糸をぐるぐる巻いて使うのでひしゃげたり、納屋にしまっている間にネズミにかじられたりして、状態のいいものはなかなか見ないのですが、四つともなかなかきれいなものでした。
福島県出身の骨董屋さんは、左写真の大きく開いた縁に細い紐を十文字に渡して、右写真の直径5センチほどの穴にを棒に突っ込んで、糸車に固定し、ぐるぐる回して糸を巻くと教えてくれました。
以前、これを取りつける糸車も商ったことがあって、麻糸をつくるときに使うものだそうです。
「でも、この籠を糸車の細い棒に差したら、穴の周りがすり減るはずなのに、全然傷んでないわね?」
「あれっ、そういえばそうだね。じゃぁ、どうやって留めてたんだろう?」
というわけで、骨董屋さんはうろ覚え、糸車に装着する方法はよくわかりませんでした。
籠で編んだ糸巻きは明治のころまで使われましたが、やがて、写真のような木でつくった糸巻きに移行したそうです。
民具の好きな骨董屋さんのようで、蚕に繭をつくらせる、竹で編んだ平たい四角い籠や丸い籠など、織物にかかわる、ほかの道具も並んでいました。
右のは真竹で、左のは鈴竹でつくってありました。
「大きい方が、普通の大きさだけど、息子が見つけてきた小さいのは、珍しいもんだ」
と、うれしそうな骨董屋さん。もの静かな息子さんも一緒に来ていて、親御さんと同じ道を歩くらしい、いまどき珍しい、幸せな親子のようでした。
績んでいない、麻もありましたが、見るからに堅そうなものでした。
先日見た映画、『からむしと麻』では、麻は柔らかくするためのたくさんの工程を踏まなくてはなりません。そして、さまざまな加工をしたとしても、張りは失われません。
こんな麻は裃などにはいいけれど、着物にすると身体に沿わず、夏は涼しいものの、冬はさぞかし寒かったことでしょう。
しかし庶民は、近代まで、麻、からむしなどの繊維しか着ることができませんでした。
さて、ネット時代だからすぐわかると思ったのに、この糸巻きがどう糸車に装着されたか、残念ながら見つけることができませんでした。
鈴竹のものを買って来たけれど、真竹のものも買ってくればよかったと、いつものことですが、ちょっとだけ後悔しました。
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