「棚つくってくれる?」
息子からのリクエストに軽く、
「いいよ」
と応えたのは、一月のことでした。
送られてきた図面を見ると、息子が欲しいのは、180センチほどの高さ、150センチほどの幅で、そのなかに10列、16段もあるという、組み子のような棚です。
さて、材料はヒノキと決めるまでに数日かかりました。かんばやし製材所で買おうと決めるまでに、さらに数日かかりました。
ホームセンターではヒノキの削っていない板は売っていませんし、大きな材木屋では、決まりきった寸法の材木が束になっていて、自由に選べません。
その点、自分で製材し、住宅の施工もやっているかんばやし製材所の木は、家を建てるのに合わせて多めに切り出しているはずですから、半端で残っているものが、きっとあるはずです。
「細いのでよかった。残り物の中から乾燥したのをHくんに拾わせて、連絡します」
とかんばやしさん。Hくんとは、林業家を目指してこの数年かんばやし製材所で働いている、日本の林業再生の旗手です。
Hくんがさがしてくれるのを待つことにしました。
いったい材木を選ぶのに、どんなに時間がかかっているんだと、訝しがりはじめたころ、
「材木が揃いました」
と連絡がありました。
大雪の後でしたが、すぐ引き取りに行きました。
時間がかかっただけあって、素晴らしい。たくさんの木の中からさがし出してくれた、提示した寸法に見合ったヒノキは、すべて無節のものでした。
さて、運んでは来ましたが、材木置き場のビニールハウスも、作業場のビニールハウスも、大雪でぺっちゃんこのときでした。
やっとスペースを見つけて、雨がかからないようにしまいましたが、つぶれたビニールハウスの下はごった返していましたから大工道具も使えず、一ヶ月ほどはビニールハウスの修理や、片づけに追われました。
雨や雪が降り込んだため、機械は錆びているし、刃も欠けていたのを交換、やっと棚つくりに取りかかる環境が整ったのは、ごく最近です。
杉、椹(さわら)、檜(ひのき)、欅(けやき)。
木はどれも見た目や手触りが違います。そして、もっとも違いが顕著なのは削ったり切ったりするときの匂いです。
中でも、いい匂いはヒノキです。今回はヒノキでつくっているので、自動がんなで削ると、そこいらじゅうにいい匂いが満ち満ちます。
やっぱり大工仕事は面白い。
これまで、必要に迫られてやっているのだとばかり思っていましたが、もしかしたら私は大工仕事が大好きなのかもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿