写し絵とは、模様ごとに切り取って、水にぬらして、ノートの表紙や、叱られながらも机や椅子、そして手などに貼りつけ、しばらく置いてからそっとはがすと、その絵が、貼りつけたところに移るおもちゃで、小さい頃はよく遊んだものでした。
写し絵は懐かしいし、絵柄もなかなかいいのだけれど、全部めくれ癖がついています。
「アイロンかければ直るよ」
「そう?」
「ばらにする?それとも全部まとめて買う?」
「紙ものはなぁ。飾り方が難しいんだよね」
「額に入れたら?」
「そうだけど、うちはほれ、壁がないでしょう」
そう言うと、わきに立っていた、いつもさわださんのところで油を売っているおじさんが、黙って、「壁がない家とはどんな家なのか?」と、密かに考え込んでいたみたいでした。
しばらくして、突然そのおじさんが、
「あっ、壁がないってことは、壁がもう何かでふさがっているってことか」
と叫びました。
いったい、頭の中でどんな家を想像していたのでしょう。
さわださんは、私が写し絵を買わないとなると、着せ替えを勧めてきます。
わぁ、いつにも増して、古めかしい着せ替え!
紙が悪くて、着せ替えなのにぺらぺら、「かわいい」の基準が、今の「かわいい」とは全然違います。
「オネエさん」も女の子も下駄をはいているうえ、着せ替え用の衣装は、買い物袋を提げたねんねこや学生帽、そして小道具は箒や火鉢です。
どう見ても、1940年代から50年ごろまでにつくられたものです。
「500円!、400円でいいや」
「紙ものはなぁ.....」
と言いつつ、絵柄に惹かれて、買うことにしました。
袋に入れてくれている間、油を売っているおじさんと話していると、さわださんは、また私に売りつけるものを見つけたようでした。
「これもどう?三枚全部まとめて1000円でいいや!」
「なにこれ?かるたなの?」
「じゃないんだけどね」
「まっ、いいわ、まとめてもらうわ」
というわけで、手にとって見もしないで、紙を増やしていまいました。
家に帰ってから、初めてじっくりながめます.
「月」と「干支」の組み合わせで、干支の名が入って、点数がついています。一枚ずつ切り離して、神経衰弱のようにして、絵合わせして遊んだのかもしれません。
うちの一枚は、色も絵もそこそこ面白い。郷土玩具もふんだんに入っています。
四段目にあるのは、江戸のおもちゃ、虎のぴいぴいです。
おもちゃ好きの画家さんだったのでしょう。
子どもたちは、駄菓子屋でこれを買って、友だちと、そしてお正月などには、お母さんやお父さんにせがんで、一緒に遊んだのでしょうか?
上の一枚に比べると、こちらは漫画っぽくて、絵に情緒がありません。
でも、それも個性。大笑いしている犬の顔を見ていると、絵が下手なのもご愛嬌に見えます。
また、邪魔なものが増えてしまいました。
6 件のコメント:
春姐さん面白いですね、
孫悟空が出ているので12月は猪八戒も登場
着せ替えは肩の引っ掛けが折れるので
よく修理しました。
絵の時代考証はいかがですか。
昭ちゃん
時代考証ですか?
デッドストックで出てくるおもちゃを見ると、自分がよく遊んだもの、全然知らないものがありますが、この絵合わせみたいなの、まったく知りません。
でも、10歳年下の妹たちのころの「かわいい」とは違うので、やっぱり昭和20年代から30年代初期のものでしょうね。テレビが普及していない頃かなぁ。子丑寅...と左から始まっているので、戦後のものには間違いないでしょう。
骨董市で戦中につくられた国威発揚かるたを見かけたことがありますが、歴史的な資料としてはともかく、家に置いておくという気にはなれませんでしたね(笑)。
絵の様子と紙質・印刷状態から判断して
25年以降ですよね、
戦時中とは明らかに違う服装です。
昭ちゃん
そんなところでしょう。比較のために、国威発揚かるたも買っておけばよかったかしら(笑)。今度見かけたら、考えます。頑張っている兵隊さんのことを思ってよい子にしようとか、馬も頑張っているとか、そんな内容でした。
パッと見て、おねえさんは子持ち?実はお母さんってことかと思いましたが、年が離れた弟か妹でしょうか~。着せ替えでわざわざねんねこって面白いですね。
hiyocoさん
幼い弟妹を負ぶって買い物に行くときは下駄ですよ。楽しいですね(^^♪洋服姿の時、どうやって下駄を履き替えるのかと思ったら、台座が下駄を隠していました。
1960年代の美智子妃殿下ご成婚記念の着せ替えがシリーズ(http://antiquaille.jp/blog/?p=31235)なんか、ずっとおしゃれになっています。
なにか小物をと思って部屋を見渡したら、火鉢と箒が目についた(笑)、画家さんの生活もしのばれます。
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