2025年7月22日火曜日

蓋つき籠



骨董市の、おそらく最近参入したと見えるお店の前を歩いていたら、黒ずんだ籠の蓋が目に入りました。
「飯籠かしら?」


縁や足に廻した竹を鉄の鋲で留めてあるので、一瞬中国の籠かとも思いました。
見た瞬間、竹籠としてなんだか不自然さを感じたのは、丸い籠なのに底から胴に立ち上げるところで、ひごをほぼ直角に曲げて立ち上げていることでした。普通、竹かごは、竹の特性を活かして、ゆるやかに曲げているものでしょう。


四角い籠でも、角はちょっと丸みを帯びたりしているものですが、この籠は蓋の角は丸みを帯びているものの、本体は直角に立ち上がっています。


蓋を取ってみると、ひごは折れもせず、鋭く曲がっています。そして、底はとても美しい。
美しいけれど飯籠として使うには洗いにくそう、飯籠として使った形跡もありませんでした。
「それ、1000円で~す!」
と遠くから骨董屋さんとしては年齢低めの女性の店主さんが、明るく声を掛けてくれました。
買うと決めてなかったのであいまいに笑って、外側の底を見ようとひっくり返したら、書き込みがありました。


「お母様から」と書いてあります。
お姑さんからいただいたのかしら? いえいえ、そうとも限らない。私の高校の同級生の3分の1くらいは、日常会話で自分の両親のことを「お父さま、お母さま」、それがなまって「おとうま、おかあま」などと言っていたので、ご自分の母親からもらった可能性もあります。
いやいや、しかし自分の母親だったら「母から」と書くだろう、やっぱりお姑さんかと、俄然、関心が出てきました。


「1960・6」という書き込みもあります。
この当時もそれから何十年間も、本の奥付もほぼ全部「昭和〇〇年」です。誰もが元号を使うのが当たり前の時代で、西暦を日常的に使っていた人となると、海外経験のある人など、限られていたことでしょう。


これは読めません。
手に取ったときは、
「置く場所がないからなぁ」
と買う気がなかったのですが、書き込みを見たら、ほぼ買う気になっていました。


底ではなく、底に回した竹の足に「佐渡土産」と書いてあるのも発見しました。これで購入は決定です。骨董屋さんが、ラタンの籠をおまけでくれようとしましたが、そちらは丁寧に辞退しました。

何となく、佐渡は寒いので真竹は生えないかと思っていましたが、じつは竹の宝庫で、竹細工がとても盛んだったそうです。


洗ったら黒い水がたっぷり出ました。蓋が黒いのは囲炉裏を焚いた煤でいぶされたものかと思いますが、囲炉裏と「お母様より」は、なんとなく結びつきません。
いろいろと妄想が広がる籠、夫の薬入れとして使うことにしました。







2 件のコメント:

かねぽん さんのコメント...

おはようございます。
7枚目の写真で読めない字、もしかしたら次の写真とおなじ「佐渡土産」と書いてあるのかも。
僕のボヤケた眼にはそう見えます。

hiyoco さんのコメント...

お土産にもらった日付と誰々からなど書き記す習慣こそ消えてしまいましたね。
かねぽんさんの「佐渡土産」は可能性ありそうに思いました。上手く書けなかったか読みにくいと思ったかで、細いペンで別の場所に書き足した気がします。