回る前だったように思います。
白人によって居留地に追い込まれたアメリカ先住民たちが、伝統的な人形をつくる材料の調達もままならないで、安い日本製のセルロイド人形を、子どもたちに買い与えていたのかと思うと、いたたまれない気持ちになってしまいます。
戦後、ゼンマイやブリキと組み合わせた、斬新でおもしろいすばらしいセルロイドのおもちゃがつくられた一方で、粗雑で醜悪な人形もたくさんつくられ、 輸出されていたのでした。
ちなみにアメリカ先住民の人形は、こんな人形です。動物の革でできていて、ビーズ細工のなされた布の服をまとっています。(写真は、『THE WORLD OF TOYS』、HAMLYN、1992年、ロンドンより)
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