2016年11月27日日曜日

生命の木


『CERAMIC TREE OF LIFE』(Lenora Hoag Mulryan著、UCLA FOELER MUSEUM OF CULCTURAL HISTORY発行)という、メキシコの民藝である、トルカ地方のメテペックでつくられる、「生命の木」ばかり掲載した本があります。


十九世紀の中期以降、メテペックの陶工たちは、スペイン式の建物のファサードや手すりのための、装飾用の動物たちを、光沢のある土器でつくっていて、それが都市で人気を博するようになりました。はっきりしませんが、そのころから、生命の木がつくられるようになったのではないかと考えられています。


日本の、中南米の民芸店に、大きな大きな、一メートルもあるような生命の木を、お店のシンボルのように置いてあったのは、1980年代だったでしょうか?
近頃では、職人さんもいなくなって、すっかりつくられなくなってしまったとも聞きます。


この本に載っているのは、博物館の収蔵品なので、当たり前と言えば当たり前ですが、どれも息をのむような美しさです。 


土をひねりながらつくった生命の木、とても繊細で、バランスが取れています。
 

我が家にも、ほんの少しだけ、メキシコの生命の木があります。
アメリカの小さくて古い町の、おしゃれな店に並んでいた、ろうそく立てです。


1ドルが360円の頃に7ドルでしたから、当時、日本円にすれば2500円くらいでした。
今では、ときおりネットショップで、1970年代(これは60年代)の生命の木を見かけることがありますが、たぶん、10倍くらいの値段です。


これは、80年代のものだと思います。
つくり方も雑、色の塗り方も雑、そう気に入っていませんが、アダムとイブは、生命の木の典型的なテーマの一つです。


ちいさい生命の木たちは、世界中の「かわいい」の価値観が同じになってしまった、2000年以降のものでしょう。


とってもよくできていますが、抑えた色、丸っこさ、かわいらしさ、すっかり無国籍になってしまっています。


メキシコの生命の木を真似て、ペルーでつくられたのではないかと疑ってしまうようなできあがりです。
もしかしたら、インドネシアでアフリカの工芸品をつくっているように、ペルーでつくったものかもしれません。

1967年のメテペックの作家さんと生命の木







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