2026年1月22日木曜日

『貝と羊の中国人』


昨年、中国人の友人に、中国・中国人理解の書として、『貝と羊の中国人』(加藤徹著、新潮新書、2006年)を読むことを勧められました。
漢字から、歴史から、地理風土から、いろいろな角度からわかりやすく考察されていて、私の中国理解、中国人理解が著しく進んだ、とても面白い本でした。


最初に、中国人(漢民族)とは、表題の「貝と羊」を併せ持っている人であるとの記述があります。
人は父と母の出会いによって生まれますが、民族の誕生も同じで、中国人は、3000年前に東方系の「殷」と西方系の「周」という2つの民族集団がぶつかり合ってできました。その違う気質を、今でも併せ持っていて、殷人的な気質を「貝の文化」、周人的な気質を「羊の文化」としています。
これがわかりやすい。豊かな東方出身の殷人は、見える財貨を重んじる気質で、有形の物財にかかわる漢字の寶、財、費、貢、貨、販、貧、貴、貰、貯、貿、買、賃、賜、質、賞、賠、賭などに「貝」の字がつくのは殷人の気質の名残であるとしています。
遊牧民族の血を引く周人は、天を信じました。天は神であり、物質的な捧げものより善や義、儀など無形の善行を好みました。義、善、美、祥、養、儀、犠、議、羨など、無形の「よいこと」にかかわる漢字に「羊」が含まれるのは、イデオロギー的な至高の神「天」をまつった周人の気質の名残であり、中国人にはこの2つの気質が、矛盾なく同居しているというのです。

とくに面白いと思ったのは、最後の方に書いてあった、日本人が日本人らしくなったのは江戸時代に漢文の素養を身につけたからだというくだりです。
聖徳太子の時代に、日本は中国という親分の傘下に入ることを嫌い、海を隔てていたということもあって、朝鮮やヴェトナムのように属国にはならずにすみました。
しかし、江戸時代に、徳川幕府は儒教を官学として、民間でも『論語』『十八史略』『唐詩選』など漢文の学習がブームとなりました。それらが、日本人の思考の基礎となって、今日まで生き続けているというのです。
私も、江戸時代の人たちが漢文の素養を身に着けた結果としてここにいるのかと、妙に納得してしまいました。

中国も日本も、強烈なホンエとタテマエの国。しかしどちらも相手のホンネとタテマエの理解には限界があります。もっと目をしっかり開けて、耳をしっかり傾けて、お互いの限界も知り、仲良くしたいと思ったことでした。






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