2023年5月16日火曜日

『種から布をつくる』


先日、『ペレのあたらしいふく』を書いたとき、これで木綿の服と絹の服のつくり方の絵本があれば、羊毛、亜麻、大麻に加えて、主要な材料からの繊維のつくり方の絵本が揃うのに、と書いたばかりでしたが、間のいいことに、福音館書店のたくさんのふしぎシリーズで、『種から布をつくる』(白井仁文、熊谷博人絵、島田耕希写真、2023年5月)という本が出版されました。


発売されたばかりの本なので、内容を詳しく紹介しませんが、綿を育て、収穫し、繊維と種に分け、


紡いで染め、織り機にかけて布にするまでが描かれています。
日本で、綿を栽培して布をつくっている白井仁さんの布づくりの物語です。

木綿は、もっとも身近な自然繊維ですが、国内生産は0%です。それでも私たちが綿製品を手に入れることができるのは、地球上のほかの地域で栽培され、糸にされ、縫製までされて運ばれてくるからです。

さて、『月刊 家庭科研究』という雑誌があります。
『月刊 家庭科研究』の2002年12月号では「衣服の素材と環境」を特集していて、それに拙文「木綿はアジアに優しいか」が載っています。目次を紹介すると、

 日々は木綿とともに
 貴重品だった木綿
 木綿はどこからやってくる?
 綿づくりの現状
 換金栽培のもたらす環境・生活破壊
 自然繊維は、環境に優しいか

となっています。
「木綿はどこからやってくる?」の章の途中の一部を引用してみます。

☆☆☆

 綿は近年になってから、収量をあげるため、品種改良が続けられてきた。現在栽培されている綿のほとんどは改良品種で、昔の綿に比べると、丈が低く、実がたくさんなる。この改良品種の綿は、肥料を大量に必要とし、病虫害に弱いものがほとんどである。また、効率を上げるために広域に単一栽培を繰り返すので、綿栽培には化学肥料や農薬の使用が不可欠となっている。
 綿栽培は労働集約型の農業である。綿摘みにはたくさんの人的労働力を必要とするので、現在は人件費の安い、いわゆる南の国々で主に栽培されている。また、水がたくさん必要なので、灌漑された、その国の耕地としてもっとも条件のいい土地で栽培されている。たとえば、インドでは綿をグジャラート州の灌漑地帯で、スーダンでは砂漠を灌漑して耕地に変えた国家の一大開発計画地域(ゲジラ)で栽培されている。綿の栽培国の中には、食糧に事欠き、人々が飢えに直面している国もある。しかし、外貨獲得のため、国民の食糧生産は後回しにされているのが実情である。
 広域に単一作物ばかり栽培していると、土地が瘦せて、病虫害が出やすい。そのため、年々化学肥料や農薬の使用量を増やしているが、綿の収量は減っている。さらに、灌漑地域では地下の塩分が地表に上がってきて塩害が深刻になり、年々耕作不能の土地が増えていく。そのため、綿生産に従事する農民たちは収入が減り、生活に苦しみながら綿栽培を続けている。

☆☆☆

インドで綿摘みをする子どもたち

私たちが1枚や2枚は死蔵しているTシャツにも、一粒の種が芽吹いてからシャツになるまでの長い物語があります。


『種から布をつくる』では、自分の手で布を楽しさが使わってきます。
誰もが種を蒔いて綿をつくることはできませんが、綿を育てた人に思いを馳せ、1枚のTシャツも、大切に着たいものです。
綿は、非食用農作物としては、世界最大の生産量を誇っています。



 

 



2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

昨日本屋さんに行って買って読みました!
春さんのブログを読んでいるおかげで、理解しやすかったです(笑)。
木綿糸で布を織るのは、毛糸より細いので大変そうですが、ご本人はとても楽しそうですね。
布は織らないけど、試しにワタを育ててみたくなりました。
棕櫚の葉で鮮やかな黄色に染まるなんてびっくり!

さんのコメント...

hiyocoさん
私も綿を育ててみたことがあります。花はきれいで楽しいですよ(^^♪
織るのは糸が細くてもまあまあだと思いますが、経糸も緯糸もたくさん必要なので、たくさん紡がなくてはならないのが大変、すごいですね。それこそ、右手で回して繊維を繰り出すのは左手だけだし。そして、綿毛の長さが1.5㎝しかないというのが驚異的、羊の毛は7㎝くらいあります。
棕櫚の黄色、きれいでしたね。植物繊維は動物繊維に比べると染まりにくいのですが、ヤシャブシとかも濃くてとってもきれいに染まっています。