2021年5月19日水曜日

パレスチナ

何か言ったからといってどうにもなりませんが、言わないで見過ごすことはできません。
中川泰秀防衛副大臣の、「私達の心はイスラエルとともにあります」と発言したことに、戦慄が走りました。
イスラエル占領の歴史を知っているのかしら?
今回の紛争がなぜ起こったか、そのきっかけを知っているのかしら?
ハマスが人々から浮いた、例えばイスラム国のような集団と混同しているのではないかしら?

パレスチナ自治区のイスラム原理主義組織ハマスは、2001年、9.11後にアメリカ(国際社会)から「テロ組織」と指定されましたが、欧州司法裁判所は、2014年に、ハマスのテロ組織指定を解除すべきとする判断を下しています。
ハマスは最近では抵抗するために軍事組織も持ってはいるようですが、江戸に例えると火消し集団のようなもので、いつもは市井で普通に暮らしている、老若男女に支持されている人々です。

5月17日に、パレスチナ・イスラエルの現状を間近で見ている日本の非営利団体(NGO)が、イスラエルとパレスチナの停戦を求めて、外務大臣あてに共同声明を出しています。
以下、その声明文を掲載します。


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茂木敏充外務大臣

2021年5月17日

日本の NGO 団体による声明

イスラエルおよびガザに一刻も早い停戦を

5月16日現在、ガザでは58人の子どもを含む192人が犠牲となり、イスラエルでもインド人移民労働者を含む10人が犠牲となっています。これ以上多くの生命が奪われることがあってはなりません。

私たちは、現在パレスチナのガザ地区で続いているイスラエル軍による空爆や砲撃や、ガザからイスラエルに向けたロケット弾の発射を即時停止するように求めます。一刻も早い停戦に向け、国連安全保障理事会および中東カルテット(国連、米国、ロシア、EU)が歩調を合わせて調停に乗り出すようはたらきかけるなど、日本政府としての停戦に向けた外交的努力を求めます。

【事態の背景】

ガザでは、5月10日から続く爆撃の下、市民は恐怖で一晩中眠ることができず、住宅地への爆撃で多くの人たちが家を失い、あるいは損害を受け、多くの犠牲者が出ています。

イスラエルのネタニヤフ首相は攻撃を継続すると表明していますが、これ以上の武力行使は、双方の市民の犠牲を増やすこととなり、2014年の戦争がもたらした事態(パレスチナ人民間人1,462人を含む 2,251人が死亡し、1万1 千人以上が負傷。イスラエル側も67人の兵士を含む73人が死亡)の再現につながります。ガザ地区は 350平方キロほどの細長い狭い地域で、イスラエルによる封鎖下に暮らす約200万の人々はここに閉じ込められ、外へ逃げ出すことはできないからです。

私たち日本のNGOは、ガザ地区を含むパレスチナで、戦争で障害を負った子どもたちを含む民間人への保健支援や農業支援、職業訓練を含む自立支援等を続けてきました。現在も、封鎖によって破壊から復興しないまま厳しい生活を続ける乳幼児や障がい者、妊産婦などへの保健支援、職業訓練、教育支援を行っています。新型コロナウイルス感染拡大で増大した特に子どもや障がい者、妊婦などの脆弱性が、この事態でさらに深刻になることを大変に危惧しています。

衝突が激化したきっかけは、4月12日にイスラム教のラマダン(断食月)が始まると間もなく、エルサレム旧市街にあるイスラム教徒地区のダマスカス門前の広場を、イスラエル警察がセキュリティを理由にバリケードで封鎖したことです。イスラエル警察や軍への怒りからパレスチナ人による激しい抵抗デモが起こりました。5月10日には、イスラム教の聖地「アルアクサ・モスク」および「岩のドーム」のある境内で、パレスチナ人とイスラエル治安部隊が衝突しました。イスラム教徒にとっては断食期間の最後の週で、宗教的にも高揚する時期にあたり、またイスラエルにとっては、5月10日が1967年の第3次中東戦争で東エルサレムを占領した祝日にあたります。イスラエルは数千人規模の治安部隊を展開し、エルサレム旧市街へのパレスチナ人の入域を大幅に制限しただけでなく、5月7日以来、礼拝に参加している市民に催涙弾やゴム弾、閃光弾などを発射し、パレスチナ人1,200人以上に負傷者が出ています。

また、東エルサレムのシェイク・ジャラ地区のパレスチナ人家族(子ども46人を含む169人)に対して、イスラエル人入植者が実力行使で立ち退かせようとし、パレスチナ人と衝突したことも緊張を高める要因となっていま す。シェイク・ジャラは、1948年の第1次中東戦争でエルサレムを東西に引き裂いた停戦ラインに近く、立ち退きを求められている人々は、1948年に家を失い他の地域から逃げてきた家族などで、故郷に戻ることが許されないなかで、避難場所としてこの地区に70年以上住み続けてきたのです。なお、5月11日に日本政府が出した談話に「我が国が国際法違反として幾度となく撤回を求めてきたイスラエル政府による入植活動」とあるように、今回のイスラエル人入植者による行為は国際法に違反しています。

こうした状況の中、ガザ地区を実効支配している「ハマス」は9日夜以降、1,800発以上のロケット弾を発射、イスラエルに着弾し死傷者が確認されました。その報復として、イスラエル軍がガザ地区への空爆を続けています。

13日には、イスラエル国内でユダヤ人極右勢力によるアラブ系市民へのリンチ事件が起こりました。またアラブ系市民の家の扉に目印をつけ襲撃を予定していると報道されるなど、イスラエルの人口の約2割を占めるアラブ系市民への差別と分断がさらに増長することが懸念されます。また、その報復としてイスラエル人の店やホテルがアラブ人によって襲撃される事件も起き、双方の間で憎しみと暴力の連鎖が続いています。

イスラエルはガザを15年近く完全に軍事封鎖してきました。そのため、ほとんどの住民はガザから出ることができず、多くの物資もガザに搬入できません。電気や水といったインフラも整備されず、失業率が60%近くになる中、2008年、2012年、2014 年とイスラエル軍の大規模な軍事攻撃が6年間に3度あり、多数の犠牲と破壊が残されたのは記憶に新しいところです。

1948年以来、国際社会はパレスチナ問題と難民問題を解決することができず、現在500万人以上のパレスチナ人がいまなお難民としての生活を余儀なくされていることも忘れてはなりません。5月15日は、パレスチナ人にとって難民となって73回目の「大惨事の日(ナクバ)」にあたります。ガザだけでなく、ヨルダン川西岸やレバノン、ヨルダンなどで難民生活するパレスチナの人々にとっても、現在の状況は二重三重の苦しみとなっています。

このような事態を受け、私たちは、過去の惨事が繰り返されないよう、双方が攻撃を自制するよう求めます。影響力のある米国が、特に圧倒的な軍事力をもつイスラエルに爆撃を即時停止するよう働きかけることが期待されるなか、国際社会の一員である日本政府として、それを強く後押しすることや、その他、即時停戦のために必要なあらゆる手を尽くすこと、具体的な行動をとることを求めます。

(呼びかけ団体:五十音順)
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
特定非営利活動法人 パルシック
特定非営利活動法人 パレスチナ子どものキャンペーン(CCP)
特定非営利活動法人 ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)

(賛同団体:賛同順)
北海道パレスチナ医療奉仕団
特定非営利活動法人 パレスチナの子どもの里親運動
公益社団法人 日本YWCA
特定非営利活動法人APLA(Alternative People's Linkage in Asia)
(株)オルター・トレード・ジャパン(ATJ)
特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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今回の衝突のきっかけは、エルサレムのパレスチナ自治区の、旧市街への入り口であるダマスカス門前の広場を、ラマダン(断食月)とコロナに乗じて、イスラエル警察がセキュリティを理由にバリケードで封鎖したことです。


ダマスカス門は、東エルサレムに住むパレスチナ人たちが日常的に利用する門です。
城壁に囲まれた旧市街の中では、何世紀にもわたってアラブ人(パレスチナ人)やアルメニア人、少しのユダヤ人などが共存して住んできましたが、1967年にイスラエルがこの地を武力で占領してから、じわじわとユダヤ人居住区を増やしてきました。
旧市街には、狭い場所にキリスト教の聖地、イスラム教の聖地、ユダヤ教の聖地
、学校などだけでなく、普通の住居もあれば、たくさんの店も並んでいます


中央がダマスカス門で、手前がダマスカス門前の広場です。
手前と旧市街の左がパレスチナ自治区、写真の右手がイスラエルの占領地区となっています。
この写真はどのような状況で撮ったものかわかりませんが、


普段はこのように、歩きにくいほどごった返しています。


武力で占領されて以来、パレスチナ人(アラブ系だけでなくベドウィンも含む)の住む区域は、どんどん狭められてきました。1990年ごろからは、パレスチナ人は乗り合いタクシーで街から街に移動するにも、たくさんのイスラエルの検問を通ったり、砂漠の中を大回りしたりしなくては、たどり着くことができなくなりました。
ヨルダン川西岸の1964-69年までの地図のくびれたところがエルサレムですが、現在では、ほぼイスラエルに実効支配されてしまっています。
1980年代まではそれでも、イスラエルはパレスチナ人を安い労働力として、共存していました。しかし、ソ連崩壊で東欧のユダヤ人が大量に流れ込んできたり、東南アジアからの出稼ぎが盛んになると、パレスチナ人は不要になり、ただただパレスチナ人の住む土地を求めて、武力で追い出しにかかりました。
西欧は、ユダヤ人をパレスチナの地に追いやった負い目があるので、何もできません。

何もできず、無力さを感じるだけですが、せめて関心を寄せていたいと思います。



4 件のコメント:

かねぽん さんのコメント...

おはようございます。
ヨーロッパの国々がユダヤ人を蔑視し、迫害してきた歴史が今のイスラエルを産み出したのだとしても、これ以上ユダヤ人の評判を落とすような真似を続けるのは止めて貰いたいとネタニヤフ首相に伝えるのが国際社会の義務だと思われます。今のイスラエルがパレスチナ人に対してやっている事は、かつてナチスがユダヤ人にした事とあまり変わらないのではないでしょうか。

rei さんのコメント...

一般の報道ではなかなか知り得ないパレスチナの現状を詳しく教えて頂きありがとうございました。自分達の国にするからお前達は出て行けと故国を追われる事の理不尽さ。

昨夜、ウエビナーによる「香港国際連帯キャンペーン in 東京「香港民主化運動とミルクティー同盟〜日本におけるミツなつながり〜」に参加しました。
「民主主義と人権を推進する民主化連帯運動を議論の入口とし、香港問題を中心に、ミャンマー、ウィグル、タイ、台湾の現状や、および日本が実施できる支援のあり方等について」がテーマでした。

世界に撒き散らされたコロナ禍は何れ終息を迎えるでしょうが、パレスチナ問題、アジアに於ける中国の覇権問題などは終わりが見えません。

他国の事だからと知らぬ振りはできません。日本もいつか当事者になるかもしれません。

さんのコメント...

かねぽんさん
絶望の生活を、それでも明るく生きているのに、さらに追い打ちを掛けられる、パレスチナの人々の無念さが思いやられます。
イスラエルには男子3年女子2年の兵役があります。その間、銃を持たされてパレスチナ人を人間と見るなと教育され、配置されます。
兵役生活が多感な世代にとってどんなに苦しいことか、彼らは兵役を終えた後、自らをいやすために、世界中に散らばります。わが家でも昔、労働と宿舎+食事を交換する、ウーファーで、そんなイスラエル人を受け入れたことがありました。優しい、よく気の付く女の子でした。もうイスラエルには帰らないとも言っていました。
イスラエルで強硬派のネタニヤフを支えるのは、こんなにいるのかと思うほどいる聖職者たちです。彼らは働かず、兵役にも取られません。
イスラエルの砂漠で、パレスチナの政治犯を入れる刑務所を見たことがあります。パレスチナ人の中には少なからずつかまったことがある人が多く(理由なくすれ違いざまに射殺された人もいるけれど)、面白おかしく話してくれる拷問は、神経を疑うようなものばかりです。
いじめられてきたから優しくして欲しいと思うのですが、今でも何かの恐怖に取りつかれているのかもしれません。

さんのコメント...

reiさん
どちらを向いても、暗い話が転がっています。
そんな世界でも、さすがにコロナで変わるだろうと思ったのですが、コロナをうまく利用してさらに覇権を強める輩もいて、絶望的な気持ちになります。
コロナが収束したあと、誰もが、地球上に暮らす者はすべて運命共同体と気づいて、コロナ前とは違った生活が始まるなんて、夢また夢の話ですね。