ある日、近くの骨董市で、まことさんが黒い、瓦に焼いた猫を持っていました。人間のような、変な顔の猫です。
聞いてみたら、まあまあの値段です。
一旦は、「ありがとう。でも、いらない。私は猫を卒業したから」と、立ち去ろうとしました。
「ああ、よかった。仕入れたばかりで、もう少し持っていようかと思ったんだけど、なんだか今日荷物に入れて来ちゃったんだ」と、まことさん。
帰り際に、もう一度、猫と目を合わせました。今別れたら、二度と会うことはないでしょう。それより、お金が少なくなっても、我が家に来てもらった方が、よさそうです。
前に、まことさんが持っていた古い招き猫を、一旦見送ったあと、目の前で他の人に持っていかれたことがありました。とても古くて、値段も高い猫だったので、その人が買わなかったとしても、私が買った可能性はまったくないのですが、それでもよくその猫のことを思い出してしまいます。逃がした魚は大きいという、あれです。
「やっぱり、猫をもらって行く」。
まことさんは、言い値よりさらに値引きしてくれました。「一緒にいたのは、たったの二日ほどだよ」と言いながら。
この猫は蚊やりだったのでしょうか?背中に大きな穴が開いています。
それにしても、今別れたら二度と会うことがないという理由を、これまで何度持ち出したことでしょうか。私の無駄遣いの、言い訳です。そうやって、我が家には、また生活非必需品が一つ増えました。
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