西荻窪の骨董屋さんのUNTIDYは、FOLK ART(民藝)の素敵なお店です。確かな目で選ばれた、古今東西の愛おしいものたち。
でも、ほとんどが高根の花たちなので、見て、その背景を知るだけで満足でした。
そのUNTIDYが、先日、素敵な、素敵な、フィンランドの曲げ木の箱を紹介していました。
店主のかしわばらさんが、フィンランドのヘルシンキで見つけられたもの、大きな箱で、直径33センチあります。
もし、デンマークの野外博物館で、大きな曲げ木の箱たちを見ていなかったら、大き過ぎると、躊躇したかもしれません。
値段は、いろいろ節約すれば、買えない値段ではありませんでした。状態もいいし、もうこの先、こんな箱に出逢うことはないだろうと、思い切りました。
以後、この箱を見るたび、とても幸せな気分を味わっています。
蓋はぴったりと閉まって、蓋についた持ち手を持ってぶらさげても落ちません。むしろ、開けるのに力が要るくらいです。
もともとは、台所に置いて、豆やチーズなどを入れたものでしょうか。
落ち着いた色が残っていて、とてもきれいです。
曲げ木の箱は、世界中に見られます。
木をくり抜いてつくった箱と比べるともちろんのこと、木を組んでつくった箱と比べても、圧倒的に軽くて、扱いやすく、丈夫で、壊れにくいのが特徴です。
曲げ木の箱は、薄い板をつくり、それに蒸気を当てたり、お湯に入れたりして曲げ、輪にして綴り、甲板や底板をとりつけて箱にしてあります。
地域によって、民族によって、いろいろな材料で、いろいろな方法で綴じてあります。
この箱は、スウェーデンのお弁当箱と同じように、白樺の根を使って、チェーンステッチで綴っています。
フィンランドとスウェーデンでは民族が違います。
言葉も通じあわないそうですが、手仕事には垣根がないのでしょう。
箱がつくられた年は、1824年。
日本では、江戸時代の文政七年。歌川広重が活躍していた時代です。
当時、もちろん電気はありません。北に位置するフィンランドの、寒くて日照時間の短い冬の日々を、人々はどう過ごしていたのでしょうか。
蓋の甲板は、少し丸みをつけて削った板を使い、本体の底板は、平たい板を使っています。
大きな板を、薄く、きれいに裂いたり、切り出したりするには、高い技術が必要でした。
これほどの大きさですから、大木を裂いて、つくってあるのです。
曲げ木の部分と、甲板や底板の接合は、木釘で留めてあります。
それぞれ15か所留めてあるうち、蓋は6ヶ所、本体は5ヶ所で、木釘が抜け落ちていました。
1ヶ所は、木釘は残っているものの、打ち込む方向が浅過ぎたためか、蓋の裏の板が欠けて、木釘が効いていません。
古いものには、いっさい手を加えないという選択もありますが、最小限の修理を施して、これ以上壊れにくくするという選択もあります。私は後者を採りました。
使われている木釘は堅いオークに違いありませんから、樫の木を削ってつくればいいのですが、簡便に竹串で代用しました。
竹串が差し込めるところはそのまま差し込み、折れた木釘が詰まっている個所は細いドリルで穴を開けてから竹串を差し込み、少し残して切ってから、
ゲンノウで打ち込みました。
もちろん、接着剤は使いませんでしたから、竹串を樫の木の釘に替えたくなった時は、いつでも替えられます。
蓋の、曲げ木の部分が欠けてしまったところ、2ヶ所と、蓋の裏板が欠けたところは、竹串を打つことができませんでしたが、それ以外は打ったので、しっかりしました。
これでまた、200年は十分もつことでしょう。
よく見ると、灰緑色と黒(濃紺)だけでなく、褪せてしまっていますが、もともとは、別の色、少なくてもあと二色は使われて、模様が描かれていたのがわかります。
これまで大切にされて、191年も残ってきた箱でした。
6 件のコメント:
何日か前のテレビの早朝番組で「秋田の曲げわっぱ」をちょうど取り上げていました。お湯につけた杉の板をグーッとまげて、桜の皮で綴じていたような…。ちょっと欲しくなりました(^^)。
曲げ木の箱は本当に世界中に見られるのですね。
それにしても、きれいにお花とかの模様を描いているのに、1824というのをなぜ中途半端に改行するのか…(^^)。私も、書類などに、住所など後を考えずにさっさと書いてつかえてしまって中途半端に改行せざるを得ないというのはよくやるので、他人事でなく…(^^;)。
ところで、その早朝の番組「もういちど 日本」というのですが、いつだか「茨城 古民家の里」で八郷地区が紹介されていました。この地域は豊かで、農民は経済的に余裕があったとか。5分間の番組ですが、紹介される景色を、へー!、と見ていました。
karatさん
曲げ木は世界中にあって、とってもおもしろいです。カンボジアにもありましたが、ブータンにもあるようです。メキシコとかペルーにもありますしね。
たしかに、周りの模様は、しっかりつながっているのに、年代の改行は不思議ですね。それに、デンマークやスウェーデン、フィンランドなどの、年号の入っている箱や家の年号が西暦ということにも驚いてしまいます。いつから西暦なんだろう?
そう、八郷の萱葺き屋根のテレビは私も見ました。長い番組のダイジェストだったようですね。知っている家、知っている顔が出てきました。このあたりには、萱葺き屋根の保存会というのがあります。ただ、萱を集めるのがもっとも大変で、萱場がなかったり、人手がなかったり、保管場所がなかったりします。もう家じゅう溢れんばかりの萱を蓄えていた人が屋根を葺き替えたのを見ると、屋根のたった一面の半分だったりします。そして、以前は囲炉裏で一年中火を燃やしていたので萱が乾燥して、20年はゆうに持ったのですが、部屋を密閉した現代の暮し方だと、たった数年で萱の上に苔が生えて来て、ダメになって行きます。維持が大変なため、私たちが来て15年のうちにも、ずいぶん萱葺き屋根は壊されました。残念ですね。でも、家の中から上を見ると空が見えたりして、冬は寒いです。
それはそうと、karatさんのブログにも、最近はコメントできなくなっています。何とかなるのか、息子待ちです。
コメントできないって、よくわかりませんね。いまどきさんのもgooブログなので、gooブログの不具合かも…。
ただ、私も、別の方のブログにコメントして、4ケタの数字を入力するタイプですが、何度入れても、数字が違う!と出ます。絶対あってるのに!と、何度やっても、違ってますと冷たく拒否されます。わかりません(^^;)
karatさん
コメントの画面が出たとたんgooへのログインの画面に変わります。gooのIDを取得して、いざコメントしようとすると、今度は私自身がgooでブログをはじめる画面になってしまいます。なんだろうなぁ。もう、どうなっているのか、見当もつきません。
もちろん、gooのブログだからできないのです。
春さん、何回もすみません。
gooの事務局に問い合わせて、メールで返事が来て、設定はどうかと聞かれましたが、私の方の設定は、いつでもだれでもコメントできる設定なので(IDがなくてもコメントできる)、それならば、確認するので、投稿できなかったのはどの記事か知らせてほしいと言われました。お手数かけて大変申し訳ありませんが、お時間のある時に、投稿できなくなった記事をお教え下さるとありがたいです。
karatさん
コメントをクリックすると、隣に鉛筆マークが出るので、そちらクリックして下を見ていませんでした。その鉛筆マークは、それについてブログを書くというものでした。なあんだ、まずコメントをクリックして、鉛筆マークが出たらもう一度コメントをクリックするとコメントできるようです。一度ではできなくなっているだけでした。
よかった、ばかみたいにいつまでも鉛筆マークをクリックし続けていました。やってみます。できるかな?
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