2012年8月23日木曜日

毛糸伸ばし器


七月の末から、半月ほど母が来ることが決まったとき、何もしないと退屈するだろうから、あちこち穴が開いていて、着なくなったセーターを解いてもらおうと計画していました。

解いてちりちりの毛糸は、カセ繰り機に巻き取ってカセにして、お湯につけて伸ばすのですが、そういえば母は薬缶の先に毛糸を伸ばす器具を取りつけて、しゅんしゅんとお湯を沸かしながら糸を伸ばしていました。


そんなことを思い出していたころ、骨董市に出かけたら、がんこさんが「最新型軽便湯伸器」を持っていました。


デッドストックだったのか、新品のような箱を開けてみたら、母が持っていたのとそっくりの道具が出てきました。まぎれもなく、あの毛糸伸ばし器です。

なんて、なんて、絶妙なタイミングなのでしょう!
値段は500円です。


金具をぱちんと開けて、糸をはさみます。


ただ、昔の薬缶は、どれも似た口をしていましたが、その薬缶に合わせてつくった木の筒が、今の薬缶にきっちりとはめられるかどうか、半信半疑でした。
うろ覚えですが、母の持っていた毛糸伸ばし器には、木の筒ではなくクリップのようなものがついていて、それで薬缶の口を挟んだようでした。


帰って試してみたら、あらっ、ぴったりでした。

準備万端整い過ぎたくらいでしたが、 結果的には母と一緒に妹のもんぺを八本も縫うことになり、セーターを解いてもらえませんでした。
途中、ちょっと水を向けてみたこともありましたが、
「ああ、解いてもいいわよ」
と口では言っていましたが、気乗りゼロでした。現金な母。


さて、がんこさんのお店で、「最新型軽便湯伸器」のお隣に置いてあった、「みつば組器」は、使わないからと固辞したのに、おまけにいただいてしまいました。


あの、アメリカ開拓時代などに使っていた、古布を割いて三つ編みにしたものをぐるぐると綴じつけて敷物にするとき、布がくるっと丸まって、布の切り端が表に出ないようにする道具のようです。

その昔、アパレル会社に勤めていた友人から、その年の見本に仕立てた服の、ウールの切れ端をいっぱい貰って、敷物をつくったこともありますが、切り端は手で丸めて織り込めば、きれいに見えなくなります。
こんなものを使うのは、かえって手間のような気がします。


「敷物をつくらないし、いらない」
「いいから、いいから。おまけだから持ってって」
「使わないんだけどなぁ」
「まあ、持ってってよ」
というわけで、同じ場所から出てきたものか、これもとうとう我が家に一緒に来てしまいました。

2 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

懐かしいののがでてきますね、
母(1901~1980)が魔法のように毛糸を伸ばしていました。
東京の冬は木枯らしが吹き戸の隙間に貼った渋紙がブルブル音をたて鳴っていました。
 これにつながる思い出はやはり戦前の冬ですね。
ありがとう。

さんのコメント...

昭ちゃん
この毛糸伸ばし器の下に、電熱器ではなくて火鉢が描かれているのが、いかにも冬の感じですね。建てつけの悪い建具に火鉢だけ、みんなそんな生活でした。
でも、二条城なんかに冬行ってみると深々と冷えて、とってもこんなところに住めないと思ってしまいました(笑)。庶民だけじゃなくて、みんな寒かったのですね。
杉浦日向子によると江戸の人は足袋もろくにはいていなかったらしいですから、人間はもっと寒さに耐えられる生物かもしれません。