世の中には、道具らしい道具もあれば、道具には見えない道具もあります。この、どこにでもありそうな棒のようなものたちは、糸巻きの管です。
糸を紡ぐときや、杼(ひ)に収める緯糸(よこいと)を巻くときに使います。
糸巻きを入れているのは、韓国の杼です。短くて高さがあり、杼としては使いにくそうですが、よく使いこまれています。
いったいどんな織りものに使われた杼でしょうか?
RUKA'S ROOMからお借りしました |
糸巻きの管は、糸車の紡錘(つむ、針状のもの)に刺して使います。
竹はもともと穴が開いているので、糸巻きとして、一見ぴったりに見えますが、実のところあまり使われていません。
というのは、穴の大きすぎるものはしっかり留まらないし、小さすぎるものもまた、針の先の方までしか突き刺せないので不安定、適切な大きさの穴の竹をより分けたりするのが手間だからでしょう。
これは、ラオスの糸巻き管です。
「一つ、もらってもいい?」
ともらってきたものです。
芯が柔らかくて、穴を開けやすい小枝だとは思っていましたが、何の木を使っているのか、気にしていませんでした。
ところが、古い友人Kが、十年ほど前にトラへのお土産として持ってきてくれたマタタビの枝が、何だか似ていると思い、ラオスの糸巻きとつき合わせてみたら、そっくりでした。
熱帯にも、マタタビやサルナシの仲間が生えているのでしょうか。
からむしの糸づくりを教えていただいたとき、福島県昭和村で、麻糸を紡ぐとき、糸巻きとして使っているのは、繊維を取ったあとの、大麻の茎と知りました。
大麻の茎は、昔はふんだんにあったし、簡単に針に突き刺すことができる、すぐれものでした。
今は、大麻の栽培は制限されているので、ほとんど手に入れることができません。
ジュートも、繊維を採った後、麻の芯と同じような「きびがら(キビ類の芯ではないけれど)」が残ります。
バングラデシュやインドでは、きびがらは焚きつけとして役立ちますが、糸巻きにもしていたのでしょうか?
織りものの現場を何度も見たのに、そこまでしっかり見てこなかったのが悔やまれます。
ちなみに私が、ノルウェーで織りものを習ったF先生に織りものを教えていただいたとき、糸巻きの管は、ハトロン紙を俵型に切って、針に巻きつけて使用しました。
それは、どんな針の太さにも見事に対応できる、とても優れた方法でした。
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