しばらく前の骨董市でのこと、あまやさんが大声を出しています。
「おぉい、来たよ、来たよ」
いったい何が来たんだか、大きな声。
それでも相手には聞こえなかったみたいで、
「さわだぁ、来たよ」
と、もう一度。あまやさんは、お隣のテントのさわださんに知らせていたのです。
一巡したので帰る前にもう一度だけぐるっと回ってと足早に歩いていた私は、そんな声には無関心。何が起こっているのか見もせず、ちょっと離れたところを、通り過ぎようとしていました。
「おぉい。ちょっとぉ」
やけに騒がしいこと。
今度は知らない声だったので、何気なく声の方を見ると、声の主はさわださんのお客さんで、何故か私の方を見ていました。
えっ、もしかして「来た」って私のこと?
近づくと、小さなビンを突き出してさわださんが静かに口を開きました。
「300円!」
その朝は、おもちゃ骨董のさわださんの店はもう冷やかしたあとでした。
いつも何かしらおもしろいものが見つかるさわださんの店ですが、その日は何も見つかりませんでした。それでも、椎間板ヘルニアで下半身不随になった犬のミルキーを抱っこしたり、おはじきを見たりして、さんざん長居をしたあとだったので、用があるなんて思いもよりませんでした。
どうやら、私が行ってしまった後で、荷物から小さなビンが出てきたようでした。
そろそろ人も増える時間、大騒ぎだったのできまりが悪い私は、ビンをろくろく見もせず手持ちの袋に突っ込むと、さっさと帰って来てしまいました。
こうやって、小さなビンは向こうから勝手にやってきました。
さて、家に帰ってビンを見て、何のビンだったのか聞かなかったことに気がつきました。
さわださんも何も言っていなかったので知らなかったかもしれないし、まあ、何でもいいと言えば何でもいいのです。
片側には、「アコオド」、
もう一方には、「浅野製」とエンボスがあります。
やれやれ。後世の人にもわかるようにするには、何が入っていたのかちゃんと書いておいて欲しいものです。
左がその、何が入っていたか不明のビン、真ん中が「おだし」と書いてある出汁のビン、そして右が「あさひ染」と書いてある染料のビンです。
用途不明のビンも染料のビンに見えますが、実際は何だったのかは不明です。もっとも、染料といっても、白髪染め、布染め、食紅などいろいろありました。
さらに、軟こう、目薬、ポスターカラーのビンなどなど、プラスティック以前は、なんでも小さいビンに入っていたのですね。
全部さわださんのところからやってきたビンたちです。
4 件のコメント:
この時代のビン類は気泡が多いけれど
透明感がいいですね。
昭ちゃん
昔のビンは、どうやったら満足のいくものがつくれるかと工夫している感じが随所に見えていて、愛嬌がありますね。
あんまり気泡だらけのビン(見たことがあります、笑)は気持ち悪いけれど、ちょっと入っているのは柔らかさが出ていいです。大きいのがぷくっと入っているのもいいし。
おかげさまで、さして努力せずに(笑)小さいビンが集まっています。
内服頭痛薬(東京・浅野)の空瓶です。
古書店・狐洞書房
古書店・狐洞書房さん
内服頭痛薬の情報ありがとうございました。全然便には詳しくないのに、なんだかんだで小瓶が増え、それでとても心豊かになっている私です。
ありがとうございました。
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