2013年6月28日金曜日

蘇ったお皿


しばらく前に、息子が割れたお皿を持ってきました。
「誰か直してくれる人知っている?」
隣のJさんには、これまで十個くらい直していただいたでしょうか。一度も修理代を取ってくれないので、さすがに頼みにくくなっています。Jさんは漆塗りの仕事だけしているならまだしも、週三日は賃仕事に行っています。

陶芸家のkuskusさんなら誰か知っているかなと聞いてみると、「ほん陶」さんを教えてくれました。
さっそく息子のお皿の写真を撮って送りました。
さて、金継ぎ代は4000円と出てきました。Jさんは、金粉を使うと高いのでと、いつも赤や緑の漆でやってくれますが、ほん陶さんの場合、樹脂か金継ぎで、しかもお値段は確か一緒でした。
息子に電話します。
「どうする?」
「うぅぅ~ん。うぅぅ~ん。いいや。自分でキットを買って直してみる」
もともと私から貰ったお皿なのに、息子はけちります。まあ、無理もありません。いつか息子の友だちで、100円ショップの食器しか使っていない人もいました。洋服代はばんばん使っても、食器代は考えたことがないとその人は言うのです。
その人に比べれば、息子の方がましです。
「わかった。断っておく」

そう言えば、私も割れたお皿を持っていたのを思い出しました。
震災の時、四枚重ねてしまってあったお皿が、たぶん上下に飛び跳ねて、下の方のお皿が割れたものでした。


やっと形を保っていますが、隙間から向こうが見えます。


30年以上前、手仕事をしていた私は、布地屋さんの手芸講座に招かれて京都に行ったことがありました。そのとき、東寺の骨董市に誘っていただき、買ったお皿です。
まだ、骨董市が珍しかった頃でした。
五枚買うと、謝礼がほとんどなくなったような気がするので、それなりの値段のものだったのでしょう。昔は、伊万里は今より高かったのです。

ほん陶さんに写真を送ると、接着代が2000円、金継ぎが3000円という見積もりが出ました。5000円はお皿代より高いかもしれません。でもこのまま持っているわけにいかないし、捨てるのが惜しいなら、思い切って直していただくしかありません。

 
一ヵ月半後、お皿が送り返されてきました。
「ひゃぁ、美しい!」
素敵な仕上がりで、十分観賞に耐えます。


漆は、ほんのちょっぴり盛りあがり気味、持つと不気味な音を立てて今にもバラバラになりそうだったお皿が、堅牢になって再生しました。


今、息子のお皿の修繕もお願いするかどうか思案中です。だって、もし私に体質が似ていて、息子が漆にかぶれたら目も当てられないし、金継ぎセットだって、それなりの値段だろうし、割れ方は単純だし、三苫修さんのお皿を捨てるわけにもいきません。

そろそろ息子の誕生日なので、誕生日プレゼントとにするのがいいかもしれません。




6 件のコメント:

kuskus さんのコメント...

その後どうなったかな?と思ってましたが、美しく蘇りましたね。
瓢簞のの口からスーッと涼やかな気が流れ出ているみたいです。
少し前、もえぎの社長さんに会った時に春さんのことを思い出し、金継ぎを頼めるのかを聞いてみました。
そしたら、直しはしないけど壊れたうつわを持ってくればその場で金継ぎを教えてくれるというのです。
お店の人は誰でも対応できるようにしてあるとのこと。
なんちゃって金継ぎだから、ほん陶さんのように本格的
なものではないけれどとは言ってましたが。
材料だけ自分で買ってくれればよいそうです。
材料は町内の釣り具やさんでほとんど手に入るそうです。
やきものの町なのだから、だれでもが普通にうつわを直せるようになったらいいなぁと思っているのだそうで
す。
私も、『それ、いいなぁ!』と思いました。
小学生の女の子が『おじいちゃん、また湯のみを割っ
ちゃったの?どおれ、直してあげようかねぇ。』なんて
ね。
これって、映像的には『ちびまる子』ですけど。(笑)
春さんは漆にかぶれるからダメかもしれないけど、参考まで。。。

hatto さんのコメント...

金継ぎは美しいです。この作業自体が芸術ですね。割れた茶碗がないのでわざわざ割って金継ぎをしようかとまで思ってしまいます。お金がないのでそんな勇気はありませんが(笑)憧れですね、長年の。

さんのコメント...

kuskusさん
教えていただいて、本当(ほん陶)にありがとう。その昔、目黒に骨董屋さんばかり入っているビルがあって、ときどき金継ぎしてもらっていました。あるとき、受け取りに行ったら、「すぐできるからちょっと待って」と言われて、見ていたら接着剤でくっつけたものにプラモデルを塗ったりするプラカラーの金で線を描いたので、以後二度と頼みませんでした(笑)。食器として使えませんよね。
ほん陶さんはちょっと高かったけれど、やってもらってよかった。懐は軽くなったけれど、気持ちは晴れ晴れです。
漆にかぶれなかったら、私の人生は違っていたかなぁ。と言っても現実にすごくかぶれるので、何とも仕方ありません。でも、自分でやるとけっこう雑仕事になってしまいそう。
教えていただいてありがとう。
釣りする人って、ルアーとか自分でつくるのかな。釣り具屋さんで金継ぎの材料を買うって面白いですね。

さんのコメント...

hattoさん
えっ、割れたお茶わんがない!。素晴らしい!食器籠はステンレスのものを使っていないんですか(笑)?ステンレスの食器籠は固くて割れやすいので、我が家はアルミですが、それでもすぐ縁が欠けたりします。私は全部夫のせいにしているのですが、私も欠いていることがあるかもしれません。とくにお茶わんは割れるようで、江戸時代につくられたものが、六客丸々我が家で無くなったりしています。
地震も、今度だけじゃなくてけっこう遭っています。やれやれ。
でも、金継ぎと言う技術があって助かっています。そう言えば、昔、割れたお茶わんを金属のかすがいのようなもので留める技術もありましたね。あれもすごいです。

hatto さんのコメント...

金属鎹のもいいですね!ほしいなあ。ステンレスの篭ですよ。でも、置くときにはとても気つけて置いてます。沖縄の茶碗などはなるべく上になるように重ならないように置いたりとか洗う順番を考えてやってます。夫の作った湯飲みはそういえば口元が少し欠けてますね(つくりがわるい?笑)釣り具店にはチューブに入った小さな「本うるし」と書かれたものが売ってますね。つりざおの修理に使うんでしょう。私も一時期、ルアーやケバリ作りにはまり家族でちまちまやってました。釣れた魚は結構な数で感動的でした。今度、うるしを草篭に塗ってみようかと思ってますが、、、私もかぶれるのが恐いので友人にやってもらおうか思案中です。恩師が陶に布(蚊帳の様な)を貼りその上から漆を塗る手法で椀などを作っています。あれも面白いですね。漆は素敵ですね。

さんのコメント...

hattoさん
ステンレスで、割らないなんて立派です。長い間、ビニールでコーティングしてあるラバーメイドの籠を使っていましたが、飽きました(笑)。竹の籠も使ってみましたが、籠の乾燥の方に力を使うので、長続きしませんでした。
そうなんです。漆は素敵なのです。でも、これまで何度かぶれたことか。一番ひどかったのは、全治一ヶ月以上かかりました。マンゴーを食べてかぶれたのも加えると、数限りなくかぶれで苦労してきました。
それでも漆製品にはかぶれないのをよしとしましょう。