2013年6月10日月曜日

印判のお皿

磁器のお皿なら、なんといっても呉須の染めつけが好きで、印判のお皿は一枚も持っていませんでした。
でも、明治、大正、昭和の印判のお皿には、文明開化、風俗、物語、動物などなど、時代を反映したおもしろい文様のものがたくさんあると知り、最近は骨董市などで、印判のお皿にも一応、注意を払って見ていました。
ところが、見掛けるのはどれも凡庸な模様のものばかり、印判の本も出ていることだし、今どき珍しい文様にお目にかかる機会などないのだろうと、期待もしていませんでした。

さて、ひたちなかのホームセンターに買物に行った日、久しぶりだからと雑貨売り場ものぞいてみました。
アルマイトの手つきの小さいボウルが素敵で、買うかどうかしばらく迷いました。すでに小さいボウルは数が十分あり、薬味を切ったりするたびに入れても、全部使うのは、一年に数度、やっぱりやめました。
ふと横を見ると、半端な数の、漆の古い煮物椀が置いてありました。そして、その横に、いろいろな箸置きを乗せて、印判の五寸皿もありました。新品に交じって、その二つだけが古いものでした。


箸置きを除けてみると、なかなかおもしろい文様が現れました。
若い振袖の女性が二人、川のほとりに立っています。川には屋形舟が浮かんでいて、こちら岸には東屋が、川向うには家が二軒建っていて、川向うの土手には、傘をさして歩いている人影が見えます。森も、山も見えます。
そして、女性たちは花見に来たのでしょう、手前にはアヤメが咲き、頭上にはフジの花も満開です。


特徴のある印判皿ですが、不良品でした。
一枚は三日月形に、ずれて段差ができています。


それも、糸敷きには関係なく、丸く跡がついていますから、窯に詰める時、お皿にリングを置いて重ねていたのでしょう。


そして、もう一枚は亀裂が稲妻形に走っていますが、やはり糸敷きに関係ない丸が見えます。


しかし、不良品なら、どうしてその場で割られて捨てられなかったのでしょう?残っていたことがなんだか不思議です。


小さいお皿ですが、縁飾りも凝っていて、文様がてんこ盛りです。


裏を見ると、輸出用だったようで、MADE IN JAPANと書いてあり、漢字は大日本、あとは水鐵製と書いてあるのでしょうか、それとも火鐵製、読めません。
しかし、輸出先はどこでしょう?西欧で、パン皿として使うなら、もう少し大きい方が喜ばれたことでしょう。


裏までずれていますが、水は漏れません。でも使わないつもりです。
使わないお皿を買ったのは初めて、一枚が525円でした。



6 件のコメント:

hatto さんのコメント...

素敵な絵柄ですね。ひずんでいるところがまたいいです。昔の陶磁器は不良品でもちゃんと残っていることが多いですね。今の様にすぐに廃棄にはならなかったのでしょう。瀬戸にも昔の陶器が木箱や藁に包まれてそのまま残っている所もありそうです。路地を歩いていても普通に陶片が沢山落ちていますが、海の陶片と違い鋭利なままですので危険です。私も先日、ほぼ完品の茶碗をみつけました(拾いました)昭和初期の転写ものですが、花を活けようかと思ってます。今の茶碗に比べ随分すり鉢状になっています。ご飯は少ししか入りません。昔は今の様に米も採れず沢山ご飯を食べられなかったからでしょうか?外で茶碗を洗っていると、通りがかりの男性が(80才とのこと)昔、陶器に絵柄を描いておられたそうで、私の拾った茶碗の次には胴が丸みを帯びた茶碗のデザインに変化したとのお話でした。

さんのコメント...

hattoさん
そうなんだ、不良品も残していることがあったのですね。売れないものだから、てっきりすぐ割って、砂利の代わりにしたりするのかと思っていました。
hattoさんもひずんでいていいと思います?私もきれいなものより好きかな、傷も素敵です。
茶碗を拾ったなんて、いいなあ。すり鉢状って、私のおじいちゃんの茶碗(http://koharu2009.blogspot.jp/2012/09/blog-post_4.html)のようなのですね。でもおじいちゃんの茶碗は、他の誰のものより大きめでしたが。昔の茶碗は小さくて、どれも蓋つきでしたね。茶碗が割れても、蓋だけ残って(笑)、いつまでも持っていて、そのうち仕方がないと諦めて捨ててきました。自分ではほとんど割らないのですが、茶碗が失われる確率はお皿より高いでしょうか。ずいぶん割ってしまいました。

kuskus さんのコメント...

昔の陶器市などでは、丼などの日常品を5個、10個とまとめて買っていたらしく、一番上と下には完品で間にはキズモノをはさんで手早く荒縄で縛って売っては下働きの小僧が小遣い稼ぎをしたという落語みたいな話を聞いたりしたことがあります。
反対に受け取ったお金を丼の中に入れたまま縛っちゃって、あとで気づいてあわてたり。。。なんて話も。
のんきな時代だったんですね。
春さんの印判皿にも、どんな過去があるのか聞いてみたいですね。

さんのコメント...

kuskusさん
あはは、観光地の中国人みたいですね。
カンボジアでもばかし合いで、路上で果物を買う時、しっかりした人は買いものに行くにも、ばねばかりを持参していました。そして計ると、両方の目方が違うのです(笑)。
でも、こんなに不良品だったら、さすがに売れなかったでしょう。もしお皿に口があったら、いろいろな苦労話をしたいでしょうね。窯の中の話から、これまでの行くたてを。
お金を忘れると言えば、私も何度かひょんなことから自分がしまって忘れたお金を見つけたことがありました。昔はお皿の間に挟んでおいて使ったりしていたから(笑)。

mmerian さんのコメント...

私も印判皿が欲しくて先日捜しに出かけましたが、春さんのお皿のようなステキな皿は見つかりませんでした。
チドリ柄を買おうか?と迷いましたが、ひびが入っていたのでやめました。印判皿の魅力は、完璧でないことかもしれませんが。笑い

さんのコメント...

mmerianさん
おかげで楽しみが増えました。と言っても、あんなに素敵な本なんか出たら、面白い模様のものを見つけるのは難しそうと諦めていたら、偶然出会いました。
もし、mmerianさんが漆にかぶれないなら、ひびは怖くありません。安価な金継ぎセットが発売されているし、食品を入れないなら、エポキシ系の接着剤でくっつけてもかまいません。でもかぶれるなら、お勧めしません。けっこう金継ぎもポピュラーになってネットでもやってくれるところがありますが、お皿の値段と見合わなかったりします(笑)。