2023年3月30日木曜日

トラック編みの籠


トラック編みの籠です。


材料は、ココヤシかパルメラヤシの葉柄を裂いたもの、となるとフィリピンでつくられたものと思われますが、スウェーデンで見つかったとか、遠く旅してスウェーデンまで行ったものです。




籠は、丈夫な縁を持つことによって形が保て、使用に耐えます。どう丈夫な縁をつくるかは、世界中で工夫され、いろいろな縁編みが生み出されてきました。
写真は左上はモロッコの籠、右上はカンボジアの籠、左下は日本の籠、右下はラオスの籠です。材料はそれぞれエスバルトグラス、ラタン、マタタビ、ラタンです。


その点、トラック編み(別名マデイラ、フランスではモナコ・ボーダーと呼ばれた)は、縁づくりがとても簡単、苦労せずつくることができました。
斜めの組み編みが大胆で印象的で、編み材の端の始末はとても簡単にできます。斜め上に進む経材と途中で曲げた経材を交差させながら編むため、Uターンした先端は本体に差し込んでしまえばいいからです。


トラック編みの籠は特に地中海地方で盛んにつくられましたが、フィリピンやアメリカのニューメキシコ州でもつくられました。

ところで、スウェーデンにはどんな伝統的な籠があるのでしょうか?
竹やラタンがないヨーロッパの籠の材料は、柳の枝、板を薄く裂いてへぎ板、白樺などの木の皮、そしていろいろな草です。大航海時代がはじまってからは、ラタンが籠の材料としてたくさん輸入されました。


デンマークの民族博物館の目録に載っていた籠は、草の巻き編みの籠でした。


ノルウェーのサーミの巻き編みの籠。本がノルウェー語で読めないのですが、写真を見ると、草だけでなく、柳の枝も使っているような気がします。


さて、余談ですが我が家にあるスウェーデンの籠はこの二つです。
鶏のナプキン入れ(?)は、底に1993年のシールが貼ってあります。巻き編みの籠は手が混んでいるのに稚拙なところが、おもしろい。もっと古いものです。


トラック編みの籠は、いつごろ、フィリピンのどこでつくられたものなのでしょう?
史料ではフィリピンのトラック編みの籠を見たことがありますが、フィリピンの籠として実際に目にしたことがあるのは、ほとんどが北ルソンに住む先住民(=マレー)の人々の籠たちです。
そして、この籠はココヤシやパルメラヤシが少ない山地に住んでいる人々の仕事ではない気がします。




 

10 件のコメント:

rei さんのコメント...

トラック編み、底は違うものの立ち上がりと縁の始末の編み方が、銭湯の脱衣籠と同じに見えます。今、東京型銭湯の事を調べているのでそう見えてしまうのかもですが。

さんのコメント...

reiさん
トラック編みは縁の編み方を指すようです。ということは、銭湯の籠もトラック編みですよね。
小さいころ、銭湯で俱利伽羅紋々のおじいさんを見たことが、強烈に印象に残っています。ということは、小学生になっても男湯に入っていたのかしら?今だと考えられないですね。
『くらべる東西』って本はご存知ですよね?私は東の銭湯しか知りませんが。

なお さんのコメント...

はじめまして。
突然のコメント失礼致します。

籐編みを趣味としていましてかごに目がないのですが、先日アンティークショップで一目惚れし、フランスのビンテージとのことで購入したかごの編み方を調べていましたところ、こちらに辿り着きました。

トラック編みという編み方とのこと、名前を知ることが出来、とても感動しております。
そしてこのかごも南の島で作られ遠くフランスに渡ったのかもしれないと…

他にもマデイラ、フランスではモナコ・ボーダーと呼ばれるそうですね。
とても興味深く読ませていただきました。

このかごのことをもっと知りたいと検索してみましたものの、なかなか情報がありません…
大変不躾な質問で申し訳ありませんが、このかごの編み方などについて、もしご存知の参考サイトなどございましたらお教えいただけないでしょうか。

よろしくお願い致します。

さんのコメント...

なおさん
初めまして。コメントありがとうございました。
私は、『世界のかご文化図鑑』という本で、これがトラック編み、マデイラ、モナコ・ボーダーなどと呼ばれる編み方だと知ったのですが、どの名前で検索してもコンピュータ上ではヒットしませんでした。
マデイラは、籠編みの盛んな島らしく、このような縁の、お風呂屋さんの籠のような籠も見つかりましたが、それがマデイラと呼ばれている籠とは特定できず、ほかの編み方(コイル編みが多い)の籠も出てきました。
『BASKETS AS TEXTILE ART』も開いてみたのですが、中に美しいトラック編みのフィリピンの平たい籠が載ってはいましたが、何と呼ばれる籠とも書いてなくて、「Mexican twined basketによく似ている」と書かれていたのでMexican twined basketを見てみましたが、平らであるということが似ているだけで、まったくの別物でした。
というわけで、細い、似た質感の材料で編まれているならばフィリピンの籠の可能性が高いと思われますが、なんとも言えません。ヨーロッパの籠なら、この形の籠は柳で編まれているようです。
お役に立ちませんでしたね。
『世界のかご文化図鑑』は図書館に置いてあると思うので、機会があれば見てください。いろいろな籠が載っていて楽しめます。

匿名 さんのコメント...

お忙しい中、早速お返事をいただきありがとうございます。
お教えいただいた「世界のかご文化図鑑」を市内図書館に問い合わせましたところ蔵書がなかったのですが、スタッフの方が県内の図書館をあたってくださり幸い隣町の図書館にて貸出予約をすることができました。
洋書の方も教えていただきありがとうございます。とてもダイナミックな装丁ですね^^

入手した籠は細い繊維状で、ご掲載の画像の籠とよ似ているのでフィリピンのものではないかと思いました。

これだけ情報がない中、貴重なお話をお聞かせくださり本のことも教えてくださり本当にありがとうございました。
今から本を眺めるのがとても楽しみです。

さんのコメント...

なおさん
よかったですね。本を借りることができて。
銭湯の籠と違うのは底ですね。編み方が何という名前なのか結局のところよくわかりませんが、ダイナミックさが素敵です。
そういえば、私はもう一つ持っています(https://koharu2009.blogspot.com/2023/05/blog-post_4.html)。

匿名 さんのコメント...

もう一つのかごもカッコよくて素敵ですね。
縁のしっかりした所は違いますが私のものとよく似ています。

今回購入したかごを細い籐で再現してようと思っています。なんだか楽しみです。

ありがとうございました。

さんのコメント...

なおさん
あの籠は、フィリピン的補強がしてあるところが面白いです。
細いラタンで編むのですか? 素敵ですね。ラタンも本当によくできた素材です。
また、よろしくお願いします。

なお さんのコメント...

素敵なお話を読ませていただきに、またお邪魔させていただきます。

さんのコメント...

なおさん
どうぞ、いつでもいらしてください。
ありがとう。