2017年3月11日土曜日

仙武丹


骨董市で、玩古さんのおやじさんが、置き薬の引き出しを持っていました。
値段を訊いたら、おやじさんにしては高い!
「あぁ、それねぇ。取っ手だけの値段なんだ」
「ふぅん」


なるほど、見たことのない、凝ったつくりの取っ手がついています。

そういえば、以前あまやさんが手ごろな小引き出し箪笥を持っていたのですが、値段を訊いたら6000円でした。
「えぇ、どうしてそんなに高いの?」
「取っ手の値段だよ。 一つ1000円として6000円。こっちの小引き出しなら1500円」
と指さした、別の引き出しの取っ手は、なるほど、ずっとちゃちなものでした。


「仙武丹」とは、いったいどこの薬でしょう?


これこれ、これでしょうか。
これは、江戸東京博物館に収蔵されているもの(ラベル?)だそうです。
富山県上市町の「本舗 池田模範堂薬房」とあります。


「取っ手以外の貼ってあるラベルは、オリジナルかどうかわからないよ」
とおやじさんは言っていましたが、ブリキの板は、取っ手を取りつける前に貼ったもののようで、取っ手の下になっています。もとから貼ってあったものでしょう。
それにしても、ノーヂ、脳治とは、すごい名前です。
これにも、左上に「仙武」とあり、左下には、「M.I.」とあります。


ノーヂも、ネットで探すと、琺瑯の看板がありました。
あれっ?
置き薬の引き出しのブリキの板の左下の「M.I.」は、「池田模範堂」ととれますが、琺瑯の看板は戦後のものですが、「ムヒ本舗」とあります。
池田模範堂は、一時、ムヒ本舗と名乗ったこともあったのでしょうか?


こちらのムヒのラベルには、「池田模範堂」と書いてありました。
置き薬の引き出しのなかで、唯一の池田模範堂表記です。
池田模範堂は創業1909年ですが、「会社の沿革」などいろいろ見ても、ノーヂや仙武丹のことには一切触れられず、ただムヒについて書いてあるだけです。
かゆみ止めの代名詞として使われるほど大当たりした「ムヒ」ですから、他の薬は忘れてもいい、むしろ、ノーヂや仙武丹の存在は、ムヒ販売戦略の邪魔になるのかもしれません。

江戸東京博物館の資料の仙武丹には、
「君のポケットに仙武丹のある事を忘れ給ふな 戰は正に勝てり」
と、野球バットを持った少年のイラストに添えてあるので、仙武丹は、仁丹のような清涼剤だったものと思われます。
もっとも、清涼剤を置き薬に入れるのはいかがなものかとも思いますが、この取っ手はただの広告だったのかもしれません。


こちらは模倣品かどうか、ネットで見つけたものですが、「東亞仙武丹」の袋というのもありました。
これには、「清涼剤」と書いてあります。
左から書いていますから、戦後のものでしょうか。
東亞製薬は、1942年、やはり富山県上市町に、置き薬の会社として設立されています。


置き薬の箱に貼ってあった一番小さいラベルにも、センム(=仙武?)とあります。
子どものねつ、せき、むしに効くのでは、センムと仙武丹は、別物だったのでしょう。


ともあれ、桐の箱はとてもしっかりできています、


うしろには、開閉しやすいように空気抜きの穴が開けられています。


棚の、ガラス瓶を置いてある場所に置こうかと思いましたが、ちょっと高すぎて引き出しの中身がチェックしづらそうです。


というわけで、前にものを置くと開けにくいけれど、一番下に置くことにしました。


そして、追い出したガラスビンはもっと上に追いやりました。


さて、何を入れるか?
入れるものはすぐに見つかるでしょう。






4 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

春姐さん時代を感じる物は嬉しいですね、
私たちの時代は背中に背負っての行商でした。
四角い紙製の提げ袋で斜めに台所に吊って、、、
袋の匂いまで思い出します。
 「国光丹」と言う仁丹に似た赤い粒や
「赤玉」と言う腹薬も、、、、。
おまけでくれる紙風船の薬臭い匂いまで蘇ります。

さんのコメント...

昭ちゃん
富山では、ピーク時には8000人が薬売りに携わって、日本国中を歩いていたのですから、すごいですね。
倉敷では、置き薬入れは二段になった状差しのようなもの、たぶん畳めて、たくさん持って歩けたと思いますが、桐で軽いとはいえ、こんなかさばる箱引き出しは、そうそう幾つも持って歩けません。各地に、提携していた家具屋さんとか、箱屋さんがいたのでしょうね。富山から50箱持って歩くことを想像しただけで、押しつぶされそうになります(笑)。
祖母の家に置かれたかゆみ止めは、ムヒではなくてワームだったと、薬看板のサイトをみると、やっぱりワームもありました。岡山県の琺瑯の看板のワームという字は、ひっくり返してもワームに読めたと書いてありますが、そのこと、よっく覚えています(笑)。
紙風船は、丸いのもあったけれど、四角いのもあったような。懐かしいですね(^^♪

ろっかく さんのコメント...

わたしの子供の頃、富山の薬売りのおじさんに紙ふうせんをもらった記憶があります。引き出しタイプの薬箱は歴史を感じます。大切に使っているお家もありますよ。

さんのコメント...

ろっかくさん
引き出しタイプの置き薬の箱はいいですよね。もともとは、状差しタイプのしか知りませんでした。桐もいいですが、赤や黄色の広告を貼った紙の引き出しも好き、でも紙の引き出しの方が壊れやすいのでしょうね、なかなか壊れていないのは見かけません。
置き薬の箱は大きすぎず、物入れとしても役立つので、出逢ったら、ついつい欲しくなってしまいます(^^♪