2013年10月30日水曜日

恵比寿大黒の鏝絵


旧聞になります。八月だったか人が来た折に、近所の蔵に案内しました。
八郷に蔵の数々あれど、形、屋根と下屋の屋根のあいだの高さなどなど、もっともプロポーションのよい蔵として、私たち夫婦のあいだでは高く評価されている蔵です。
この蔵は、十年ほど前に改修し、屋根を葺き替え、漆喰を塗り直しましたが、窓の両側の鏝絵(こてえ)だけは、建設当時のままに残してあります。


これまで、 鏝絵はなんとなく見上げるだけでした。
訪れるときはたいてい客人と一緒だし、他人さまの庭の中だし、恵比寿大黒だなというくらいの認識で、そうじっくり見たことはありませんでした。


ところが、今回カメラをのぞいてよく見ると、あれっ、大黒さまはそろばんを持っているではないですか。その前には小判が転がっています。そして、後ろの箱みたいなものは何?千両箱でしょうか。


そして、筆を持った大黒さまが広げているのは、大福帳でしょうか?

わっ、なんという計算高い恵比寿大黒!じっくり見るとほのぼのしていると言うより、欲丸出しのえげつないお顔をしています。

とほほ、ちょっとだけですが、がっかりしました。
あの、明治初期に東北を旅したイザベラ・バードが、
「日本人はみな恵比寿大黒を信仰し、露骨なほど拝金主義が蔓延している」
と書いた、そのままの姿です。
日本人は、とくに昔の日本人は拝金主義者とは程遠いと思っていたのに.....。

今年、立派な蔵を建てて、しかもどこから職人さんをさがし出してきたのか、恵比寿大黒の鏝絵まで描いた家があります。
道から見上げられるので、通りすがりにいつも進捗状況を見ていたのですが、今度ぜひ訪ねて行ってお話を聞いたり写真を撮らしてもらったりしたいと思います。もっともその家は宿(町中)に建っていて、庭が狭いので、見上げてしか写真は撮れそうにありませんが。



4 件のコメント:

topcat さんのコメント...

よく見れば眼は玉眼だし、腕そのものは決して悪くない上手な仕事なのに、勿体ないですね。明治の錦絵とかにありそうです。
こんな構図でも狐や猫だったら許せちゃう私はだいぶ重症かもしれない。

さんのコメント...

topcatさん
まあ、遠くから見る分には、色とか彫とか全体の感じで美しいんだけど、根性が浅ましいですよね(笑)。プロポーションが絶妙な蔵で、左官さんだけでなく、大工さんもいいセンスしています。
最近のなまこ壁のほとんどは鏝仕事ではなく、部品の貼りつけです。だから、最近気張って蔵を建てた家に行って、早く近くからよく見たいんだけれど、なかなか忙しくて行けません。
どんな恵比寿大黒か、楽しみにしていてください。

昭ちゃん さんのコメント...

江戸時代の地口行灯に恵比寿さんが大根をかじる絵で、
「恵比寿大根食う・恵比寿大黒」の地口です。
商売の神様なので我が家にもありました。

さんのコメント...

昭ちゃん
以前昭ちゃんがそんなことを書かれていたのを見たときは知りませんでしたが、大黒さまが大根を抱いている理由知っていますか?大黒さまが二股に分かれた大根を抱いている人形があります。どちらかと言えばエロっぽいのですが、違うのだそうです。
あるとき、お腹をすかせた大黒さまが大根畑を通りかかって、大根を抜いている人に、「一本大根を分けてくれないか」と頼みました。すると、「働いている身、大根の数を厳しく数えられているからあげられないが、これは二股になっているから、これを切ってあげよう」と言って、その人が大黒さまにくれたのだそうです。それで、大黒さまは二股になった大根を抱いているのですって。骨董屋のがんこさんに聞きました。
それで、地口行燈の大黒さまは大根をかじっているのでしょう。
イザベラ・バードの本を読むと、とにかく日本国中どこへ行ってもみんな大根を食べていたそうです。おしんの大根飯にもあるように、大根は明治の頃は日本人の国民的食べ物だったのですね。