2025年1月17日金曜日

1803年のスヴェープアスク


スウェーデンの曲木の箱、スヴェープアスクです。
直径32センチ、高さ9センチの大きな円い箱で、蓋の天面と側面、本体の側面に木彫りの装飾が施されています。


曲げた木は、白樺の根で丁寧に綴ってあります。そして側板は、天板や底板に木の釘で留めてあります。
このスヴェープアスクがネットショップにUPされたとき、とても買えないと思いました。それでも「誰かが買ってしまったかな?」とのぞいて見ていた日々、大江戸骨董市に行ったときは出品されていたので、実物に触らせていただいたりしました。


それがある日、30%オフになっていたのです。これはもう買うしかないと思って、自分への誕生日プレゼント(早めですが)にしました。


蓋の裏にはコンパスとケガキを使って模様を描こうとした跡がありました。うまく6等分できなかったのか、こちらは諦めて反対の面に模様を彫ったようです。


底には、内側と外側から3ヵ所、鉛で穴を埋めてあります。スヴェープアスクは食料品などを入れることが多かったようですが、この箱には小麦粉を入れた形跡などはありません。小さい穴をわざわざ埋めて何を入れていたのでしょう?
おやっ、写真で見ると本体の底の内側にも模様がケガキしてあり、実物をよく見なおすと、中心の模様だけでなく周囲の円まで下書きしてありました。なぜ仕上げなかったのでしょう? 真ん中近くにある節が気になってやめたのでしょうか? 節のところは確かに彫りにくいと思われます。となると、蓋の天面の内側のケガキも節が大きい面を避けて、別の面を使ったのかもしれません。


スヴェープアスクには制作年が記されているものがありますが、この底には1805年とあります。
1805年といえば220年前、日本ではどんな生活だったのでしょう?
江戸開府から約200年経った頃で、当時活躍していた人たちはこの年、杉田玄白72歳、伊能忠敬60歳、塙保己一59歳、喜多川歌麿52歳、松平定信47歳、葛飾北斎45歳、山東京伝44歳、十返舎一九40歳、滝沢馬琴38歳、徳川家斉32歳、間宮林蔵30歳などです。そして、徳川幕府の最後の将軍となった徳川家慶は若干12歳、遠山金四郎12歳、渡辺崋山12歳、千葉周作11歳、シーボルト9歳、歌川広重8歳と、彼らはまだ世に出ていませんでした。
そして、私のご先祖さまはどんな生活を送っていたのでしょう?


また、アメリカでは2年前の1803年に、フランス(ナポレオン)からルイジアナを買収して領土をそれまでの約2倍に広げています。地図の緑のところがルイジアナです。
来週にはアメリカの大統領に就任するトランプが、アイスランドを売れとか、カナダにアメリカの州になれと圧力をかけているのは、あながち突飛なことではなくアメリカの悪しき伝統なのかもしれません。ハワイも力で(陰謀で?)併合してしまいましたし。


左上から1805年作、上右は1824年、左下は1832年、右下は1864年の作です。
1824年は前年に来日したシーボルトが長崎郊外に学塾兼診療所を開くことが許された年で、医学だけではなく動植物や地理・産業などあらゆる分野の日本研究を、日本人の弟子たちに行わせました。1832年には天保の大飢饉がはじまって東北地方から全国に広がり、その後数年間続いた飢饉のため、各地で一揆が起こりました。1864年は、新選組による池田屋事件、蛤御門の変、幕府の第一次長州征伐など尊王攘夷運動が吹き荒れた激動の年でした。

年の記入されていないスヴェープアスクや、色がすっかり削り取られたスヴェープアスクなどに比べると、制作年が入っているものは想像が膨らんで、なかなか楽めます。
それにしても、どのスヴェープアスクも、200年(+-)の時を経たものとは思えない瑞々しさを保っています。


どれも、まだまだ電力が利用されてなかった時代につくられたもので、板を薄く裂くのも手作業でなされています。





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