2012年4月7日土曜日

印字入れ


骨董市で、がんこやさんの店先に薄い箱が積み上げられていました。
印字入れのトレイに、誂えて、ガラスの蓋をつけたものだそうで、まとめ買いしている人もいました。

桟の間隔が広いのや狭いの、三種類くらいあり、太い桟には紙が貼ってあって、手書きで仮名や漢字が書いてあります。

「細かい板(桟)が簡単に抜けるから、好きなところを抜いて、コレクション入れにしたらいいよ」
とがんこやさん。
なるほど、がんこやさんが以前から使っている、ビー玉、おはじき、ブローチなど、細々したものを並べた箱は、桟を抜いた印字入れだったのでした。
  

一つだけいただいてきました。
でも、桟を抜いてしまうなんて、もったいない。このままで美しいし、活字がこんなにたくさんあった中から、一つ一つ拾わなくてはならない時代があったということの証拠品として、残しておくことにしました。

印字入れをそのまま飾りにするとしたら、せっかく取りつけた蓋はなくてもかまいません。蓋もよくできていますから、外して、自分で飾りたいものに合わせつくった箱に、つけ替えれば、二倍楽しめます。

よく目に入るところに印字入れを転がしておいて、何を飾る箱をつくるか考えることにしました。


最初、思いついたのは、仁丹のビンなど、自力で立たない小さいガラスビン入れの箱です。
でも、箱の底板もガラスにして、透けて見えるようなところに飾らないと、ガラスの美しさは、なかなか引き立ちません。
しかも、完成したとして、どこに置いたらいいか、全然思いつきません。

「箱の裏に小さな明かりを入れる手もあるかなぁ」
できるとしても、電気音痴の私には無理です。
「小さな仕切りをつくって、一つ一つにビー玉を入れるのはどうかしら?」
それも、後ろから光を通した方が素敵です。


結局、いつまでたっても考えがまとまらずに、日は過ぎていくばかり、そこいらに転がしておくのが邪魔になりはじめたので、
「まあとりあえず飾っておいて、ゆっくり考えるか」
と、そのまま飾ったのは、玄関のイギリスの印字入れの上です。

少ないローマ字と比べると、漢字のたくさんある日本語は信じられほどの印字の多さで、新聞づくりも本づくりも、ちょっと昔まではたいへんだったことでしょう。

いずれにしても、洋の東西を問わず、印字をつくる人、使う人、印字入れの箱をつくる人など、たくさんの人のかかわってきた仕事の一分野は、永久に失われてしまいました。



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