2017年4月10日月曜日

「植物の繊維から糸を作る」、二日目


二日目は、課外授業からはじまりました。
からむしは置いておいて、暮らしの実験室のFくんが先生で、綿(わた)の紡ぎ方を教えてくれます。
まず綿打ち、種を取った綿を、Fくん自作の弓をはじいて、ばんばんと弦を当てていると、あら不思議、綿がふわふわしてきます。
綿打ちという言葉は知っています。昔は、布団綿が古くて硬くなると、「打ち直し」に出したものでした。でも実際どうするのか、考えたこともありませんでした。


ふわふわになった綿は、カーダーで繊維の方向性を整えてから、いろいろな錘(つむ)で、撚りをかけ、巻き取っては糸にしていきます。
最初はインドの錘(つむ)。地面に独楽のように立てて使います。


そして、タイの山岳民族の錘。
これは私が持って行ったものですが、フックがなくなっているのか、ちょっと手間がかかります。


Fくんの友人手づくりの錘は、長くて、太い糸を紡ぐ(つむぐ)のに最適です。
Fくんは、羊毛やアルパカをこれで糸にして、 セーターやベストを編んでいます。錘だけでなく、西洋式の糸車も使ったそうですが。


いろいろな錘。


綿の種取り機は、日本のものも東南アジアのものもよく似ています。
これは、暮らしの実験室のスタッフのSさんのところにあったものだそうです。この綿の種取り機は、よく使われているのか、綿が通る部分は、つるつると輝いていました。

さて、いよいよ順番に、前日つないだからむしの繊維に撚りをかけます。
 

奥は、苧がら(おがら=大麻の茎の繊維を取り除いたもの)で、撚りをかけるときの糸巻きとして使います。
苧がらはスピンドルに突き刺したとき、留まりやすく、よくなじむので、昭和村では伝統的に使われてきたものですが、地域によって、手に入りやすい、いろいろな素材が使われています。

手前は篠竹でつくった「ラオ(=管。キセルからきた言葉か)」は、つないだからむしの繊維に撚りをかけるときに使う、独特な道具です。
 

まず、繊維の先に撚りをかけて切れにくくしたのち、ラオに通してから、苧がらの糸巻きを糸車にセットします。
 

糸を撚るときは、足指に挟んだ「ラオ」をスピンの先端より外に動かし、撚りがかかってから足先を糸巻きの方に戻して、糸巻きに糸を巻き取ります。


右手で糸車を回しながら、足でラオの位置を動かして、そして左手は、繊維に撚りがかかったかどうか確かめ、糸撚りと巻き取りを繰り返し、目では、繊維がスムーズに繰り出されているかどうか、つねにチェックしなくてはなりません。
身体じゅう使っての糸づくりですが、Tさんは目にもとまらぬ速さで撚りをかけます。

もちろん、初めて挑んだ生徒たちは、手も足も目も、どこもスムーズには動かないので、四苦八苦、Tさんにおんぶにだっこ状態でしたが、それでも全員、つないだ糸は全部、糸にすることができました。


これは、「黒一点」の参加者が糸撚りに挑戦しているところです。
ちょっと右肩に力が入っていますが、丁寧な仕事で、美しい糸ができました。

この糸車は八郷に住むKさんのをお借りしたものですが、Kさんは綿を紡がれるので、普通の糸車を使っていらっしゃいます。
でも、Tさんが日常使われているからむし用の糸車は、足も使うのでもっと長く、糸車から伸びた板の上に座ってやるそうです。

 
からむしの繊維の一部は、前日桜の枝のチップを煮出した液で染めて置きました。
素敵に染まって、繊維で見たときより、糸にした方が色が濃くなったように感じられました。


手前が染めたもの、奥が生成りです。


Tさんが見本として持っていらっしゃった草木染の糸。
上から藍、マリーゴールドの花で染めて鉄媒染したもの、紅花(あれっ、アカネだったかな?)、そして、マリーゴールドの花のアルミニウム媒染(ミョウバンかな?)でした。


暮らしの実験室のスタッフさんたちが当番でつくってくださる食事は、ヘルシー、豪華、そして美味でした。


持ち帰るお土産もあり、大満足の楽しい二日間でした。








4 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

よりを掛ける作業は足が攣りそうですね(笑)。錘を見ると「眠れる森の美女」の絵本を思い出して怖い感覚が蘇ります。草木染の見本の色が素敵!からむしの糸はゴワゴワ硬いのですか?

さんのコメント...

hiyocoさん
からむしは麻より柔らかいです。と言っても、洗っても洗ってもくたっとしないので、昔は裃にしたそうです。私は母の小千谷縮(越後上布、からむしでできている)の着物を受け継いでいますが、しなやかです。
からむしは、じつはイラクサ科イラクサ目です。その昔、眠れる森の美女を読んだとき、イラクサという名前から子供心にノイバラを想像しました。「あんなもので布がつくれる?」と半信半疑でしたが、からむしだったのですね。
王女が手を痛めるのも、ノイバラのとげで痛めたのかと思ったら、糸車のスピンドル(キリみたいな感じかな)で痛めたみたい(笑)。イラクサだと全然布にするイメージがわかなかったけれど、からむしだったら、もっとイメージがわかなかったかもしれませんね。「どんなむしだろう?」と思ったりして(笑)。
育て方によっても、柔らかさが違う糸がつくれるそうです。

hiyoco さんのコメント...

春さん、イラクサで編み物するのは「白鳥の王子」じゃないですか~(笑)?でも、私もトゲトゲの太ーい蔓で服を編んで、白鳥になったお兄さんたちに投げて着せたんだと今まで思っていました。イラクサはトゲトゲだけど、茎は細いのですね。子供にはイラクサでもカラムシでも全くイメージできませんね。
カラムシはしなやかだけど張りがある、絹の植物版って感じでしょうか?

さんのコメント...

hiyocoさん
あっはっは、ごっちゃになってしまいましたね。
まあ、イラクサ(=からむし)でもお姫様なら指を痛めるかもしれませんが、普通の人なら問題なかったですね。
それで、眠り姫はスピンドルで指を痛めましたっけ(笑)。すっかり忘れています。

それにしても日本で綿が栽培されるようになったのは江戸以降ですから、それまでみんなからむしなど草の繊維の着物を着ていたのですから、縄文の遺跡からも出ているし、何千年も使っていたら、使い方も極めていたと思われます。
ヨーロッパには羊の毛がありましたが、亜麻や苧麻(=からむし)の歴史の方がやっぱり長いんじゃないかしら。