2012年9月2日日曜日
郷土玩具たち
慈雨。
農家にとっては、待ちに待った恵みの雨です。
でも骨董市の骨董屋さんにとっては恨みの雨。なにも日曜日だけ降らなくてもいいじゃないかと、空を見上げながら、目まぐるしく変わるお天気には逆らえず、積んできたほとんどの荷物は、車の中に入れたままです。
駐車場にしか見えない骨董市の、がんこさんの車の前を通りかかると、
「くじらとかあるけど、見る?まだいるでしょう?一回りしているうちにさがしておくよ」
と声をかけられました。
一回りして戻ってきたら、車の中から郷土玩具が出てきていました。
「かわいいね。もう持っているけど」
「そうかぁ」
「でもいただく」
「無理しないでいいよ」
「無理じゃない」
といただいてきました。
これらは、みんな同じコレクターの所から出てきたもののようでした。
家には高知の鯨車がすでに二頭います。
一頭はハチャメチャな顔(中)をしていますが、一頭はなかなか勇壮な鯨(右)だと思っていました。でも、今回加わった鯨(左)の器量よしぶりに比べると、見劣りしています。
それにしても、お手本もあるというのに、どうしてこんなハチャメチャな顔に描けるのか、ちょっと不思議です。 目の位置だけではなく、口も変です。
鯨車は、もともとは室戸岬でつくられた木彫りで、黒一色に塗ったところに目と口を描いた、とても素敵なものだったようですが、じきに土佐紙を使った張り子のものになりました。
土佐の鯨舟は、どちらが古いものでしょう?
形としては以前から持っている舟(上)の方が古そうです。長い方には裏に山本香泉と銘があります。
この雉車(雉馬)は、あまり見たことのないものです。1960年代以降、九州のどこかで、お土産物として創作されたものでしょうか?
二輪で鞍もついていますから、北山田、小鹿田、吉井、北野などの雉車の系列だと思われます。
鹿児島神宮の鯛車には、値札が残っていました。55円。
断定はできませんが、1960年代の値段でしょうか?
その当時、私が鹿児島神宮で手に入れた鯛車(上)と比べると、保存状態のよさは比べものになりません。きっとしまい込んでいたのでしょう。
コレクションをどう扱うのかは、人によってずいぶん違います。
箱に入れたまま、しまい込んでおくことは、値上がりを待つとか、後世に伝えようとするならともかく、私には持っていないのと同じことに思えてしまいます。
反対に、とても大胆な人にも会いました。
学生時代に、熊本のお寺に連れて行ってもらったとき、びっくりしたことに、コレクターのお坊さまが、額縁のように仕立てた、いくつもの大きな薄い箱に、膨大な量の古い郷土玩具のコレクションを糊づけして、本堂の高い梁の上の壁に飾ってあったのです。もう手に取って愛でることもできません。
すでに年をとっていたお坊さまが集めていた当時は、郷土玩具の収集は難しくて、縁起ものなどは、一年に一度しか手に入りませんでした。その地を訪ねて手に入れるか、地域のものをたくさん買って、別の地方のコレクターと交換するか、あるいは郷土玩具交換会に入って交換するというのが、集める方法だったと思います。ものを送るという行為だけでもたいへんな時代でした。
そうやって集めたものを、むざむざと糊づけしてしまうなんて!
「貼っちゃったんですか」
と驚くと、お坊さまは、
「自分のものを貼ろうがどうしようか、かまわないだろう」
とおっしゃいました。
「はぁ」
これほど大胆ではありませんが、私は日常的に目にして楽しみたいので、身近に飾っています。ガラス戸のある棚に収めると、光ってよく見えないので、ただの棚に並べます。だから、埃も被れば色も褪せます。
大切には扱いますが、紙のおもちゃなど劣化してしまうので、壊れたら仕方なくさよならします。凧はムカデ凧、猩々凧、蝉凧などいっぱい持っていたのに、そうやってみんななくなってしまいました。
それにしても、トカゲのような鯛車はちょっと異色です。
がんこさんが、おまけとしてソ連製のティーコジー人形をくれました。
高さが36センチあり、顔と手は堅いビニールでできていて、腕は動きます。
スカートの下には、綿入れのポット帽子があって、それをティーポットにかぶせます。
手彩色された顔は、なかなかのロシア美少女でした。
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2 件のコメント:
こんばんは 高橋です
先日 高知の歴史民俗資料館で開かれていた四国では有名な山崎茂さんの船のおもちゃの展覧会に行って参りました 展示にはもちろん 鯨船や鯨車も多数展示されていました 学芸員の中村さんがいろいろ説明してくださりました 鯨船の側に画かれている模様は 殺されていく 鯨への鎮魂の意味もあるのではとのことです そう言われれば 抹香臭い絵柄らにもみえます
また鯨はセミ鯨で 絵図に画かれている鯨に人形はよく特徴がにています 受け売りですが すこしでも
お役にたてればと 思っております
高橋さん
ありがとうございました。
船のおもちゃだけ集めるってすごいことです。私ならすぐ目移りして、あれもこれもとなってしまいます(笑)。近かったら見に行きたかったです。
一つのものがかたまってあると、集団の力というか、ばらばらのときよりもっと光り輝いて見えますものね。
鯨船の側面に描かれた菊花は、鎮魂の意味もあるかもしれませんが、集団で漁をするときの等級やその船の役割を表しているとも言われています。
いずれにしても、おもちゃは、親がつくり与えたにしろ、神社仏閣の授けものにしろ、祈りが込められているのが、なんとも素敵なところです。
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