2018年1月16日火曜日

写真で知る幕末、明治


先日「絵葉書で楽しむ」を書いたとき、昭ちゃんが 幕末の大工さんの写真を送ってくれました。その大工さんの載っている本は、『写された幕末-石黒敬七コレクション』(石黒敬七著、明石書店、1990年)で、1957年に出版された同名の本の再版です。
この手の本には弱い私は、早速注文して古本を手に入れました。


このところ、半地下室に段ボール箱に入れたまま放って置いた本を整理している明け暮れですが、『写された幕末』が届いて間もなく、段ボール箱の中から『幕末明治のおもしろ写真』(石黒敬章著、平凡社、1998年)が出てきました。石黒敬七の息子の敬章が、父のコレクションを整理したものです。
『写された幕末』は1957年出版の復刻版、『幕末明治のおもしろ写真』は1998年出版ということで、この間、印刷技術は格段の飛躍とカラー印刷の低価格化をとげており、『写された幕末』ではモノクロの写真も、『幕末明治のおもしろ写真』ではカラーで載っていたりします。


この写真もそう、『写された幕末』ではモノクロで、キャプションには東海道戸塚の街道で、大きなケヤキは一里塚とありますが、『幕末明治のおもしろ写真』ではカラーで、名刺判手彩色とあり、リチャードソンが殺された生麦事件の現場と書かれています。

石黒敬七は、柔道家として大正期からフランスにたびたび行っています。そしてパリの蚤の市で日本の写真を見て、夢中で集めるようになりました。
当時の写真は外国人が日本に来て写したものがおもでしたが、日本では幕末期の写真は、まったく顧みられていませんでした。というのも、幕末史が、皇国史観のもとで政治史の追及に追われて、一般の人々の生活には全く関心を寄せないうえ、歴史資料としての写真の価値も認識されていなかったからでした。
戦後、石黒敬七氏の写真集が刊行されて、初めて、古い写真の資料的価値が認識されたのでした。

鋳掛屋

『写された幕末』には、たくさんの貴重な写真が収録されています。
市井の暮らしの写真も多いのですが、中には、刑場で斬られた首がいくつもさらされている写真などもあります。

『幕末明治のおもしろ写真』の中で、石黒敬章は、江戸時代の日本の姿を知るには、写真家フェリックス・ベアトの功績が大きかったことを書いています。ベアトは、横浜に十数年居を構え、大きな写真機を持って日本国中写してまわって、たくさんの写真を残しました。


私が面白いと思ったのは、女性の着物の着方です。
着物の胸での打ち合わせがとても浅くて、長襦袢の襟を大きく見せるように着ていて、今とは全然違うのです。(幼い子は、着物の打ち合わせが反対になっていますが、これはただ写真が逆さまになっているだけだと思われます)


当時は、写真に撮られることを嫌がる人も多かったのか、女性の写真と言えば、芸者、花魁などの写真が多めですが、それでも町娘、お内儀などの写真もいろいろあります。
そしてみんな、浅く打ち合せた着方をしています。


写真から知ることは、たくさんありました。
例えば越後獅子、言葉は知っていましたが、どうして子どもの獅子舞いなら越後かと、考えて見たこともありませんでした。
この本によると、人口調節のため「間引き」が一般的だった時代、越後では宗教上の理由で堕胎や子殺しは許されなかった、そのため、子どもは売られたのですが、そんな子どもを買って芸を仕込んだのが、越後獅子(角兵衛獅子、もともと越後の伝統芸能)だったのだそうです。


それにしても、明治21年にワシントンで撮られたという陸奥宗光の亮子夫人は美しい。新橋の芸者さんだったそうですが。




6 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

 春姐さん復刻版もでているのですね、
手が写ると大きくなると言う事で袖から出さない女性も、、、
最初の本は「アソカ書房・三部作」4100円昭和37年に購入しました。
モデルは随分お金を貰ったことでしょー
「命が吸われる」の時代ですからね。(笑い)

さんのコメント...

昭ちゃん
最初の版を持っていたのですか!
それにしても高かったですね。4100円かぁ。当時は旺文社の参考書が200円くらいの時代ですね。明石書店の再販本も、もとは6600円もしています。私は1500円くらいで買ったけど。
それにしても、蚤の市で写真を一枚一枚探して買うなんて大変ですよね。
学校の先輩が石黒敬七の隣に住んでいたかで、時計のコレクションがすごいという話を聞き、羨ましかったのを覚えています(笑)。
石黒敬七は面白い人でしたね。

昭ちゃん さんのコメント...

戦後のラジオ放送はNHKだけの時代
内容はアメリカのまね番組でした。
「話の泉」も同じで回答のレギラーは石黒さんでした。
ライフの「第二次大戦写真集」
予約制で10ドル3.600円 1951年
高いけれど有名な写真家がずらりですよ。

さんのコメント...

昭ちゃん
ひゃぁぁ、ライフの写真は1970年代くらいまでは、ダントツでしたね。しかも、写真はネガ買い取りで、ライフの所有権が発生してしまいますが、それでもライフに載れば折り紙付き、カメラマンは競ってライフに写真を送りましたね。
我が家には、新聞の抜粋の第二次大戦の写真集も、昭和の写真集も結構いろいろ、いっぱいあって(笑)、もうボロボロですが、見ようと思えば見ることができます。とりあえず、それで我慢します。

hatto さんのコメント...

春さんの投稿を見て早速この2冊を(古書)購入してみました。どれも興味深い写真でしたがさらし首の頁はなかなかじっくり見る気になれず伏せています。(もうすこし気持ちが元気な時に見てみます)甥っ子にも見せてやりたいのですが、小学1年生と4年生なので、もう少し大きくなってからがいいのかなと。ご紹介ありがとうございました。

さんのコメント...

hattoさん
面白い写真ばかりですよね。
たった、150年ほどでこの変わりよう、風景だけでなく心も変わっているのに驚きます。さらし首なんて、何とも思わず、子どもたちも見物していたのでしょうね。命は軽いものでした。
明治に日本を訪れた西洋人が、西洋人が通るというと、お風呂屋から老若男女みんな裸で出てきて彼らを眺めた、それを楽しみにわざわざ湯屋の前を通る西洋人もいたし、宣教師たちは混浴や、裸を道路でさらすことを戒めたが、裸を嫌らしいと思う西洋人たちの方が嫌らしいのではないかと書いている西洋人もいました。確かに裸は嫌らしいと思うから嫌らしいのでしょう。と言っても、今の時代に生きる私、混浴などまっぴらですが(笑)。