2012年11月1日木曜日

セルロイド


頭でっかちの、二等身、三等身、せいぜい四等身までのセルロイド人形を見慣れた目には、このスマートさがちょっと不思議です。
輸出用としてつくられたものでしょうか?

男の子の衣装は民族衣装のよう、日本の人形用には思いつかない服装です。ヨーロッパのどこかの人形を真似たのでしょうか。

スフ(レーヨン、ステイブル・ファイバーの略)と呼ばれていた人絹の、安っぽい布の服を着ているので、戦後すぐの頃につくられたのでしょう。
また、この人形は、手足をつくったときのバリも残っているので、小さな町工場で、数をつくるために雑につくられたものだと思われます。それでも型はしっかりできています。

セルロイド人形を見るといつも、どんな子どもが欲しがったかより、どんなところでつくられたのかが、ついつい気になってしまいます。


以前アップした、左手に赤ちゃん人形右手にガラガラを持って、お母さんごっこをしているこの女の子も、頭の小さいところ、服が糊で貼りつけてあるところが、ちょっと似ています。


骨董市にお店を出しているセルロイドご夫婦、実はもう売るものがなくなったどころか、まだまだ膨大なコレクションを持っていらっしゃるようです。お子さんがいないこともあって、かつては、稼いだお金を全部コレクションにつぎ込まれたとか。だんなさんは、器やブリキのおもちゃなど集められたそうです。

でも、どのような心境の変化があったのか知りませんが、大切にしてくれる人に持っていてもらいたいと、急がず、少しずつ手放してしまうことに決めたそうです。そして、人形たちと別れる前に、部屋中に広げて一緒に過ごしてから別れるのだとか。

お店では、買わないときでも一つ一つ見せていただいたり、動かしたり、お話を聞いたりします。写真の人形たちは小さくて稚拙ですが、夫人のコレクションには精巧な、見事なできのものや、大きな人形がたくさんあります。
とくに、一世を風靡した、セルロイドとブリキやゼンマイの組み合わせのおもちゃたちはりっぱです。

可塑性の高いセルロイドの、可能性を追求した職人たちの五十年。人間の歴史から見ればほんの一瞬ですが、新素材と、型づくりなど古い手仕事の技術が融合した、セルロイドのおもちゃたちが、この世に存在していること自体が、おもしろいなぁと思ってしまいます。


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