2012年9月12日水曜日
刃物の鞘
タイの山岳民族、アカ人のつくった刃物(鉈)の鞘です。ラタンでできています。
簡単につくっているように見えますが、硬く、とくに縁はしっかりとつくってあります。
太いラタンを割いてから縁巻きをしているので、縁からすっぽ抜けることもありません。
タイ北部の籠屋さんの店先には、かつては決まってぶらさがっていたものですが、今はどうでしょう?
写真は、『PLANTS AND PEOPLE OF THE GOLDEN TRIANGLE』(Edward F. Anderson著、Silkworm Books、1993年)に載っていた、同じ形の鞘です。
鞘の下は、やはりアカ人たちのつくっている、チガヤ(Imperata cylindrica)製の屋根材です。南の方では屋根材としてニッパヤシが使われますが、北の方ではチガヤが使われます。
カンボジアのパルメラヤシから砂糖をつくるために樹液を集めるためのナイフの莢です。
ナイフを腰に、集める容器の竹筒も持って、節を残しただけの竹の梯子を伝って高いところにまで登るので、鞘もできるだけ軽くできています。
ちょっとくり抜いた二枚の板を合わせて、ラタンで縛ってあります。
パルメラヤシの花序を傷つけるナイフは特殊ですが、東南アジアの人々にとって、外出に鉈を携帯していくことは必須です。どこで蔓草が絡まって通せんぼされているかわからないし、どこに野生の果物や鉢の巣があるかわからないし、鉈を持たないでは、どこにも行けないものです。
もっとも、マレーシアの熱帯多雨林のような、どこを向いても同じ風景しか広がっていない森の中では、鉈は鞘に収める間もなく、いつも手にして、あっちこっちに人のためにも、自分のためにも、サインを残しながら歩かなくてはならないので、鞘は必要がないかもしれませんが。
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