2021年5月4日火曜日

アケビ細工


信州は野沢温泉の鳩車です。新しいときは真っ白でした。
これまで、その仕上がりを愛でることはあっても、材料が何かを特別気にしたことがなかったのですが、ネットで検索すると、そのほとんどがアケビ細工と書かれています。
しかし中には、アケビの蔓が少なくなったので、藤でつくるようになったという記述もありました。
アケビの蔓が少なくなった?それは信じられないし、ではアケビに比べてフジの蔓が手に入りやすいとも思えません。どちらも山にたくさんありますが、蔓から材料を採る手間をかける人は、減ったに違いありません。


そして、写真が添えられた、こんな記事もありました。
「今出回っているものはアケビ細工と称されているけれどほとんどが偽物で、本物のアケビ細工ではない」
なるほど、私の持っている鳩車とは、色も質感も違います。
2枚の写真を比べてみると、車輪の巻いてあるところなど、籐の方が扱いやすそうです。
ここでやっと気づきました。そうか、「藤」は「フジ」ではなく「とう」、材料として手に入れたときはもう使えるばかりに処理された、輸入物のラタンのことだったのです。これで、藤がアケビより下に見られている理由がわかりました。
あの、デッキブラシの材料に「シダ」と書いてあったように、材料が輸入物であることはなんとなくごまかす、そして下に見る。そのごまかし方がいやらしく感じます。ラタンで何が悪い、ラタンならラタンとしっかり表示すればいいのです。
そんなわけで、へそ曲がりの私は、アケビやヤマブドウなど、もてはやされる素材にちょっと反感を持っていて、値段も高いものだし、積極的に愛でる気分にはなりません


それでも、ときとしてアケビの籠にも出逢います。


この背負子はアケビの蔓だけでなく、根曲がり竹(鈴竹?)と木を配しています。
背負う縄は麻縄、もしかしたら籠屋さんがつくったものではなく、使い手が自分でつくった籠かもしれません。


また、このアケビの籠も好きです。


大きすぎず、小さすぎず、ちょうどいい。
もともとは、何を入れた籠だったのでしょう?


この籠の好きなところは、丸のままではなく半分に裂いて編んでいるところです。
あまり、アケビを裂いて編んでいる籠は見かけませんが、裂いた蔓と丸のままの蔓の配分が、うまくいっています。


籠の底から胴へと立ち上がる部分には、数本の竹ひご(?)を楕円形に形づくり、それに木の皮を巻いたものをあてがって、籠本体に通した蔓に巻きつけて補強しています。


アケビにはアケビの良さが、ラタンにはラタンの良さがあると思います。
ラタンを、日本ではもう処理した状態で手にできるので代用品として扱うのはやめて欲しいものです。ほとんどのラタンには棘があり、その下処理には、収穫の現場で多くの時間を費やしているはずです。


さて、野沢温泉の鳩車に戻ります。
私は長く親しんできたラタンの鳩の方が好きです。もっとも、アケビの鳩は手にしたことがないけれど。







 

2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

フジがラタンだと思っていました!!!草冠の籐で別物なんですね。フジの木を見て椅子とか作れる気がしなかったのはそういうことだったのかー。
私には最初のハトも2枚目のハトも同じ種類の蔓に見えます(苦笑)。

さんのコメント...

hiyocoさん
えぇぇぇ!(笑)
まぁ、そう思わせることを狙った命名ですよね。ラタンはヤシで、いろいろ種類がありますが、棘をうまく使って、どこまでもまっすぐ伸びようとするのが多くて、木に巻きつくフジより、まっすぐな材が取りやすいです。太いのも細いのもあるし。
バングラデシュでは畑で栽培しているのを見ましたが、多くの種類は熱帯林の中でした生きられないのでずいぶん減っています。
最初の鳩、ラタンの鳩は細いひごにしたもの(まあまあ平)、アケビの鳩は材が丸いままです。だから、ラタンの鳩は頭に経線(たてせん)が見えなくて緯線(よこせん)だけが見えているでしょう?つくるとき、材が丸いと、締まりにくくて力が要ります。