2024年11月27日水曜日

『乙嫁語り』 第15巻



乙嫁語り』15巻が、2年1ヵ月ぶりに発売されました。
中央アジアの町や村にロシア軍が攻めてきて、情勢が緊迫して行く中で、トルキスタンを拠点にしていたイギリス人のヘンリー・スミスは砂漠の民タラスと正式に結婚することも目的の一つに帰国を決意、アンカラから、比較的安全な海岸伝いに、イギリスへの船が出るボンベイを目指します。


あまりにも久しぶりに読んだので、これまでの展開をすっかり忘れてしまっていたほどでした。

あとがきから

15巻がなかなか出版されなかったのは、時代考証などに時間がかかったからだとわかりました。舞台がロンドンに移っています。

15巻ではないが

外国の昔が舞台なので、服装や家具調度、動物の姿、町の景色などだけでなく、調べなくてはならないことは広範囲にわたっています。スミスは中央アジアのその時を写真と文でとどめようと旅する人ですが、19世紀半ばは、やっと携帯用カメラが開発された時代で、湿板写真は写したガラス板が乾いてないうちに現像しなくてはならず、自分で現像するためにはいろいろな薬品を持ち歩かなくてはならないので、現像のために必要な薬品や、調合の仕方まで描かれています。

これまで、大きな町にさえ行ったことがなかったタラスは、愛馬のチュバルとスミスとともに大型船に乗って海を渡り、イギリスの地を踏みます。スミスの親に結婚を反対されたりといろいろなことがありますが、ロンドン郊外で家を借りて暮らしはじめ、結局どこで暮らそうと暮らしというものはさして違わないことを実感します。
そして、羊も飼うことになりました。





森さんは動物を描くのが大好き、動物が少ないと物足りないとか、羊のページだけでも延々と続きます。

あとがきから

しかも15巻の羊は、今、私たちが織物教室で糸紡ぎに使っているサフォークやチェビオット、ボーダーレスター種など、イギリスの固有種で、


中央アジアの羊とは全く違います。


どうして民族衣装がこんなに再現性高く描けるのでしょう? 
細く織った布を藍染めして、つなぎ合わせ、それにクロスステッチで刺繍して仕上げた民族衣装が見事に描かれています。
カリカリとペンを走らせている絵があとがきによく出てきますが、相変わらずコンピュータは使わず手描きのようです。


もちろん、モノクロの小さな絵でも、丁寧に描かれていて、2年ちょっとで出版できたという方が不思議になるくらいの密度です。





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