2015年5月18日月曜日

ココヤシの葉の籠

骨董市で、旧知のがんこさんが「おやじ」と呼んでいる骨董屋さんが、くちゃくちゃとつぶれた、籠のようなものを持っていました。


見ると、ココヤシの葉を葉柄から切り離さずに編んだ籠でした。

もともとは、新鮮な採りたての青い葉で編まれたもの、どうしてこれが日本の骨董市に出ているのでしょう?


「何にするものか、さっぱりわからないんだけど。500円てとこかな」
私はおやじさんに、これが一枚のヤシの葉から編んだ(というより、織った)包装用の籠であることを説明しました。
「ほら、葉柄が見えるでしょう。何入れて運んだのかなぁ。ビンかな、それともパパヤかな?」
「へぇぇ、そうなの。200円でいいよ」
大喜びでいただきました。

ココヤシの葉を、そのままで編む(織る)籠は、オセアニアの島々でつくられています。
籠づくりの原点とも言える籠で、どこにでもあるココヤシの葉をつかって必要に迫られたときに編んで(織って)、用がすんだらその場で壊したり捨ててしまう籠です。

『世界かご文化図鑑』(ブライアン・センテンス著、2002年)より

写真は野菜を入れる籠ですが、野菜を入れてから編み(織り)閉じ、市場まで野菜を運ぶと切り開いて、籠は捨ててしまいます。
鶏入れの籠も同じで、取り出し口はつくってありません。

『BASKETS AS TEXTILE ART』(ROSSBACH著、1973年)より
よく似た形の籠ですが、葉柄を二つに裂けば、開いた籠としても使うことができます。
どちらもサモアの籠です。
真ん中の部分が、持ち手になっています。

『みんぱく』より

国立民族博物館の会員に送られる薄い雑誌『みんぱく』(切り抜きなので年は不明)には、「ココヤシの葉の籠」という記事があり、いくつかの籠が載っていました。  
例えばこの、マーシャル諸島の三角形の籠は、首長に食べものを貢納する容器として用いられたなど、それぞれの形の籠に用途があります。首長に貢納するとは、小作が地主に年貢を納めるようなものだそうです。


ココヤシの葉柄をつけたままで編む(織る)籠は、上縁が円形の籠もできるし、四角いトレイも編める(織れる)し、自由自在です。
『BASKETS AS TEXTILE ART』には、18ページにもわたって、ヤシの葉で編んだ(織った)さまざまな籠が紹介されていますが、図はその中の一つです。
二枚の葉を組み合わせて籠を編む(織る)様子が、よくわかります。


さて、私のところにきたココヤシの葉の籠は、ちょっと形が崩れていたので、水に浸して柔らかくします。


十分柔らかくなってから、形を整えるために、ビンを押し込みました。
ビンで足りない分は、新聞紙を丸めて押し込んだり、折れ曲がっているところは洗濯バサミでつまんでまっすぐにしたりして乾燥させました。


乾き上がりました。


葉先は一ヶ所に集めて結わえて、持ち手としています。
上の三角の籠に似ているところもありますが、三角の籠では葉柄が底になっているのに対して、この籠では葉柄が上になっています。


底も、編み目(織り目)がそろったので、美しくなりました。


青いまま編まれて(織られて)、そのまま捨てられる籠は、乾燥してしまうとその雰囲気を失ってしまっていますが、それでも素敵です。

日本で一番(三番目くらいか?)この籠に逢いたかった私の前に、ココヤシの葉の籠が現れるなんて、なにか運命を感じてしまいます。







4 件のコメント:

karat さんのコメント...

へー、なるほどなるほど…、多分骨董市とかで見かけても、全く見過ごすようなくちゃくちゃのかごですが、春さんの説明を読むとなるほどなるほど…、葉柄をそのまま使うのか…と感心して、本の写真が美しく見えます (^^;)。
そのような篭がよく、日本の八郷の近くの骨董市に来ましたね…。
 昔の、簡単に用いるカゴと言えば、私が子供の頃(50年以上前)、栗やマツタケが関西の母の実家からよく送られてきましたが、竹でざっと編んだような25センチ四方くらいのカゴ(今のバリのお供え物を入れるカゴみたいな感じのもの)にヒノキの葉と一緒に入っていたのを思い出します。いくらでもある気がしてましたが、あれはもう見ないですね…。
 イチゴも、この季節に、端材のような軽い木でできた箱に並べて入って売られてたと思うのですが(贈答用でなく、普通に八百屋で)…、大人になってからは見かけません。

さんのコメント...

karatさん
私、呼んだつもりは全くなかったのですが、無意識のうちに籠を呼んでいたのでしょうか?それとも、籠が、行くならあそこと思ったのでしょうか。不思議な巡り合わせでした。
それにしても、おっしゃるように包装用の素材にはいろいろな工夫がありました。
日本では、きのこを入れる平たい籠、梨を入れる手つきの籠などありましたが、その他の国々でも、マンゴー入れ、ナツメ入れの籠が違う形をして、遠目にも何が入っているのか見当がつくというのもありました。
気がついたら失われているってことが、多すぎますね。

フナコレタロ さんのコメント...

ものの運搬など物流のために簡易的に使われる一回こっきりのカゴ。
いわゆる「捨てカゴ」は、
最小限の労力や素材でどうにか用途をぎりぎり満たす工夫が随所にみられとても興味深い技術ですね。

ブログの、『世界かご文化図鑑』や、『BASKETS AS TEXTILE ART』(ROSSBACH著)にみるカゴは本当に面白いものばかりですが。

以前自分も今回載せられたパプアのヤシ葉製の野菜カゴと同じものを展示作業でみたことがあります。

最後に葉茎の部分を切り裂いてカゴにするその作り方に感心したものですが、
まず野菜を包み編んで取り出すのに葉茎を裂いたものだったのですね。

ついぞ知りませんでした。
勉強になります。


フナコレタロ

さんのコメント...

フナコレタロさん
熱帯ではバナナの葉といい、ヤシの葉といい、包装に適した素材が簡単に手に入ります。ありふれた素材だから、誰もが長い間親しんできた素材だから、「包む」という行為がもう芸術の域にまで達したのかもしれません。
ココヤシのような細い葉を綴り合わせて籠をつくるのもおもしろいけれど、広い葉を縫い合わせてつくる水汲みもおもしろいし、さまざまな形にお菓子やちまきを包むのも、おもしろいです。
そう言えば、日本の米俵も一回こっきりの使い捨てでしたね。