2012年9月18日火曜日

薬ビン


骨董市にさわださんが店を出している日には、犬のミルキーにあいさつします。
ミルキーは三歳の若さで椎間板ヘルニアになり、神経が数日間圧迫されたために、下半身不随になりました。
以後、自力でおしっこもできないので、どこにでもさわださんと一緒に行きます。
 
ミルキーと遊んでいると、
「小さいビンどう?エンボスも入っているよ」
とさわださん。
「染め粉のビン?それとも食紅?」
「なんだろう?」

目が悪くなっている私に見えないのは当然として、もしかして若いさわださんも老眼が進んでいるのでしょうか?
帰ってよく見えるメガネをかけて見たら、薬ビンでした。


「この薬ビンもどう?肩が直線なんてめったにないでしょう」
「曇っているけど、洗ったらきれいになるかなぁ?」
「さあ、なると思うけどね」

さわださんのビンは、たいていきれいに洗われています。夜はビン洗いで大変と聞きましたが、洗いたくない日だってあることでしょう。

「軟膏入れも持ってく?これは、洗ったらきれいになるよ」
最近洗う暇がないのでしょうか。蓋を開けてみたら、まだ軟膏が入っていました。
「あれっ、入っていたか。このままだと300円、洗ったら500円」
「あはは、このままでいい」

 
以前、さわださんがデッドストックの軟膏のビンをたくさん持ってきたとき、
「十人に一人くらい、中身が入っている方がいいって人がいるんだよね」
と言って、ほとんどきれいにしたものの中に、軟膏入りのビンが、少し残してありました。私は勿論中身のない、ビンに気泡や色むらがあるものをいただいてきました。
もっとも、箱や効能書きが揃っていると、ビンだけ別にするわけにもいかず、箱に入れっぱなしで、なかなかビンとして楽しめません。


何十個も洗うなんてたいへんですが、一つならお安いご用です。
まず軟膏を全部きれいに拭き取って捨て、


使い古しの歯ブラシでごしごし洗ったら、 すっかりきれいになりました。


ビンの下の方にぐるりとエンボスがあり、ビンにも蓋にも、「順天堂医院薬室」と書いてありました。
ビンには右から、蓋には左から書いてあります。ビンは戦前の型を使って、蓋だけ戦後新しくしたのでしょうか?


曇っていた大きい方の薬ビンも、クレンザーで洗ったら曇りが取れました。
「五ノ井醫院」。
 

そして、小さ過ぎて読めなかったビンには、「周行病院」と書いてありました。


あぁ~あ。
さわださんの口車に(喜んで)乗って、また、不必要なものがごちゃごちゃと増えてしまいました。
後ろは安っぽいカエルの笛と、安っぽいキューピーの笛です。

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