2010年6月25日金曜日

織り機の象



かつてタイ北部には、チェンマイを中心とした、ランナー王国がありました。
手仕事に優れている人々が住んでいて、衣食住にわたって、美しい世界をつくり出していました。なかでも木工や漆細工はとくに優れていて、たくさんの技を今に伝えています。

これは、そのランナーの織り機の一部、滑車です。たぶん、滑車を左右に二つ使い、経糸(たていと)を上げ下げする、綜絖を2枚、紐で結んでかけておいたのではないかと思います。
「と思います」と、自信を持って言い切れないのは、この滑車自体を、固定するなり、ぶらさげるなりする装置が見られないからです。滑車を、どこかにぶら下げないで、どうやって使えます?
象のお腹の下に紐を通すと使えそうですが、そうやって使った形跡は見られません。

もちろん、これは実際に使われていたもので、お土産用につくられたものではありません。




カンボジアにも、同じような、織り機の滑車があります。
しかし、カンボジアの滑車は、腰掛けて、足で綜絖を動かす高機(たかばた、足踏み織機)用のものなのでしょう、滑車自体をぶら下げられるようになっています。

自分の身体の重みで経糸を張っておく地機(じばた)の場合、綜絖は一つだけ、単綜絖です。そして、足を使って引っ張りあげるのですが、それにしても、滑車を固定しないでは、使えないではないかと思ってしまいます。




これは、上の二つの象より、ちょっと太っちょの象模様の滑車です。
どの象も顔がスパッと切れています。最初の一つを見たときには、誤って顔が欠けたのだと思っていましたが、どれも顔がありませんから、流行のスタイルだったのでしょうか。




コートジボワールのバウレの人々がつくる、織り機の滑車にも、なぜか滑車を固定するための装置がありません。象のあごの下に紐を通した形跡も見られないし...。
いつか、このなぞが解けるときがくるでしょうか?






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