2023年2月5日日曜日

ヤマト糊


未使用のヤマト糊のビンです。


ヤマト糊は1889年(明治22年)、日本初の「保存できるでんぷん糊」として発売され、今でも糊の最大手です。


1923年には人気女優の栗島すみ子をポスターモデルに起用、「ヤマト糊」を商標登録して、販路を拡大しました。


上の写真は「ヤマト株式会社」(の資料室?)に並んでいる歴代のヤマト糊の資料です。
「えっ、これだけ?」
意外に種類が少ないことにびっくりしますが、関東大震災と東京大空襲のダブルパンチを受けて、東京に本社のあった企業に製品や資料がほとんど残されていないのはしかたないことなのでしょう。
ビンの前に置いてある説明書には、左2つは特許取得以前のビン、真ん中は戦時中の統制陶器、そしてその右はラベルが旧表記のもの、その右は新表記のもの、そしてプラスティックのボトルとなっています。
ここ(資料室?)には、ヤマト糊の最初に発売されたビン(上から2番目の写真のイラストのもの)や、ポスターの中で栗島すみ子が手にしているラベルのガラスビンは並んでいません。

統制陶器とは、第二次世界大戦中、落ち込んだ経済の統制を計るため、鉄や銅製品に代わる陶磁器製代用品を企画し、生産し流通されたものです。

ブログ「統制陶器図譜」より

金属は軍事目的に使用したので不足し、陶磁器で代用品をつくったのは理解できますが、なぜガラスでつくっていたものを陶磁器でつくらなくてはならなかったのか、私はいま一つ理解できないでいます。
製造の燃料代が、ガラスに比べて陶磁器が安くついたとも考えにくいのですが、ガラスはなんとなく、おしゃれでぜいたく品という感じがしたのでしょうか?


さて、この糊ビンは蓋が金属製なので、「歴代のヤマト糊」の写真(上から4番目の写真)の黄色いプラスティックの蓋のものより古いと思われます。


糊ビンには大小があり、これは大ビンで値段は20円。この値段は明らかに戦後の値段です。
ヤマト糊では、ガラスビンの糊に加えて1952年にチューブ入りのものを発売し、

ブログ「これ、誰がデザインしたの?」より

1958年にはガラスビンを廃してプラスティックのボトルに替えています。
これで、軽くはなったし、割れなくなったしで、輸送が格段に便利になったそうです。

右はボトルソウドウさんからいただいたビン

さて、未使用の糊は乾燥して、固まりとなってビンから分離し、振るとカラカラと音がします。
開けてみたい気がするのですが、ラベルが蓋にまで掛けて貼ってあり、濡らしてきれいに剥がして開けてみたところでうまくいくかどうか。ラベルが破れたりすると嫌なので、たぶんこのままにしておくと思います。


それにしても、ヤマト糊(矢的糊)は、134年間も糊業界の第一線を走り続けているなんて、すごいとしか言いようがありません。


我が家で現役のでんぷん糊は、チューブに入ったものです。
新聞の切り抜きなどには、紙が縮まないスティック糊を使うので、でんぷん糊は封筒の封をするくらい、手紙もほとんど書かないので、出番はそう多くありません。これの前に使った同形のチューブ糊は、使い切るのに約20年かかりました。
以前は、同じヤマト株式会社の、手を汚さないで使えるアラビア糊も使っていましたが、めったに使わないのでスポンジの部分が固まったりして使いにくく、とっくに使わなくなっています。
でんぷん糊を指でのばすのは全然嫌ではない、というかむしろ楽しめます。






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