2012年11月3日土曜日

パラスパス-フィリピンのヤシの葉細工


『PALASPAS』 (Elmer Nocheseda著、Ateneo de Manila University press)が届きました。
フィリピンのヤシの葉細工の本ですが、正直、手に入れるまで紆余曲折、一難去ってまた一難、「どうでもいいや」と、あきらめていた時の方が長かったかもしれません。


発端は、私のブログの北ルソンの箒や草細工に、この本の著者のエルマーがコメントをくれたことでした。
彼自身、ヤシの葉細工の本を書いているというので、
「見てみたいなあ」
と言ったところから、話がはじまりました。もう何年も前のような気がしますが、メールの記録など見ると、ほんの一年半ほど前のことのようです。

『PALASPAS』をフィリピンのネットショップに注文すると、しばらくして在庫がないという連絡が来ました。確か、50ドル前後でした。


しかたがない、別のショップを見つけて再度注文しましたが、その店は、何の連絡もよこしませんでした。

しばらくして、エルマーにそんな状況を伝えると、出版元のアテネオプレスなら在庫があるからと、アテネオプレスの連絡先を教えてくれました。


ところが、アテネオプレスのネットショップを見てびっくり仰天、本の値段が、最初の店の倍の105ドルもします。
「本一冊に、そんな代金を払う?」
と自問自答します。いえ、払いません。アテネオプレスに値下げ交渉をしました。でも、できないとの返事でした。
冗談じゃないと、この話はご破算にすることにして、エルマーにもその旨伝えました。


忘れたころ、エルマーが、
「安い本屋が見つかったから」
と別のショップを紹介してきました。そこに注文してみましたが、やはり連絡をくれません。
またまた、ずいぶんたってから、
「あの本屋が何も言ってこない」
とエルマーに連絡すると、
「さっさとことは進まないよ。在庫がないから本を探しているのでしょう」
という、のんきな返事が届きました。そんなことってあるでしょうか?

このときの気分は、手に入ってもよし、入らなくてもよし、気楽なものでした。


また、月日が流れました。
先月、出版元のアテネオプレスから再度、
「エルマーから聞きましたが、『PALASPAS』をお探しなら、こちらに連絡ください」
というメールが来ました。きっとなしのつぶての本屋ではらちがあかないため、またエルマーがアテネオプレスに連絡したのでしょう。

ところが、教えてもらったアテネオプレスのホームページが開けません。その旨をメールで伝えると、ホームページが壊れていたけれど、もうなおったこと、念のため値段、送料、送金方法などを書いて、返事をくれました。
「よし、もう、アテネオプレスで買ってしまおう」
このとき初めて、本気でこの本を買う気になりました。乗りかかった船でした。


送金方法として、①ネットを通じてカードで支払う、②小切手をつくって送る、③銀行送金する、の三種類が記載されていました。
安易にカードを使うことは避けたいので、銀行送金しようと、近くの地方銀行に行きました。書類を書いたら、
「相手が受け取るときの手数料も、こちらで払うというところに、チェックを入れてください」
「相手の手数料っていくらですか?」
「2000円です。こちらの送金手数料は4500円、それ以外に2000円くらいかかります」
「えぇぇっ?相手の受取手数料を払わないと、どうなります?」
「届かないかもしれないですね」


ざっと計算しても、全部で200ドルくらいかかりそうです。
「ここだけの話ですが、郵便局さんの方が手数料は安いかもしれませんよ」
そうでしょうか?銀行だってそうたくさんの銀行を経由する必要はありません。だって、アテネオプレスの振込先はシティーバンクですから、東京にも支店があります。
それなのに、どうしてたくさんの銀行を経由しなくてはならなくて、相手の受取手数料まで払わなくてはならないのでしょう?

かれこれ一時間もやりとりしているうちに、地方銀行は、建前としては外国送金をするけれど、実際のところやりたくないのだということがわかってきました。

「うぅ~ん。今日はやめて、出直します」
「あっ、それがいいですね」
なんだか、応対してくれた人、とっても嬉しそうでした。

しかたない、カードを使ってネットで送金することにしました。
ところが、またまたアテネオプレスに通じなくなっています。


こうなったらなんとかして、「本を買う」という、「乗りかかった船」に乗り切る以外ありません。

ネットで『PALASPAS』を検索していると、amazon USAに、在庫がありました。送料込みで155ドル、結構な高額です。
最初に買おうとしたときにも、もしかしたらamazon USAも見たかもしれませんが、そのときは、155ドルなんて歯牙にもかけませんでした。でも今度は、すでに「買ってやる」気持ちになっているので、銀行送金より安いということだけで満足している自分がいます。
アマゾンの送金は瞬時で完了、本を送ってくる日数も、郵送ではなく、アマゾンのルートを選ぶと数日しかかかりません。

銀行では、お金がフィリピンのシティーバンクに、いつ着くかわからないとさえ言われたのに、なんてことでしょう。これではアマゾンが一人勝ちしているのも無理もありません。
こうして、最後は実にあっけなく『パラスパス』が届きました。

ネットでも、エルマーの仕事はたくさん見られます。いまさら本がなくてもと思っていましたが、届いてみたら想像した以上に素晴らしい本でした。
エルマーが足で集めた、フィリピン各地のお祭りや祭壇の飾り、食品の包装用、おもちゃなどのヤシの葉細工がたくさん紹介され、丁寧なわかりやすい写真を見て、実際につくってみることができるのです。
そして、どの写真も紹介したいくらい素敵、たいへんな文化遺産です。


これは、もち米のお菓子の包みです。


葉を編んでから、ココナツミルクと砂糖で味つけしたもち米を入れ、


お鍋で茹でます。


お菓子の包み方も、一つや二つでなく、さまざまな包み方が紹介されています。


この籠は、説明によると、お菓子を売るお母さんを助けて、七歳の少女が毎日毎日つくっているもののようです。


なんと美しい、素敵な籠たちでしょう。こんなお菓子の包み、私だったら絶対捨てられません。


子どもが遊びの中でつくるおもちゃの一つ、カエルです。
他にも、鶏、山羊などいろいろあります。

ちらちらと見ただけですが、素材として、ココヤシ、パルメラヤシの葉のほかに、アダンの葉などが使われているようです。シュロの葉は縮んでしまいますが、ヤシの葉は、色は変わってもずっと姿をとどめます。


本は、300ページ以上、オールカラーの力作で、「ナショナルブック賞」や「素晴らしい著者賞」など受賞しています。


「本」の出版は、コンピュータやスマートフォンに押されて、いよいよ存亡の危機を迎えていると言われています。
夫は、本ももはや、週刊誌のように読み捨ての時代になっているのではないかと言います。確かに、ネットであれば、フェイスブックなど、一ヶ月前の情報は誰も気に留めません。今日の情報だけ読んで、読み捨てて、次へ次へと進んでいます。


でも、私は玩具や民具を愛でるように、本を愛でたい。
好きな本を手元に置いておきたい。
古臭いかもしれませんが、そういう意味では、エルマーのヤシの葉細工の本は、愛でるのに、極上の本でした。

4 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

 春さん執念というか、成り行きというかよくまあ断線もしないでつづきましたね、素晴らしい本です。
 こんな話を思い出しました。
市場で言い値の高い買い物をしたそうです。
ちょっと先に同じものが安くあったので戻って文句を、、、
悠然とした売り手は
「ユア プライス ノートラブル」っと
「あんたが決めた値段じゃないか」
本当の話です。

さんのコメント...

昭ちゃん
そうなんです。成り行き上、じょじょにじょじょにそちらの方向へ行きました。
でも、手にしてみたらがっかりするような本じゃなくて、手に入れてよかったと思う本でしたから、満足です。お金は天下の回りものだから、またなんとかなるでしょう(笑)。
お菓子をヤシの葉やバナナの葉に包んで調理してそのまま売るという文化は本当に素晴らしい。日本だと新潟の笹団子とか粽くらいですが、粽同様、笹団子も外から来たものでしょうかね。

Elmer I. Nocheseda さんのコメント...

I am so happy that you got a copy of the book. and thank you for your post and comments. I am grateful to your interest.

さんのコメント...

Elmer
Finally I have got a copy of your book! It is fantastic from which I could learn the rich fork culture of Philippines.
Thank you.