2013年5月4日土曜日

藤にツバメ


結婚したときから、夫の手元にあったお茶わんです。

当時、働いていた夫の母は足が悪く、それを気遣った父ともども家を出て、都心の仕事場の奥に、最小スペースの住まいを確保し、最小限のもので暮らしていました。
食卓もなく、低いテーブルで食べる日々、きれいなお菓子の箱など、不用なものは即座に捨て、狭い部屋はいつもすっきりしていました。明治生まれの両親、とくに母の捨てっぷりのよさは見事で、
「こういう生活もあるんだ」
と、目から鱗だったことを思い出します。
これは、そんな母が最小限のもので住むために、元の住まいに置いていったお茶わんだと思われます。

二年前の地震の時、上に重ねていた茶碗が飛び跳ねて割れたのか、底が抜けるという変な割れ方をしていたのを見つけたのは、地震からずいぶん経ってからでした。
上に乗せていたお茶わんの方は、なんともありませんでした。

捨てるには忍びないので、お隣の八郷910のJさんに継いでいただきました。金粉なし、漆のみで継いであります。

まわりをぐるっと藤の花で囲んで、中にツバメが描いてある模様は、ちょっと粋です。


外側にはツバメが四羽、藤棚のようなものも描かれています。


内側と外側のつながりもなかなか素敵です。
今の季節にはピッタリのお茶わんです。


4 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

 春さん
必要以外の必需品を持たない、
なかなかできませんねー
 高峰〇〇さんは生前にきれいさっぱり処分していたそうです。
入院中の方がベットの下は包装紙の山でした。
 これでも半分の書籍は必要な方たちにおくったのですがねー
すぐにあれを調べよーになります。

hatto さんのコメント...

題名「藤にツバメ」をみて、繕いだ漆の部分が藤蔓に見えるのでそんな見たてアートでの題名かと思いましたよ♪。私も先日、洋城にツバメ絵柄の陶片を拾いなんだか嬉しかったです。
それにしても、底がこんな形で抜ける割れ方って、珍しい。街中の教会で、玄関ポーチの照明にツバメが巣をかけていました。雛たちは一晩中、明るくて眠れないんじゃないかと心配になりましたよ。

さんのコメント...

昭ちゃん
もののなかった時代はよかったのですね。包装紙なんてたまり様がありませんから。私の祖母も途中まで、わりと美しい生活をしていましたが、晩年はものがあふれる時代になって、使わないプラスティックの折箱なんかが卓上を占拠するような生活をしていました(笑)。
夫の母は見事でしたが、せっかく選んでお土産にあげても好きでなかったり、大きすぎたりするとあっさり捨てる人でしたから、「これいいね」「あれっ、お母さんにもあげたでしょう」「.....そう?」なんてこともありました。

さんのコメント...

hattoさん
見たことのない割れ方でしょう?地震のすごさがわかります。雀やチドリの絵柄の方が一般的ですね。季節を選ばないからでしょうか。もっともツバメ柄だからと言って初夏だけ使うというわけではありませんが。陶片、拾いたいなぁ。海に行かなきゃ拾えませんよね(笑)。
建設中の頃は、何度かツバメが我が家を下見に来ました。でも田んぼからちょっと遠すぎたみたい。子どもに餌を運ぶのが大変なのか、結局巣を掛けることはありません。すぐ下の田んぼで、元気よく行きかっていますが。