2024年1月3日水曜日

ラッタナキリの箕

毎月3日は箕の日という箕研究会に、関係ないのに勝手に協賛、箕のお話です。


私の持っている箕の中で、美しさで一、二を争う箕は、カンボジアの北東部のラッタナキリ県の箕です。横が49センチ、縦が57センチの大きさです。


ラッタナキリは少数民族である、タムプアン、クルン、ジュライ、カチョーク、プラウ、カヴェット、プノン、ルンなどが住んでいる「森」の県で、カンボジアの最大民族グループであるクメール人の人口は、全体の20%以下、しかも商人などとして町だけに住んでいます。この箕は青空竹細工屋台で手に入れたもので、なんという民族がつくったものかはわかりませんでした。
ラッタナキリには、首都プノンペンからはメコン川をスピードボートで行くか、あるいは飛行機で行く以外は、自動車道がないので徒歩でしかアクセスできませんでしたが、今はどうなっているのでしょう?
2005年あたりから、カンボジアは様変わりしたと聞いているし、ネットで見るとラッタナキリは観光地になっている感じもあります。


編み方は、クメールの箕と同じように「変わり網代編み」で、箕の内側の経材(たてざい)は、5本飛ばししているのが見えます。
日本の箕は穀物が引っかかるようにわざと緯材(よこざい)を突起させていますが、タイやカンボジアの「打ち上げ箕」は逆に、穀物(お米)が滑りやすいよう経材が突起してつくられています。
ラッタナキリの竹は、節と節の間が長いので、節の部分を全く使わずに箕を編んであります。


外側はこんな綾になっています。
皮つきの材が2本見えるのが、縦の真ん中です。


ちなみにプノンペン近郊の村の箕の編み目はこんな感じ、左が内側で右が外側です。
細部は違いますが、全体としては同じ考え方でつくられています。


縁に回した太い竹を重ねた場所は、ラタンで丁寧に綴じてあるので、これではここからほつれることもありません。


ラッタナキリの青空竹細工屋台では、竹でちょっとしたやぐらを組み、背負子は行くたびに数個ですがぶらさげているのを見かけましたが、箕を見たのは一度きりでした。
1990年代後半から2000年ごろは、ラッタナキリを訪れる外国人観光客は皆無、プノンペンの人やカンボジア在住の外国人も、ビジネス以外では訪れることもなく、装飾の施された手の込んだ背負子はときおり売れることがあっても、農具である箕など売れないと、吊るすことがなかったのでしょう。


写真はフナコレタロさんのブログ、「うちのガラクタ」からお借りしました。
左下は中部ヴェトナムのダラット近郊の少数民族の村の箕、下段の真ん中はラオスのウドムサイ県の箕、どちらもしずく形になっていて、同じ民族グループの箕と思われます。








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