2019年7月28日日曜日

集落の行事

昨日は集落総出の林道の草刈りでした。
その数日前、たけさんがやってきました。
「草刈りは出るんかい?」
「出るよ」
何か言いたそうですが、はっきりしません。
「おれも87だからなぁ」
「たけさん、出なくていいよ。私たち一人はたけさんの代わりで、二人で出るから」
「そうかぁ。わりいなぁ。うちの周りをちょっと刈ってもいいんだけんど」
たけさんの家から上はもう山の中の道です。
「なんもしないでいいよ。私たちに任せて」
あれは12、3年ほど前だったか、たけさんは乗っていたスーパーカブで道をショートカットしようとして転び、かかとのあたりを複雑骨折して3か月入院して、2度も手術したことがありました。
病院にお見舞いに行くと、気にしているのは草刈りのことばかり、出られないので罰則金3000円を払わなきゃいけないのを心配していました。
まさか、怪我をして入院している独り暮らしのおばあさんから罰則金を取ったりしないと何度言っても信用しませんでした。

さて、草刈りの前夜、たけさんから電話がありました。
「おれ周りを刈ったから、一人でええぞ」
「大丈夫よ、二人で出るから」
確かに、たけさんの家から近いところはとってもきれいになっていました。刈り払い機が壊れているので鎌で刈ったのです。


私はいつもの年なら刈り払い機を使って草を刈るグループに入っていますが、2台ある刈り払い機のうちの1台には紐刃を装着しているので、刈り払い機は夫に譲り、刈った草や落ち葉を道路わきまで片づける作業をしました。


なんてこと、毎年刈った草を片づけるのはだいたい女性(というかおばあちゃん)の仕事ですが、今年は女性がいない、私ともう一人だけでした。
あと男性が一人、刈り払い機と鋸、熊手も持ってきて、一人三役してくれましたが、たった3人で長い林道の清掃をするという、大仕事になってしまいました。
滝への道はそれでも人通りもあり、手入れしている人もいるのでわりあいきれいですが、もう1本の林道はあまり誰も通らないところ、荒れ放題になっていました。


草刈り後は、集会所で行なわれた万燈祭に参加しました。
草刈りは集落を二つに分け、3本の道をきれいにします。そのため、一緒に草刈りをしないグループの人たちの中には、知っている人たちもいますが、なじみが薄い人たちもいました。

集会所には、いつもは滝の上のお不動さまに祀ってあるご本尊が、運ばれて祀られていました。初めて拝見しましたが、木彫りの50センチほどの大きさのお不動さまで、かなり古そうなものでした。
集落の万燈祭は、万燈を掲げて練り歩くのではなく、今はみんなで集まって会食するものですが、昔はどんなお祭りだったのか、訊いてみました。

現在60歳くらいの人たちが子どものころは、小学生たちがお不動さまを背中合わせに背負って、約50軒ある家をすべて訪ねて歩くお祭りでした。
「重くて、ひいひい音を上げたよ」
「えっ、お不動さまは軽そうじゃないですか?」
「厨子ごと背負ったから、ずいぶん重かったよ」
「へぇぇぇ!」
家々では、訪ねてきた子どもたちにお金(約30年前には2000円)を渡しました。そのうちの半分は集落(組)の資金になりますが、半分は子どもたちに還元され、その日はジュースやお菓子をたらふく飲んだり食べたりできる、とても楽しい日だったそうです。子どもが少なくなって、約30年ほど前から行われなくなりました。
「ほかに子どもたちが楽しみだったのは何ですか?」
「夏休みかなぁ」
「海水浴に行きました?」
「学校から一泊どまりで大洗まで行ったなぁ」
学校からの臨海学校も、戸別に行くようになって廃れました。

お不動さまのご本尊がつくられたのはいつごろか、もちろん誰も知りませんでした。
江戸時代か、もっと前か、集落には歴史があるものです。






8 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

姐さん
里山・家内の実家跡の過疎地が叫ばれて40年静かに街中でも進んでいるのが現状です。
びわを毎年頂く家も屋根にシートが、聞くと老夫婦二人とも施設に入居したとか、
我が家も5年後は解らないので毎日が悔いのない生活です。

hiyoco さんのコメント...

集落総出の草刈りがあるんですね~。人出が足りなと大変ですね。
確かに臨海学校は聞きませんね。昔はよくあったのでしょうか?子供たちを引き連れての海水浴、先生はなかなか大変だと思います。

さんのコメント...

昭ちゃん
毎日悔いのない生活を送らなくてはならないのは誰でも一緒です。
それなのに、ああそれなのに、ともすればゲームばかりしたりして、やらなくてはならないことを一日伸ばしにしています(笑)。

さんのコメント...

hiyocoさん
ここに来てから毎年参加していますが、高齢化の波が押し寄せています。数年前から「雑な仕上がり」になってきました(笑)。
去年は、初参加した息子や娘たち(と言ってもいい年、笑)が目立ったのに、今年は特に人数が少なかった気がします。

臨海学校は、私も小学校5、6年で行きました。全員ではなくて希望者参加でした。本島という瀬戸内海の島でしたが、今だと先生は嫌がるでしょうね。親も緊張するだろうし。当時はのんびりしたものでした。

af さんのコメント...

八郷の高齢化は深刻なんですね…
八郷のあちこちで貴重な古民家が取り壊されるそうとか、大手リゾート企業が買い取るとかいう噂まで、ちょうど聞こえてきました。
山の整備一つとっても大変ですね。罰則金3000円、たけさんにとっては金額より罰則なので、ルールをやぶる、悪いことをする、その罪なんだという意識が強いのでしょうか。山を利用させてもらってる人達のボランティアを募れると思うのですが、部落の方々にはそういう発想はないですよね。
駿介先生がこんこんと伝えてらっしゃる地域に根ざしていくということは田舎の田舎育ちの人達にとっても難しいことなんだなとか思いました。

ところで、お隣がたけさん、お孫ちゃんもたけちゃん、なんですね!

さんのコメント...

akemifujimaさん
私はきれいに手入れされた景色を見るのが大好きです。その昔友人と出雲大社に行ったとき、その社前の道の美しさにうっとりして、結局出雲大社を訪ねずに帰ってきました(笑)。草がきれいに刈りこまれていて、道端のほんの小さな空き地にネギなど植えられて、どこもかしこも「手が入っている!」という感じでした。
かつて、ほとんどの風景は個人がきれいにしたものの集積でしたが、今では県道のわきなどは行政が雇った人が刈っています。それを見ると「私の税金だぁ」と叫んで苦々しく見ていましたが、何でもお金の時代、仕事をつくっているという点ではいいんじゃないかと思えるようになってきました。
林道の清掃は無償だと思うでしょう?
私も今年までそう思っていましたが、組(集落)には見返りとして市からお金が入っていることを知りショックでした。でも組にお金が入りお祭りなどで使えるというのも、悪くはないかと思いなおしましたが。
山は誰も利用していません。ボランティアなど募れないでしょう(笑)。だいたい刈り払い機を持っていないと参加できないし、刈り払い機を持っているほどの人なら、身の回りの草刈りで忙しいと思います。
NGOで働いていたころ、「草刈り十字軍」というボランティア団体がありましたがどうなったでしょうね?一回きれいにすれば終るものではなくて毎年ですから、なかなか長続きしないかもしれません。

息子がその娘に「松竹梅の竹という名前をつけたい」と言っているのを聞いたとき、「近所のたけさんも「竹子」だよ」と言いました。植物の「竹子」さんがいたとは驚いたようでしたが、息子の意思は変わらなかったようです(笑)。いい名前と両親が喜んでいるのだからいいんじゃないでしょうか。私としてはイレーネなんて名前より良かったです(^^♪

af さんのコメント...

丁寧な手入れ、といえば、四半世紀ぶりに銀閣寺に行ったとき手入れされた苔に感動しました。それとは大違いですが、祖母は毎朝毎朝、玄関と接道を舐めるかのように掃き掃除していました。私は玄関は1ヶ月に一度?(^^;;
そうかー、林道の清掃ってそうなんですね。山は誰も?スポーツ仲間たちから鳴滝に走りに行ったという話をよく聞くんですが…。そういえば草刈機をもってない、使ったことないってのは良く聞きます。なるほどー。そうだ、春さんのとこに草刈り体験させてもらいにいきたいって言ってたのを思い出しました。口だけになってちゃってます。今は毎日毎日、図面書きの練習の日々です。同じものを描いてるはずなのに描くたびに別の建物ができます笑、自分で本当に笑っちゃいます。
竹子といえば、私の祖母は松にちなんで満津でした。大好きな、おばあちゃんでした。名前というのはシンプルなほどいいと最近思います。あの人の名前…えっーとなんだった?えっとー、ほらーあのー、っののとき、スッと出てくれるなんて最高です。

さんのコメント...

akemifujimaさん
お寺の庭の手入れ、さぞかし大変だと思います。
我が家も裏庭に苔が生えていますが、草をむしると苔が剥がれます。紐刃の刈り払い機が一番と聞いてそれでやっています。
日の当たらない場所も柔らかい草が生えれば紐刃でいけますが、固い草が生える場所はそうはいきません。

鳴滝までの道は、ボランティアできれいにしている人もいますが、部原から真家に抜ける道の峠あたりに合流する林道は、10年ほど前に集落総出で舗装したのですが、なにせ山仕事に入っていく人がいないので、道にたまった落ち葉が厚い土の層をなすほど、一年に一度の掃除は大変です。1か月に1台も車が通ってないかもしれません(笑)。
私も二十三夜供養塔の近くの梅の木が、毎年葛に覆われるので足元をきれいにしてやりたいと思いながら早十数年、なかなかできません。
鳴滝に走りに来ている方たちに、ふらっと寄ってくださればいつでも草刈り体験できますとお伝えください(笑)。