2019年12月10日火曜日

座り猫

歌川広重、今戸夕照

今戸焼きは、江戸は隅田川のほとりの今戸のあたりで、1500年代の後半に始まりました。
江戸に幕府が置かれるちょっと前のことです。

歌川広重、名所江戸百景

日用雑器、火鉢(手あぶり)、植木鉢、瓦、土人形などが主な生産品でした。
今戸土人形は、江戸市民および東京市民に広く愛されましたが、関東大震災と東京大空襲によって、割れたり焼けたりして、ほとんど失われてしまいました。

歌川広重、浄瑠璃町繁花の図の一部

今戸土人形の研究家で、収集家でもあったいまどきさん(吉田義和さん)は、やがて古型を手本に、再現・制作されるようになりました。そして職も辞されて、土人形の制作に専念されて、今日に至っています。

今節、焼きものの土はいろいろな土地の土を配合したものが多い中、いまどきさんは東京下町の土にこだわり、江戸の顔料にこだわり、土づくりから絵つけまで、お一人でなさっています。
そのいまどきさん、2019年は三度も入院なさいました。
その間に展示会や節季市への出品などこなされていて、さぞかし気の急く、もどかしい一年だったと思われます。というわけで、昨年お願いした座り猫(新しく復刻されたもの)は、しばらくは手に入らなくても仕方ないと思っていましたが、できたとの連絡をいただきました。
私は欲を出して、もし数に余裕があるなら、来年の干支のネズミも欲しいと伝えたのですが、それはまだわからない、とりあえずできたものから送りたいとおっしゃるので、座り猫だけ届くものと待っていました。


ところが、届いた箱の中に、三つの塊がありました。


呉越同舟ならぬ、猫鼠同舟でした。


「座り猫」の身体には可憐な菊の花が描かれ、蝶も飛んでいます。
昔の子どもたちは、こんなかわいい猫を飾ったり一緒に遊んだりしていたのか!
いまどきさんがいなければ見られなかった世界が見えることが、ただただ嬉しく思われます。


「白ねずみ」は背の方に小さな穴が開いていた古いねずみを見て、いまどきさんがこんな尻尾がついていたのではないかと想像してつくられたものです。


尻尾は針金を芯にして、染めた障子紙を巻いてつくられています。


そして、泥めんこのねずみです。
泥めんこは、江戸時代には盛んにつくられ、遊ばれましたが、明治時代に入ると、めんこの素材が鉛に、やがて木、紙へと変遷して、それらが普及するにつれて、泥めんこは姿を消しています。
今戸には、猫の泥めんこもあったのでしょうか?


毎年、12月17日、18日、19日に開かれる浅草羽子板市では、吉徳人形店の出店に、羽子板とともに、いまどきさんの人形たちが並びます。
一日目に売り切れたりする人気ですが、お近くの方は足を運んで、江戸の姿を今に伝えるいまどきさんの人形に触れてみるのは、とても楽しいかと思います。








11 件のコメント:

のら さんのコメント...

素敵な猫ですね~好きだわ~❤️
ネズミのお尻の方についている絵は何の意味でしょうか?

hiyoco さんのコメント...

欲張ってよかったですね!私もネズミのお尻、気になります。

昭ちゃん さんのコメント...

今戸焼の狸は
漱石の「坊ちゃん」教師の比喩に登場しますね。

昭ちゃん さんのコメント...

さすが筑波山が書かれていますね
武蔵野平野が広々と。

さんのコメント...

のらさん
かっわいでしょう?いまどきさんのつくるものはみんなかわいいけれど、猫は特別かわいいいです(^^♪
ねずみのお尻に描かれているのは宝珠です。
たぶん、お稲荷さんに行って、狐さんの額や台座に描かれているのを見たことがあるんじゃないですか?宝珠は縁起のいいものとされています。

さんのコメント...

hiyocoさん
だいたい私は欲張っていますがね(笑)。
いまどきさんにはどんどん古作を起こして楽しませてもらいたいと思う一方、しっかり休んで健康を取り戻してほしいとも思います。

さんのコメント...

昭ちゃん
今戸焼きは、東京庶民にとっては、心のふるさとだったのでしょうね(^^♪
あっ、筑波山を見逃していました。2枚目の浮世絵ですね。いやぁ、素敵です。
だいたい、江戸の人々は筑波山も富士山も江戸のものだと思っていたというのには驚きます(笑)。友人の麻布中学・高校出身者、校歌には筑波山が出てきたそうです。

というわけで、ネット時代ですから、麻布中学・高校の校歌を検索してみました。

♪千代田の南 麻布の丘に 
筑波のみどり 富士の白雪 
朝な夕なに 窓より仰ぎ 
学びにいそしむ わかきますらを♪

昭ちゃん、富士山も出てきましたよ(笑)。江戸時代の気持ちを引き継いでいたのですね。

昭ちゃん さんのコメント...


 姐さん私立麻布中学は昭一さんの出です。
江戸時代の展望台と言えば「待乳山と愛宕山」ですし
麻布でもチョット高いビルにあがれば富士山が見えました。
(風の強い冬は当然です)

さんのコメント...

昭ちゃん
遠くに富士山と筑波山が見える、それだけで東京はいいところでしたね。
でも今では、高いアパートにして、「あっ、見えた」と言っていたら、それをふさぐようにもっと高いビルが建つ、他人のことなんて知っちゃいませんからね。
こちら、筑波山はほぼ毎日見ています(^^♪

af さんのコメント...

麻布台の再開発かすすんでいるようですよね。友人が地権者で先日雑談の中で知りました。日本一のタワービルができるそうです。地権者である友人は自信に満ち溢れているように見えました。
プロジェクト概要には夢物語かのような綺麗なCGに溢れていました。そのシンボルはタワービル。今もなお、タワービルに夢を抱くのは何故なんでしょう。人々の暮らしはどうなるのか。
駿介先生の講演パワポを友人に見せてあげたかったです…

さんのコメント...

akemifujimaさん
またタワーを建てるのですか。
あと、何千年か経って、「人間は大地を忘れて、天に近づけると誤信して滅びた」なんてことになりませんかね。
脚は地につけているのが一番安心です。
新しい技術は試したい、見せつけたいものだと思いますが、いわゆるライフラインというのがなくなったらどうするんでしょうか?今のところライフラインはすべて人任せです。
電気は携帯型小型核エネルギーと電池になるのかもしれません。そして、水は汚水をたちどころに飲み水に変える技術が開発されて、自給できるようになると息子は申していますが、毎日自分のおしっこなど飲んでいたくないです。肝心の食料の輸送は無人トラック専用の高速道路になったとして、生産する人がいなくなっては運べもしません。どうするのかな?
いま、マンションはがら空きなのに、建設を続けないと日本の経済が回っていかないのだとか。東京オリンピックの後、どんな風が吹くのでしょうか?