先日の骨董市で、おもちゃ骨董のさわださんの店をのぞいたら、待ってましたとばかりに、招き猫の絵のついた土鈴を見せてくれました。
丸い素焼きの土鈴に、招き猫が描いてあります。
「300円!」
相変わらず、値段連呼のさわださんです。
土鈴は流し込みでつくられていて、絵はステンシルかもしれない、土産ものっぽすぎます。
手に持って困っていたら、
「じゃぁ、犬張り子はどう?300円」
ぼこぼこに潰れた犬張り子ですが、つぶれた顔に愛嬌がありました。
「こっちにするわ」
次に、さわださんが手に取ったのは、小さなお椀でした。
「これも300円」
300円のオンパレードです。
あらあら、直径8センチほどの、輪島塗の、赤ちゃんのための「お食い初め」のお椀でした。
世の中は変動しています。
プラスティックが出現したとき、バケツやじょうろをつくっていたブリキ屋さんや、各種竹籠をつくっていた籠屋さんなどは、大打撃を受けたことでしょう。
そして、漆器屋さんの打撃も、相当なものだったに違いありません。漆器そっくりの、安価なプラスティックのお椀や重箱、お盆などが出回って、誰もが飛びついたからです。
なかでも、高級漆器である輪島塗は、大変だったと思われます。
というのも、輪島塗は、土台が木でできていることを隠すかのように、ひたすら生地を薄く挽き、木目を消して、漆をつるつるに塗って、その上に色絵を描いてきましたが、それをプラスティックで、ウソのように真似ることができたからです。
このお椀は、もちろん木の生地に本漆を塗ったものです。
模様は、子どもが無事に育つようにと願う、犬張り子と電電太鼓です。
犬張り子は、銀蒔絵です。
そして、電電太鼓は金蒔絵で描かれています。
輪島塗は分業です。
このお椀は、熟練した職人さんたちが何人もかかわって、つくりあげたもの、300円では切ない気がしました。
次にさわださんは、着せ替えを勧めます。
またか!
紙のものは、どうやって取っておいたらいいか、よくわかっていません。
「私、もう紙ものはいらないわ」
やんわりと、そんなことをつぶやいても、さわださんはお構いなしです。
「ほら、三枚つづりになっているでしょう。300円」
「ほら、キューピーもついている」
私がキューピー好きなのを知っていて、さわださんはそこを押します。
というわけで、さわださんとの攻防の末、またものが増えました。
招き猫は、おまけにいただきました。
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