「足りるだろうか、足りないだろうか?」下屋(差し掛け屋根)の下の、小さな外壁に、本実(ほんざね)加工の板を張りながら、びくびくしていました。
通常の壁材には、たいてい、「目透かし」加工がしてあります。
板は無垢ですから湿度によって伸縮しますが、隙間が目立たないよう、表から見ると最初から隙間がつくってあるのです。
目透かしの板は、縦に張っても横に張っても線が強調されます。その線が視覚的に邪魔な気がして、あまり好きではありません。
母屋建設のときは、板張りの壁面も多かったので、普通の材木屋さんには置いていない本実(ほんざね)加工の壁材を、ネットでさがして、徳島県の材木屋さんから取り寄せました。
しかし、今回は面積は少ないし、何といっても納屋だし、ほとんどの壁には大工道具や農具を収納する棚や戸棚をつくるので隠れるし、安ければどんな材でもいいのです。
さて、本実加工の壁材がほとんど流通していないことを、すっかり忘れ果てていて、試しに馴染みの材木屋さんに、「本実加工で」と言って、二束持ってきてもらっていた板は、床材でした。
「きれいな板だね」
それもそのはず、値段も確かめずに持ってきてもらったのですが、請求書を見てびっくり、一束がなんと11,000円もしていました。
一束は一坪張れる量です。この板の場合、幅が約11センチで二間(360センチ)の長さの板が、一束に八枚入っていました。
「ひやぁぁ、こんな高い板、もう買えないよ」
床材に目透かしとはいきませんので、伸縮によって隙間ができないよう、壁材より入念な仕上げをしてあるのが値段に反映しているのでしょう。
といって、すでに本実加工した板を張りはじめたところはところは、途中やめするわけにはいかないし、買ったものを無駄にするわけにもいきません。
きりがよく張れるかどうか、おっかなびっくりで張りましたが、最後に来て、約35センチ長さの板2枚分足りないことがわかりました。
さて、どうしたものか。
約70センチ必要な板のために、360センチの板を買うのはもったいないし、1枚だけ売ってくれるかどうかもわかりません。
同じ長さの板ばかり取っていたので、木取りの関係で、比較的長い切り落としがありました。
それを二枚つなげてみたら、なんと、ほぼ同じ長さでした。足りなくもないし、切らなくても使えるくらいです。
やれやれ。
これでなんとかなると、安堵の胸をなでおろしました。
縦に二枚継ぐと、上下の合わせ目は突合せで、さねがありません。でも、両脇に実があれば、固定します。
長いの、継いだの、長いの、継いだのと張れば、最後のは、片方を下地に釘で止められます。
コンクリートの柱の上あたり、光が入っているところが、最後の最後の板を入れる前です。
なんとかできました。
よそさまの家だとこうはいきませんが、自分の家ですから、自分が納得すればそれでいいのです。
さて、まだまだ、板壁がたくさんあります。
それには、野地板として使った相じゃくり加工の板をを張ることに決めました。
釘を隠すというわけにはいきませんが、棚の陰に隠れて見えない部分も多いし、釘をきれいに打てば、そうおかしいこともないでしょう。
銅釘を打とうと思っていましたが、そうか真鍮釘でもいいのです。真鍮釘は銅釘より安いと思いますが、なにより打ちやすいはずです。銅釘は気持ちを整えて、真で打たないとすぐ曲がってしまうので、気の張るものですから。
ちなみに、相じゃくり加工の杉板は、一束2,500円。本実の床板の四分の一以下の値段です。
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