2019年6月11日火曜日

とりとめのない話

古い友人の息子のトヌちゃんが遊びに来ました。
インド生まれですが、日本の大学を卒業して、オランダで修士課程修了後、今はドイツで博士課程に在籍しています。ヨーロッパにわたって早5年、後1年で博士課程を終える予定です。
それにしても、条件もつけないで3年間、月々十分な給料をくれながら、論文を出せば博士号をくれるなんて、ドイツには素敵な大学があるものです。もっとも、それはトヌちゃんが成績優秀だからできたということを忘れるわけにはいきませんが。


トヌちゃんと夫とは生物多様性の喪失や、地球の今後の話などを、世間話抜きで、当然のように楽しんで(悲観し合って?)いました。年の差はあるけれど、夫にとっては何でも話せる、もっともよい仲間なのです。


私とは、まぁ雑談です。

トヌちゃんの論文のテーマは、インド西ベンガル地方の有機農業の実態です。
グーグルマップで西ベンガルのあたりの地図を見て、有機農業をやっている人たちに想いを馳せながら、チャンダナガーのフーグリー川のほとりで、トヌちゃんの両親や幼かった兄妹と一緒にチキンを食べたことなど思い出しました。
「グーグルマップはすごいねぇ」
西ベンガルの地図を見る前には、トヌちゃんのおじいさんが住んでいた新潟の家を見たばかりでした。
「ドイツの町を歩くにも、インドの村を歩くにも、スマホなしは考えられない」
それでも、ドイツにはなんとスマホを持つことを拒否する若い人たちが増えてきているそうです。いわゆるガラケイ、携帯電話は持っても、スマホは持たない、Facebookもしない人がたくさんいるとか。
「連絡も、電話する以外ないんだけど」
スマホを持つことを否定する若い人たちの出現は、日本を顧みると考えられませんが、西欧社会にはベジタリアンやビーガンがすごい勢いで広がっていることを思えば、スマホを持たない人が、いっそう増えることもありえるのでしょう。


自然と人との関係についても、いろいろ話をしました。
彼の先生の一人は、南米に奴隷として運ばれたアフリカ人がどうやって逃げて生き延びたかを研究しているそうです。
西アフリカと南米では植生も違いますが、同じ科や属の植物が見分けられた人たちは、逃げても食べものを確保できただけでなく、吹き矢(矢につける毒草も)など武器もつくって戦って、生き延びることができたそうです。
自然を知っていれば生き延びることができる話は、私も実感したことが何度かあります。
その一つ、昔タイ人たちと一緒にボルネオ島に行ったとき、ボルネオ島は初めてのはずのKが、歩きながら道々葉っぱを採って食べたり、とくにきのこを採って食べたのにはびっくりしたことがありました。
「知らない土地できのこなんか食べたら死ぬよ!」
と、私が悲鳴を上げると彼は、
「これを食べて死ぬなら、ぼくはずっと前に死んでしまっているよ」
といって、悠々と食べ続けたのでした。
そのとき、私は熱帯に置き去りにされたたくさんの日本兵たちが、食べるものがなくて餓死したことを思い出しました。そして、日本兵の中でも少数の、食べられるものを見分けられた人、あるいは現地の人と仲良くできた人は生き延びたことも思い出しました。


オランダ人が背が高いという話も面白いものでした。
現在、世界中で成人の平均身長が一番高いのはオランダ人ですが、じつは200年前にはとても背が低かったのだそうです。
その証拠に、オランダの民家園に行くと、残っている古い民家の軒は、トヌちゃんでさえ背を屈めないと入れないもの、そして軒や鴨居だけではなく、部屋の天井も低いのだそうです。
「どうしてこの200年でオランダ人は背が高くなったの?」
「それを研究している人もいるんだけど、肉を食べるのと牛乳を飲むのが重なったとか」
「それだけで、そんなに大きくなれるかしらねぇ?」
彼はすぐネットで調べました。たぶん、研究論文とかを見たのでしょう。
「世界で一般的には、背の低い女性の方が子どもを産む数が多いけれど、オランダでは背の高い女性の出産率の方が高かったんだって!」
「へぇぇぇ!」
まぁ、真意のほどはわかりませんが、何かが作用してオランダで変化が起こったことは確かです。
「日本で電車に乗ったら、ぼくの身長でまわりを見渡せるけれど、オランダだと、壁に囲まれた感じ。何も見えない」
「ふうん」
私もデンマークに行ったとき、古い家は天井がとても低いのに、現代人、とくに若い女性はとても背が高いのにびっくりしたことがありました。


トヌちゃんは今日、ドイツへ帰ります。





4 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

折に触れ、春さんちを訪ねるトヌちゃんはとても律儀な方という印象です。もちろん春さんちが楽しいからでしょうけど!
オランダ人がこの200年で背が高くなったとはびっくりですが、息子の体形を見ると、何世代かで体形がすっかり変わるのも不思議じゃないです。

さんのコメント...

hiyocoさん
彼は本当によくできた人間、なにか中学生のころから不思議なくらい大人びていました。
夫は若い人を若い人扱いしたりしないで対等に話そうとする人間ですが、あんなに年の差があって彼とほど馬が合う人は他にはいないかもしれません。トヌちゃんはもう、友人夫婦から私たちへのの贈り物的存在です(笑)。

私もオランダ人が背が高い人たちだとは知っていましたが、セネガルからソマリアのラインのアフリカ人たちが背が高いのと同じように、先天的に高いのだと思っていました。5、6世代ですっかり変わったなんてびっくりです。
でも、2メートルとかになると、何するにも不便そうです(笑)。

karat さんのコメント...

おはようございます。
本題から全くずれてしまいますが、この猫のマトリョーシカは顔の感じに覚えが………どなたのでしたっけ?
それにしても後姿のしっぽが太くてぎょっと驚きました。トカゲに化けそうな猫か、猫に化けたトカゲか…(笑)。

さんのコメント...

karatさん
アンナ・リャボヴァさんの猫です。
マトリョーシカは、ほぼほぼ卒業していますが、この下半身が水中にいるような猫、おもしろくて見過ごせませんでした(笑)。そして、後ろ姿を見て、私もぎょっとしました。あの方は大胆ですね。
ちなみに、彼女の別の猫(http://koharu2009.blogspot.com/2016/03/blog-post.html)には尻尾はついていません。
魚を描くのが面倒だったから尻尾を描いたのでしょうか?それとも、蛇とか連想していたのかもしれませんね(笑)。