木で箱をつくりたい。そんなとき、もっとも古くから用いられた方法は、中をくり抜くという方法でしょうか。
次いで、四角い箱にしろ桶にしろ板を組み合わせる方法、足で踏んでぐるぐる回しながら刃をあてがって削る轆轤引きの方法、木を木目なりに薄く割いてつなぎ合わせる方法などが考案され、伝えられてきました。
そのうちの、弾力性のある木を割いて、それをつないでつくる曲げわっぱの、もっとも難しいところは、力を持って跳ね返そうとする板をつなぎ合わせるところでしょう。
それでも、自然界には強力な接着剤が多々ありますから、スウェーデンの箱のようにまっすぐ貼り合わせても何の不都合もありません。
重なり合う部分を薄く削って、貼り合わせればいいのです。
もし、つなぎ目が目立つのが嫌だったら、カンボジアの箱のように、漆などの樹液を厚く塗れば、どこがつなぎ目かわからなくすることもできます。
ところが、重なった部分を美しく綴り合わせ、しかもつなぎ目を目立たせた箱が、いろいろなところにあります。そして、つなぎ目を目立たせることによって、かえって数倍魅力的なものになっているのです。
日本での曲げわっぱの歴史は古く、マタギが板を桜の皮で綴って、お弁当箱をつくったのがはじまりだとされています。
おひつ、お弁当箱、ふるいなどなど、日本人のこれまでの生活の中に、曲げわっぱの方法は数多く使われてきました。
スウェーデンの曲げわっぱです。
お弁当箱で、重ね合わせたところは、蔓で綴ってあります。
デンマーク人の友人がこれを見て、昔はよくこんなお弁当箱を職人さんたちが使っていたと、懐かしんでいました。
内側から見ると、蔓はまっすぐで、チェーンステッチの方法で綴ってあることがわかります。
アメリカのクェーカー教徒がつくるシェーカーボックスは、尖った波型の、独特の綴り方を見せています。
今でこそ日本でも買えますし、日本人でつくっていらっしゃる方も多くいますが、その昔は、見たこともないその箱に、恋い焦がれたものでした。
シェーカーボックスの内側になる木の端は、まっすぐに断ってあります。
そして、大きい箱は爪が多く、小さい箱は爪を少なくつくってあります。
割いた木は弾力があるので曲げられると言っても、もとは平らなものですが、白樺の皮を剥いだものは、中を表にして、自然に丸まります。
これは、白樺の皮でつくった、漁網用の浮きで、日本海側に多く漂着しますが、太平洋側でも、茨城県波崎のあたりの浜辺には流れ着くそうです。
皮が層になっているのが見えます。
そんな白樺の皮でつくった箱は、ロシアのものです。
波型に綴ってあるのが、美しい模様になっています。
蓋はぴったり閉まり、湿気のある時は蓋が膨張するので、湿気を嫌う食品などの貯蔵に用いられたようです。取っ手を持ってぶら下げても落ちません。
組んである部分の内側はどうなっているか見たいのですが、薄い白樺の皮で覆ってあって、組み手を見ることはできません。
こちらは、スウェーデンの白樺の箱で、何やら複雑に留めてあるのが意匠になっています。
小さな穴は、留め金を打ってあるところです。
これも、中に別の皮が貼ってあっるので、どうなっているのかは見ることができません。
やはりスウェーデンの箱です。
真ん中部分は、白樺の皮の紐で縫ってありますが、上下の帯の部分はロシアと同じ綴り方です。
そして、内側を見ると、やはりロシアの箱と同じ波型に組んであります。ではどうして表側は白樺の紐で縫ってあるのでしょうか?
これも意匠の一つなのでしょう。
日本にも、寒い地方には白樺の木は生えていますが、もともと、白樺の皮の箱はあったのでしょうか?
アイヌの人々は木工に優れていましたし、千島や樺太も、もとはと言えばアイヌの地、ロシアとも近いので、かつては白樺の箱もあったのではないかという気がします。
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