2019年6月10日月曜日

飾った家

日本家屋には、あまりものを置かないで、「空」の空間を大切にしたという伝統があります。
その住まい方に憧れますが、では自分の住まい方はどうかというと、とてもそうはいきません。ものを飾ることによって、無機質な空間を親しみのある空間にしてしまいたいと思ってしまいます。

引っ越しは、ものを整理するよい機会と言われています。
ところが私は、引っ越しのたびに新しい土地で新しいものを見つけては喜んで増やし、その土地でがらんどうの部屋を飾るだけでなく、捨てることなく大切に持ち帰って、その結果、ものを増やしに増やして、今日にいたっています。

そんなわけで、私の周りはものが過剰気味ですが、持っているものを全部飾ってやりたくて、その適所をうろうろと探してしまうのです。


寝室の出窓に置いてあるチワラ(バンバラの木彫)は、かつて白壁によく映えていました。


しかし、友人Nさんが、新築祝いにとナーガ(蛇神)の描かれたバリの布絵を持ってきてくれた時、飾るのはここしかないと思いました。
Nさんの夫人はウェールズの人、二人はギリシャで出会って、1960年代初頭には、3年ほどインドネシアで暮らしました。その後日本に帰られて、逗子の家にこの絵が飾ってあったのを、私たちは覚えていました。
バリの肉筆画はバティクとはまた別の趣があり、さらにNさんの思いも重なって、白壁の時のようなすっきり感はありませんが、代わりにここはもっと温かい気持ちの詰まった場所となりました。


さて、『たくさんのふしぎ、家をかざる』(小松義夫文、写真、福音館書店、2019年)は、そんな飾りたがりの私を、「それでもいいんだよ」と励ましてくれるような本です。
この本には、デコレーションを施した世界の家々が紹介されています。ものを飾るのと、ペイントするのではちょっと違いますが、空間が違ってしまうという点では似ていると思います。

ギリシャ、ヒオス島

手間と暇、それにお金までかかるというのに、家を飾り立てて楽しんでいる人たち。
垣間見ると、その生活の楽しさが伝わってきて、嬉しくなります。

ブルギナファソ

アフリカには、造形的に面白い家がたくさんありますが、ガーナからブルギナファソにまたがって住む人たちの、ペイントしてある家は特に素敵です。
壁に絵が描かれている家はこの辺りだけではなく、南アフリカでも大胆に絵が描かれた家を見たことがありますが、西アフリカの家は造形のダイナミックさと絵の面白さの二重奏で、遠くに見えてくると、心が躍りました。
塗料はどれも泥や木からとる、同じようなものですが、絵は、民族グループによって、家によって、それぞれの個性を発揮しています。
乾燥気味のサバンナにも、雨季があります。雨季には激しい雨が降り、日干し煉瓦の家は傷みますが、雨季が明けると崩れた壁を積みなおし、その上に土を塗ってつるつるに磨き上げ、さらに泥を砕いた塗料や樹液からとった塗料で、大胆に絵を描きます。


この写真は『家をかざる』からのものではありませんが、白を加えて3色づかいです。
多分これは家畜小屋。奥の方が人間の空間です。

そして、私たちがサバンナに行ったときに撮った写真。
丸い屋根が乗っているので、上の二つの家とは民族グループが違う人の家です。



敵に襲撃されないように、足場が悪いところに建てたイエメンの家です。
こんなに足場が悪いところにもかかわらず、窓の周りに、漆喰で模様を描いています。

ロシア

ロシアのカラフルな雨戸は特に冬、道行く人の目を温かくさせますが、夜はきっと室内を明るくしていることでしょう。
この色で、長い冬も乗り切れるはずです。


そんな雨戸を閉めた写真も載っていました。
 
コロンビア

シンプルな美しさ、足し算するより引き算した美について、惹かれることもありますが、飾る楽しさは、到底捨てることができないだろうなぁとも思ってしまいます。






2 件のコメント:

Bluemoon さんのコメント...

私も、飾る楽しみから離れることができません。『たくさんのふしぎ、家をかざる』を友達に頼んで本屋さんで見てもらっています。4月号なんですね。先月に主人から聞いたのですが。主人が子供の頃、近所に壁に伝統的な花の絵を描く専門家さんがいたようです。アーチの壁の角に少し描く、とか。こちょこちょと仕事が入っていたそうです。それで私に壁に絵を描け、というんです(笑)。
日曜日に朝市に行きました。朝市では、いろんなものが売られています。食品が乗ったテーブルの、横のテーブルにはズラリとレコードが並んでいました。春さんのブログを思い出して、どんなものがあるのか眺めたかったのですが、この日は予定が詰まっていて急げ急げだったので見れませんでした。

さんのコメント...

Bluemoonさん
『家をかざる』の表紙の花を描いた家はポーランドのものですが、ハンガリーにも素敵な花が描かれた家があったでしょうね。花を描いた家、花を描いた家具、そして花を刺繍した衣装と三拍子そろっていたことでしょう。素敵ですね(^^♪
とくに感心してしまうのは天井に描いた絵です。壁よりもっと面倒だと思うのだけれど、うまく描けたら、描いてないのとまったく違う、楽しい時間を過ごせたことでしょう。
家が楽しいと、どこにも行かずに、家ですごす時間が長くなります。