「なんか、見たことがあるような?」
そう思っているうち、ふと我が家の庭や林の中に生えている植物が、カラムシに似ていることに気がつきました。
もと同僚で、カラムシに魅せられて、いろいろ訪ねたり、実際に織りものに挑戦したりしていたH夫妻を思い出し、電話してみました。電話口に出たのは夫人のKさんでした。
「えっ、カラムシが生えているの?茎が赤くないのね?」
「茎が赤いのも生えている。もしかして、それってアカソ?」
「そう、カラムシと似ているの」
「そうかぁ。アカソからも繊維がとれるんだって」
「えっ、知らなかった。そうなんだぁ。カラムシの資料を調べてコピーして郵送するから」
それから間もなく、分厚く膨れ上がったファイルが届きました。
Kさんはすごい!
昔から、手早くじょうずにまとめるのは知っていましたが、これ一冊で、カラムシのこと、大麻のことがよくわかります。
ファイルには、資料のコピーが、たくさん収められていました。
だんなさんのTさんは、カラムシだけでなく、大麻の方により惹かれていたとか、いずれにしても、かつては「麻」とくくられていた糸に関心をもち、長い間かかわっていらっしゃいました。
H夫妻が糸に撚りをかけるのを習っている写真もありました。
カラムシの繊維のつなぎ方の図解もあります。
植物を繊維にする工程も、説明だけでなく図解もあり、よくわかります。
ファイルが膨らんでいたのは、大麻と、
カラムシの実物を入れてくださっていたからでした。
さて、資料を参考にしながら、カラムシを糸にする準備をしてみることにしました。
石を置いた間から生えている、丈の高いカラムシを切り取ります。
他の場所のは、一度も二度も刈って、また生えてきたものですから、まだまだ丈が短いのです。
葉をしごいて落として、棒状にします。
本当はこの時点で長さを揃えるのですが、きれいに糸が採れるかどうかもわからないので、適当に切りました。
皮は、二枚にむくと書いてあります。
まず表皮をはいで、その下の繊維をとるのかとやってみましたが、完全に間違っていました。表皮をはいだだけなのに、芯だけで、繊維が残っていません。
「二枚、二枚って何?」
ここでやっと、二枚というのは細く適当に皮をむくのではなく、一本の皮を二つに割って、二本の太い繊維を取り出すことだと理解しました。
ところが、なかなか一枚のつながった繊維にならず、葉のついていた跡などにぶつかると、細かく裂けてしまいます。
もう、皮をはいでいる時点で、めちゃくちゃ細い繊維になったりすると、どうにも始末に負えません。
「いい調子、いい調子」
最初は厚みがあり、太さもあって、しめしめと思っていても、すぐ薄くなり、細くなって、最後までむかないうちに立ち消えてしまいます。
いやはや、めちゃくちゃな皮むきでした。
後でもう一度資料を注意深く読んだら、皮のむき方が間違っていました。正しくは、真ん中あたりで折り、指を入れて、丁寧にむいていくのでした。
収穫時期も、ちょっと違うかもしれませんし、密集して育て、上へ上へとひょろっと伸びた栽培カラムシとも違うことでしょう。
次は「ヒキ」です。
表皮を掻き落とす作業で、ここまではその日のうちにやった方がいいのです。
ヒキ板の上に、「ウチ立て」を二本立て、一枚ずつヒキます。
もっとも、「ウチ立て」とは何かがわかりません。代わりに包丁を二本立ててみました。
上が表皮のついたもの、下がヒイタものです。
皮を太く裂けていると、ヒキがいがありますが、半分は下のように細いものでした。
半日陰で数日乾燥させますが、今の季節は陽のあたらない軒下に干してみました。
2 件のコメント:
はー、野山の植物から繊維を取って布にするのってえらく大変ですね…。その繊維でどれだけの布ができるのか…。
かつては(縄文時代とか)食べ物を調達するのが先でしょうし…。
サバイバルは一筋縄ではいかない、というかかなり無理な感じです…。
karatさん
あはは、いつもサバイバルを考えている、今の世の中、長くは続かないと思っていますね。確かに壊れそうにもなく強固に見えて、どれもがつながっているから、壊れるときは早いでしょうね。3.11の後の東京のコンビニに何も並んでなかったように。
木綿以前、庶民には麻しかなかったということはどうゆうことだったんだろうと常々思っていました。また、食料生産と衣類の材料栽培では土地が競合するとも思っていました。でもそうでもなかった、衣類の材料も栽培していたようでした。カラムシは野菜を育てられないようなところでも育つし、必ずしも、完全な自給自足しなくても、分業・交換というのもあっただろうし。ただ、あのアンギンに出てくる秋山郷の中のいくつかの村は、飢饉で無人になっています、お腹いっぱい食べられることなんか、一年に一度もなかったとか、それはつらいですね。今でも世界では総人口の8分の1が、飢えていますが。
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